私たちの最初の映画『ナージャの村』を作るきっかけは、チェルノブイリ原発事故で汚染され、地図から消えた村に住み続ける一人の牛飼いの老人の言葉だった。
「どこへ行けというのか。人間が汚した土地だろう。」(アルカジイ・ナボーキン)
あれから二十五年目の春を迎える。
ポレポレ東中野毎年恒例<4.26>企画

開催にあたって
ポレポレ東中野では、チェルノブイリ原発事故の発生した4月26日に毎年、原発に関する作品の企画上映を開催しています。
単純な賛否ではなく、そもそも原子力発電とは何なのか、なぜ原発を必要とするのか、その背景を見据えることから始めようと、
国内外の作品を問わず、劇映画、ドキュメンタリー、原発の建設記録を追った映画なども上映してきました。
1986年4月26日のチェルノブイリ原発事故から四半世紀が経ち、事故から25年目の今回は区切りの年として規模を拡大し、二週間の特集上映を企画しました。
これまでの”4.26企画”でも恒例の『ナージャの村』(1997)、『アレクセイと泉』(2002)に加え、上関原発建設予定地の目の前にある山口県祝島の生活を捉えた『祝の島』(2010)や、原発の建設記録を追った記録映画、六ヶ所村核燃料サイクルに関してのルポルタージュ、フランスのラ・アーグやイギリスのセラフィールド、ドイツのヴァッカースドルフの原子力関連施設やその近辺に暮らす人々を収めたドキュメンタリー、原発・核実験を扱った劇映画など、バラエティに富んだ作品を上映します。
映画で描かれるさまざまな側面からの原子力発電、核資源を観ることによって、ますます関心を深めて頂ければと思います。
   主催:ポレポレ東中野

上映作品
※詳細な作品解説や上映スケジュールは www.mmjp.or.jp/pole2/ をご参照ください。

『一年の九日』(1961年/108分)監督・脚本:ミハイル・ロンム
 核実験に青春を捧げた三人の男女の物語。
 上映日:4/28(木),5/1(日)
『原子力発電の夜明け』(1966年/43分)監督:森田実
 日本初の原発、東海原発一号炉の建設の模様を追った作品。
『原発切抜帖(げんぱつきりぬきちょう)』(1982年/45分)監督・企画:土本典昭
 新聞記事の切り抜き構成のみでされた映像と、小沢昭一の語り、高橋悠治の音楽による異色作。
 上映日:4/23(土),27(水),5/1(日) ※二本立て上映
『ストーカー』(1979年/163分)監督・美術:アンドレイ・タルコフスキー
 本SFの舞台”ゾーン”は原発事故の跡地でないかと推測される。タルコフスキーは未来を予見していたのか。
 上映日:4/24(日),29(金)
『海盗り—下北半島・浜関根』(1984年/103分)監督:土本典昭
 原子力船むつの新母港建設に揺れた住民のたたかい。
 上映日:4/25(月),28(木),5/4(水)
『六ヶ所人間記』(1985年/171分)構成・編集・現場録音:山邨伸貴
 核燃料サイクル施設建設の話が持ち上がる以前の六ヶ所村の姿。
 上映日:4/27(水),29(金)
『下北核半島からの報告 核燃料サイクル』(1988年/58分)監督:森弘太
 原発、米軍基地、原子力船母港、核燃料サイクル施設建設計画までもが存在する下北半島からのルポ。
 上映日:4/24(日)
『ドキュメント’89 脱原発元年』(1989年/105分)監督:小池征人
 日本全国各地の原発の近くで暮らす人々、反原発の活動をする人々を追った本格ドキュメンタリー。
 上映日:4/26(火),5/4(水)
『夏休みの宿題は終わらない』(1990年/130分)監督・撮影・編集:山邨伸貴
 六ヶ所村に作られる核燃料サイクル施設とは何なのか。フランス・ラアーグ、イギリス・セラフィールドを訪ねる。
 上映日:5/1(日),3(火),5(木)
『第八の戒律』(1991年/95分)監督:ベルトラム・フェアハーク、クラウス・シュトリーゲル
 チェルノブイリ後のヨーロッパ。各地に再処理施設は存在する。
 上映日:4/30(土),5/5(木)
『ナージャの村』(1997年/118分)監督・企画・原案:本橋成一
 放射能汚染されたベラルーシ・ドゥヂチ村。そこには汚染されているとは思えないユートピアのように美しい村があった。
 上映日:4/24(日),25(月),28(木),5/2(月),4(水),6(金)
『アレクセイと泉』(2002年/104分)監督:本橋成一
 チェルノブイリの風下の町、汚染されたベラルーシ・ブジシチェ村には放射能が検出されない奇跡の泉がある。
 上映日:4/23(土),26(火),5/2(月),5(木),6(金)
『田神有楽(でんしんゆうがく)』(2002年/113分)監督:加藤鉄
 六ヶ所村核廃棄物処理施設の建設予定地に暮らす一家族。昔からの生活を続けている。
 上映日:5/3(火),6(金)
『ヒバクシャ 世界の終わりに』(2003年/116分)監督・編集:鎌仲ひとみ
 劣化ウラン弾によって被ばくしたイラクの子ども。アメリカ、そして日本。世界中にヒバクシャは存在する。
 上映日:4/26(火),5/2(月)
『祝(ほうり)の島』(2010年/105分)監督:纐纈あや
 対岸に原発建設予定地のある山口県祝島。豊穣な海や山の恵みに支えられた1000年の歴史を刻む島。
 上映日:4/23(土),25(月),27(水),30(土),5/3(火)
『ひろしまを見た人—原爆の図丸木美術館—』(1985年/25分/スライド上映)構成・編集:土本典昭
『チェルノブイリいのちの大地』(1993年/21分/スライド上映)構成:西山正啓
 本橋成一の写真を映画人が構成したスライド作品をイベント上映。
 上映日:4/30(土) ※二本立てイベント上映
 

執筆者

Yasuhiro Togawa