日本映画の三大巨匠をリスペクト!
『カレ・ブラン』 ジャン=バティスト・レオネッティ監督

Q:いよいよ『カレ・ブラン』が日本で公開されます。
それについてコメントをお願いします。
 
日本で公開されることをとても光栄に思います。私は日本文化の大ファンで、10代に観た数々の日本映画で自分の進路が決まりました。新藤兼人『鬼婆』、勅使河原宏『砂の女』、今村昌平『復讐するは我にあり』などなど。それと同時に『コール・ガール』『マラソンマン』『THX1138』『カンバセーション・・・・盗聴・・・・』『時計じかけのオレンジ』などの70年代のアメリカ映画にも多大な影響を受けました。実際には私のカルチャーはアメリカと日本のミックスで成り立っています。そして何よりも日本映画の持つグラフィック的な要素(画面の構図、構成など)は世界一です。とても尊敬しております。『カレ・ブラン』も見ればお分かりのとおり、グラフィック・アスペクトが決定的に重要な要素を果たしており、まさにこれは日本映画からの影響です。日本で公開されるのは本当にうれしいですし、10代の映画青年だったころは夢にも思わなかったことです。
Q:『カレ・ブラン』はいろんな意味において興味深い作品で、けっして簡単に観て物語を理解するような映画ではなく、観る者に何かを感じさせ、考えさせる作品です。あなたの個人的な視点からみて、日本の観客には、この映画の何を見てもらいたいと思っていますか?
 
観客の多くに私のこの映画を愛する人と憎む人がいます。そのように創ったので全く問題ありません。これはラディカルな未来についてのラディカルなヴィジョンです。もし日本のみなさんにこの映画で感じてもらいたいことが一つあるとするならば、楽しんでほしいということです。このエモーションと寒々しさ、暴力とスローなペース、私の未来についてのヴィジョンをです。演技、編集、音、物語、そう、物語も楽しんでほしい。愛の物語だ。観ていて何なのか良くわからない、と感じたその瞬間を楽しんでほしい。もしかしたらそのような瞬間というのが最高の一瞬なのかも知れない、何故なら自分自身がどんな観客なのかを決めなければならない、自分の意見を決めなければならないからだ。
そして、どうか、私のこの映画の中に「映画」を見出してほしい。私にとって、人生で最も重要なものは「映画」だからです。

『カレ・ブラン』
弱者が生きる余地なき社会。母親が自殺したフィリップは、孤児だけが集められた教室で同じ年頃のマリーと出会い、共に思想教育を受ける。成人した2人はやがて夫婦となリ、フィリップは、「家畜」たちに理不尽な能力テストを強いる、組織のエグゼクティヴ「社畜」として何不自由ない生活を送っていた。しかし通い合っていたはずの2人の心はいつしか冷え切り、結婚生活は破綻しかけていた。そして夫婦関係の修復を願うフィリップの脳裏に、はるか昔、母親から聞かされた野生の白熊親子の残酷譚がよぎった…。
 ※『カレ・ブラン』とは:白い四角形の意。
7つの正方形を人型に組み合わせたロゴが貼られた食品は、人肉加工食品を意味する。

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執筆者

Yasuhiro Togawa