このドキュメンタリーは、重症の化学物質過敏症の女性早苗さんと、その命をつなぎとめた木村秋則さんの育てた林檎の話です。
重症の化学物質過敏症の人は、水が一滴も飲めなくなる時があります。
早苗さんも、かつて水が一滴も飲めなくなり、三日も四日も水分が取れなくなり危険な状態になりました。
母道子さんは、北里病院の専門医に電話して、どうしたらいいかたずねました「浄水器を替えなさい」としか言われず、浄水器を替えましたが、水は飲めませんでした。
そして母道子さんは自然食品屋さんに片っ端から電話をかけ
「一滴も水が飲めない娘の口に入るものはありませんか?」とたずねました。
そして十何軒目のお店で「うちに無肥料無農薬の林檎があるから、それを試してみたらどうですか」と言われ、その林檎を求めました。
その林檎が、木村秋則さんの林檎だったのです。

早苗さんは、木村さんの林檎の水分でいのちを繋ぐことができました。まさにいのちの林檎と言えると思います(無肥料無農薬の林檎を作った木村さんの物語は「奇跡のりんご」のタイトルで阿部サダヲ・菅野美穂主演で映画化され話題を呼んでいます)。
この二人を中心に映画は3年半に渡ってカメラを回し続けました。
国内で七十万人いるとされる化学物質過敏症、しかし多くの人はこの病気の存在すら知りません。2009年10月1日付けで、国は化学物質過敏症の病名を認め、健康保険で扱われるようにしました。しかしこの病気を診断できる医師もごく少数しかいないのが実情です。化学物質に囲まれている我々の生活は、化学物質過敏症という病気と無縁ではないことを、映画「いのちの林檎」は語っているのです。

予告編::http://youtu.be/4raezC-5hN8

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執筆者

Yasuhiro Togawa