公開から瞬く間に広がり、40万人以上を動員、観る者を号泣させたドキュメンタリー映画『うまれる』。生命の誕生を見つめ、様々な人生の選択とそこから生まれるドラマに寄り添った感動から4年。さらにテーマを深めた第二章『うまれる ずっと、いっしょ。』が、うまれた。

本作には、“最愛の妻を喪った夫” “血の繋がりがない父と息子”、そして前作から続き “重篤な障がいを持つ子を育てる夫婦”の、3家族が登場する。とりわけ前作からのファンにとって嬉しいのは、あの小さな“虎ちゃん”が少し大きくなった元気な姿。ホッと胸をなでおろし、その愛らしさに頬を緩めずにはいられない。そしてどんな事態に陥っても、常に明るく前向きにあろうとする松本夫妻の手を、まるで自分の友人のように強く握り締めたくなるだろう。

彼ら3家族の姿を通し、観る者は、常に密接にある“生と死”を凝視しながらも、そこから脈々と受け継がれていく生命、生きる力、そして、その土台となる“家族の在りよう”に、深く感銘し、胸を打たれずにはいられない。

ナレーションを務めるのは、樹木希林。柔らかく慈愛に満ちた樹木の声音が、ほっこり心地よく、その言葉が心に響く。

監督は、初監督となる前作を企画から立ち上げ、成功に導いた豪田トモ。今作でも企画・撮影を兼ねる。自身の親との溝に悩み、家族の愛情やつながりを確信できずにいた豪田が、何十組もの家族の妊娠・出産を3年掛かりで撮り続け、自身が、「生まれてきてよかった」「産んでくれてありがとう」という実感を掴むまでの記録でもあった前作は、出産や生命誕生に対する怖れ、神秘、戸惑い、そして喜びという、感情の揺れが、まさにドキュメントとして生々しく伝わってきた。

一方、本作では、前作の公開と同時に一児の父となり、“いい父親になりたい、家族と幸せに一生を過ごしたい。でもそれは自分が期待するほど簡単な作業ではない”と実感した豪田が、3家族にじっとカメラを向ける。慟哭、迷い、たじろぎ、絶望……。本来なら人前では見せたくない表情や堪え切れずに涙を落とす生の瞬間を、彼らは豪田のカメラの前に許す。カメラは “死”というものを厳然と見据えながら、たとえ旅立ちをもってさえも断ち切ることなどできない、そして血よりも濃い、愛情と家族の繋がりを、見事なまでに浮かび上がらせる。

カメラをそむけずにどんな瞬間も見つめ続ける監督の信念と、登場人物の人間味と魅力を最大限に引き出す監督の愛と両者の信頼関係が、見応えのある作品の骨格を支えている。映画全体に漂うユーモラスで軽やかな空気は、登場する家族の人柄もさることながら、豪田自身の変化、さらに監督として確かな進化を遂げた力量も感じさせ、前作を凌ぐ会心作と確信させる。
公私共にパートナーである牛山朋子が引き続きプロデューサーを務めるほか、主要なスタッフが再集結し、志を共にした阿吽の呼吸でガッチリ映画作りを支えた。

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=52646

執筆者

Yasuhiro Togawa