愛すること、失うことに耐えること、生きる意味を見出すこと。
闘いを物語り続けた孤高の映画作家ジョン・カサヴェテス、甦る!

この度、「ジョン・カサヴェテスレトロスペクティヴ」と題したジョン・カサヴェテスの特集上映を、5 月26 日よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開する運びとなりました。
映画監督のみならず、世界のあらゆるジャンルのクリエイターたちから敬愛され、没後23 年の今なお、多大な影響を与え続けるジョン・カサヴェテス。
93 年に日本で初めて特集上映が企画されてから、実に19 年ぶりにカサヴェテスを再発見する『ジョン・カサヴェテスレトロスペクティヴ』が開催されます。
上映する作品は、『アメリカの影』、『フェイシズ』、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』、『オープニング・ナイト』、『こわれゆく女』、『ラヴ・ストリームス』の6 作品。
『こわれゆく女』は、マーティン・スコセッシ監督が映画修復作業・保存を目的に1990 年に設立した非営利団体THE FILM FOUNDATION(フィルム・ファウンデーション)とイタリアを代表するラグジュアリーブランドGUCCIの協力のもと、復元ニュープリント版として復活。
未DVD 化のため幻の作品となっていた『ラヴ・ストリームス』もニュープリント版でスクリーンに甦りま
す。

○ジョン・カサヴェテス
1929 年ニューヨーク生まれ。
ドラマティック・アカデミーで演劇を学び、そこでジーナ・ローランズと出会い、結婚。
50 年代初頭から俳優活動に入り、『アメリカの影』(‘59)で監督デビュー。
普遍性と実験性に溢れ、人間の内面に鋭く迫った作品を次々と発表し、インディペンデント映画の新境地を切り開いた。
1989 年に肝硬変で死去。

○『ジョン・カサヴェテスレトロスペクティヴ』上映作品

・『アメリカの影』SHADOWS
マンハッタンに暮らす、黒人の血を引いた三人の兄妹がそれぞれに肌の色からくる疎外感を体験していく様を描く。カサヴェテスのデビュー作にして、後の映像作家たちに大きな影響を与えたインディペンデント映画の金字塔。シナリオなしの即興演出で、映画の新たな方向性を確立した。

1959 年/アメリカ/82 分/モノクロ/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス音楽:チャーリー・ミンガス
出演:ベン・カラザース、レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、アンソニー・レイ、デニス・サラス
(c)1958 Gena Enterprises.

・『フェイシズ』FACES
関係の破綻した中流アメリカ人夫婦の36 時間を描く。男女の愛の葛藤を描くカサヴェテス一連の作品の原点。メジャー映画会社からの支援を一切受けず、自宅を抵当に入れたり、俳優としてのギャラをつぎ込んで製作。オスカー3 部門でノミネートという成果を挙げ、ハリウッドにその存在を認知させた革命的傑作。ヴェネチア国際映画祭最優秀主演男優賞、イタリア批評家賞受賞。アカデミー賞最優秀助演男優賞、助演女優賞、脚本賞ノミネート。

1968 年/アメリカ/130 分/モノクロ/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス撮影:アル・ルーバン
出演:ジョン・マーレイ、ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセル、リン・カーリン、
(c)1968 JOHN CASSAVETES

・『こわれゆく女』(復元ニュープリント上映)A WOMAN UNDER THE INFLUENCE
精神のバランスを崩した妻と土木工事の現場監督を務める夫との夫婦愛を描いたカサヴェテスの代表作の一本。脚本はジーナ・ローランズ主演の戯曲として執筆。現代人の閉ざされた人間関係の中での純粋な愛情をありふれた家庭の中に求めた秀作。ゴールデングローブ賞最優秀女優賞(ドラマ)受賞。アカデミー賞最優秀主演女優賞、監督賞ノミネート。

1975 年/アメリカ/147 分/モノクロ/モノラル
監督・脚本:ジョン・カサヴェテス製作:サム・ショウ
出演:ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセル、マシュー・ラボートー、
(c)1974 Faces International Films,Inc.

・『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』(1976 年版)THE KILLING OF A CHINESE BOOKIE
暗黒街のマフィア、ストリッパー、ナイトクラブ、犯罪。フィルム・ノワール的なテーマを持つカサヴェテス作品の中でも特異な1 本。主人公コズモにカサヴェテス自らの人生の困難を重ねあわせ、芸術のために生きる孤独な男を描いたカサヴェテス一流の作品。ヴェネチア国際映画祭批評家賞。

1976 年/アメリカ/134 分/カラー/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス撮影:フレッド・エルムス
出演:ベン・ギャザラ、ティモシー・アゴリア・ケリー、シーモア・カッセル、アジジ・ジョハリ
(c)1976 Faces Distribution Corporation

・『オープニング・ナイト』OPENING NIGHT
一人の有名舞台女優を通して、人が〝老い″を自覚し始めた時に感じる焦燥や不安を描いた作品。本作でベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞したジーナ・ローランズの演技は必見。カサヴェテス作品の中で本作が唯一「夫婦役」として共演している。ベルリン国際映画祭主演女優賞受賞。

1977 年/アメリカ/144 分/カラー/モノラル(デジタル上映)
脚本:ジョン・カサヴェテス撮影:アル・ルーバン
出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ベン・ギャザラ、シーモア・カッセル、
(c)1977 Faces Distribution Corporation

・『ラヴ・ストリームス』(ニュープリント上映)LOVE STREAMS
他人を愛することに不器用ながらも、愛や孤独をテーマにした小説を書く男と狂おしいほどに夫と娘に愛を捧げたために精神のバランスを崩していく女の姿を描く。「愛、孤独、狂気」を主題にしたカサヴェテス映画の集大成となった傑作。ベルリン国際映画祭グランプリ受賞。

1984 年/アメリカ/141 分/カラー/モノラル
脚本:ジョン・カサヴェテス原作・共同脚本:テッド・アレン
出演:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ダイアン・アボット、シーモア・カッセル、
(c) MCMLXXXIV Cannon Films, Inc.

5 月26 日より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー!

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa