家族とは何か。欲望とは何か。性器とは何か。
家族、欲望、性器は全て一つのものから始まっている。
私は父であり、母は私であり、そして母は父である。
元々私たちは欲望から生まれ、欲望を再生するのだ。
私たちはまるでメビウスの輪のように一つに繋がれている。
だからこそ羨み、忌み嫌い、そして愛するのである。

監督 キム・ギドク

キム・ギドク監督最新作にして、“映画史上最も壮絶なヒューマンドラマ”
『サマリア』、『うつせみ』、『絶対の愛』など、時代を風刺しつつも偏愛に満ちた唯一無二の作風を持ち、『嘆きのピエタ』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督。最新作となる『メビウス』では、監督自身の歴史でも類をみない領域へと足を踏み入れた。その過激さから韓国では上映制限が敷かれ、ここ日本でも審議の紆余曲折を経て、ギリギリのR18指定で公開が許される。映画史上最も壮絶なヒューマンドラマをあなたはどう受け止めるのか。

セリフなしで紡がれるのは「性」、「家族」、そして「人間」。
『メビウス』にはセリフがない。キム・ギドク監督は「笑う」、「泣く」、「叫ぶ」この3つの感情要素だけで作品を創造した。シンプルなまでにそぎ落とされた演出の中にあるのは、尋常ならざる演技。『受取人不明』、『悪い男』などキム・ギドクの初期作品に出演し、“キム・ギドクのペルソナ”と呼び声の高いチョ・ジェヒョンが不貞な父を演じる。女優人生をかけて本作への出演を決めたのはイ・ウヌ。嫉妬に憑かれた狂気の母、さらには夫の浮気相手である妖艶な女を一人二役で見事に演じ分け、強烈な印象を残す。そして、韓国映画界の新星ソ・ヨンジュが性器を切り取られてしまい苦悩する息子を静謐に演じきる。父・母・息子、男と女、痛みと快楽、人間の全てはメビウスの輪のように表裏一体となり廻(ルビ:めぐ)る—。

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro TogawaYasuhiro Togawa