いよいよ4月6日(土)より、シアター・イメージフォーラムにて公開となる『カレ・ブラン』。異常が日常となった狂った世界、精神的な暴力の提示など、一般的なエンターテイメント映画とは一線を画す静かな衝撃が話題の本作。本国フランスではその精神的な暴力性を理由にR指定を受けて公開規模が縮小、その仕打ちに監督が「人を後ろから刺すようなものだ」と憤りを感じつつも現実を受け入れたという。4月6日(土)からの日本公開に先駆けて行われた特別試写会においても興味深い結果が表れることとなった。

『THX1138』『時計じかけのオレンジ』『パララックス・ビュー』『マラソン・マン』などの偏執的70年代アメリカに強い影響を受けたとされる『カレ・ブラン』は、近年の映画には珍しい拷問ともいえるデッドスローなテンポ、目を奪う映像の美しさ、神経を逆撫でするミニマルで不穏なサウンドデザインなど、より多くの集客を目指して娯楽性やキャスト・スタッフのネームバリューを高めようとする映画の対極に位置し、また逆に芸術性を追求した実験精神に満ちた映画とも異なる。そしてこの特異な内容と映像・音響設計がゆえか、比較対象の無さからか、いままで一部を除き大多数の鑑賞者からは反応がなかった、というよりは「わからない」という意見が大半を占めたという。しかし初めて一般客を対象に行われた試写会において満足度の調査を行った結果、平均得点75.5点(100点満点中)を記録。最低点は50点、100点という最高得点もマークし、さらに、極限の暗さを提示する内容ながら66%もの人が「人に薦める」と回答、意外に満足度が高いことが判明した。また本作は管理・統制の行き過ぎた末の権威に支配された世界における社畜化、家畜化した人間を扱っているが、「絶対的な権威に死体袋に入れと言われたらどうするか」との問いに81%が「入らない」と回答、また「現代において人間の“家畜化”を感じることはありますか?」との問いには48%もが「感じる」と回答。現代日本において自分の意見を持たずに周りに流される、権威に従属する風潮を危惧しつつも、「自分はそうならない」という反骨心があるということが伺える。さらには「最悪」「面白くない」「わけわからない」というネガティブな感想は10%、「最高」もしくは「面白い」というポジティブな意見は90%に達し、海外での反応とは異なる反応がここ日本ではあらわれている。もしかすると海外での評判とは異なり、『カレ・ブラン』は分かり易い映画なのか、それともヨーロッパよりも日本人に内容的にフィットするのか、もしそうだとしたらそれは何を意味するのか。4月6日(土)より、シアター・イメージフォーラムにて遂に公開となる『カレ・ブラン』、是非自分の目で、五感で確かめてほしい。

最後に監督のメッセージを:「観ていて何なのか良くわからない、と感じたその瞬間を楽しんでほしい。もしかしたらそのような瞬間というのが最高の一瞬なのかも知れない、何故なら自分自身がどんな観客なのかを決めなければならない、自分の意見を決めなければならないからだ」−ジャン・バティスト・レオネッティ

試写会では、こんな意見を頂きました!!

○考えさせられる、「面白い!」と単純には言えない映画(29歳/女性/会社員)
○シンプルに独自の世界を表現している映画で、このような考えさせられる暗めの映画が個人的に好き。(女性/学生)
○絶望の世界での夫婦の絆に感動しました。(41歳/男性/会社員)
○1回では理解できないが、映像の美しさが不気味さを際立たせている。(35歳/女性/会社員)
○好きな映画ではないが“冷たい映画”だからこそ、人間の温かさが浮かび上がった気がした。優しさも愛情、忠誠心も愛情。人間、それなしではどの時代においても生きていけないと思う。(37歳/女性/販売員)
○2回観たら最高になるかも。観終わったところで、え? 少しすると、「あの意味不明な数字の意味はアレか?!」と戦慄・・・。帰りには、挟まれていた数秒のショットを思い出して戦慄・・・。でもスタイリッシュで力強い。(55歳/男性/歯科医師)
○私は仕事で家畜に関わったりするので、ベジタリアンになってもいいかもと、一瞬思いました。(24歳/女性)
○生命・組織・絶望感。いろいろな意味で考えさせられる映画。(35歳/女性/会社員)
○暴力や人肉食という意味ではなく、もっと深い人間の怖さを感じました。(41歳/男性/会社員)
○カメラワーク、編集、そしてサウンドデザイン、これは今までにない美しさ!この状況をそこから撮るか?! そのショットをそこに挟むか?! というオドロキ。(55歳/男性/会社員)
○この映画のテーマは、今の日本の行く末にも近いものがある。(18歳/男性/学生)
○クールで温度の低い映画だと感じました。映像もスチール写真が繋がったかのような、テンポよく切り替わる場面が続いたり、幾何学的なビルの外観、つくり笑いの白い歯、意図した色彩の乏しさ、すべてが印象的でした。(37歳/女性/会社員)
○あの2人が出会わなければ絶望しかない。出会いの大切さ、芯を持つことの大切さを感じました。(24歳/女性)
○人間、誰しもがなりえるダークな面が描かれている映画。(48歳/女性/主婦)
○1回観ただけでは、ポカンとしてしまう。(女性/学生)
○普遍的な、“愛”を求める映画だと思う。(38歳/女性/会社員)

『カレ・ブラン』
オフィシャルサイト www.carreblanc-jp.com
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執筆者

Yasuhiro Togawa