7月14日(土)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開となる映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』。
原作は、「惡の華」「ぼくは麻理のなか」など、思春期の少年少女をモチーフに、人間の内面に迫った奥行きのある作風で衝撃作を生み出し続ける漫画家・押見修造の同名作。ヒット作が次々と映像化され、現在も連載中の“究極の毒親”を描いた「血の轍」、そして吸血鬼になってしまった平凡な少年の葛藤を描いた「ハピネス」と、ファンを熱狂させ続けている。
そんな鬼才・押見修造のルーツに最も迫れるのが、自身の体験をもとに描いた「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」。
人々を魅了して止まない押見修造と、同作の魅力に迫ります!

“こじらせた青春”を描かせたら右に出るものはいない!?
クリエイターたちがこぞって映像化を熱望する押見作品。

1981年生まれの漫画家・押見修造は、2002年に「真夜中のパラノイアスター」でデビュー。
その後、ボードレールの詩集を愛読する少年が、強烈な自我をもつ同級生の少女と交流していくなかで、思春期特有の屈折した自分探しをしていく様を描いた「惡の華」が高く評価され一躍、押見修造の名が世に広まる。同作で少女が放つ「クソムシが」という言葉は作品の代名詞ともなった。また、物語の展開の巧みさは勿論、押見氏がこだわる表情の繊細な描き込みは、役者や映画監督、クリエイターたちからも絶大に支持され、「惡の華」がTVアニメ化、「漂流ネットカフェ」、「僕は麻理のなか」がTVドラマ化、「スイートプールサイド」が2014年に松居大悟監督により映画化、そして今年「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」が公開となるなど、映像化が続いている。誰しもが経験し、過去に葬ってきたであろう痛い思春期を描き続ける押見氏。トラウマを掘り起こすかのように人間の内面を生々しく描き出す作風はクリエイターたちの創作魂を刺激し、そして読者たちはかつての自分を重ねつつ、気づけばその世界観にどっぷりとハマってしまうのだ。

あの「惡の華」と同時期に生まれた、もうひとつの最高傑作
「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」は押見修造のルーツが詰まった、渾身の異色作!

押見修造の代表作「惡の華」と、押見ファンの間で“もうひとつの最高傑作”と名高い「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」。
全く正反対のテイストの作品ながら、押見氏の代表作となるこの2作は、実は同時期に執筆されていたのだ。
そんな「志乃ちゃん~」は、他作品の比べ物にならないくらいに自身の経験を下敷きに描かれた作品ともいえる。

●映画にも散りばめられる「押見修造」を作った“カルチャー”

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」を執筆するにあたりインスピレーションを受けた作品として押見が挙げたのは、自身も好きな作品だという2001年に公開されたアメリカ映画『ゴーストワールド』。高校を卒業したばかりのはみ出し者の少女二人の鬱屈した日常を描いた青春物語は、志乃と加代のキャラクター設定にも影響を感じさせる。

また、映画化されるにあたり押見氏がこだわったのは、登場人物たちがCDを貸し借りするシーンの楽曲のセレクト。
映画では舞台となる90年代を彩る楽曲も見どころのひとつだが、撮影に入る前に、志乃と加代の同級生・菊地の好きな音楽として、キャラクターの精神性を表すため少しメジャーから外れたニルヴァーナやムーンライダーズ、ダイナソーJr.を使ってほしい!と監督に指定した。

学生時代、音楽にのめり込んでいたという押見氏のこだわりが、原作のみならず、映画にもしっかりと反映されている。
「志乃ちゃん~」を観れば、押見氏の独創的な世界を形作ったカルチャーの軌跡をたどれるかもしれない!

●涙なしには読むことができない!

押見氏の実体験をベースに描かれた「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」
「志乃ちゃん~」の主人公は、吃音により自分の名前すら上手く話すことができない高校1年生の大島志乃。
母音からの発音が苦手という設定やクラスの自己紹介で笑い者になってしまう場面は押見自身の実体験をもとに描かれた。
吃音でなければ漫画家になれなかったかもしれないという押見氏。吃音があったからこそ、人の表情から感情を読み取ることが得意になり、キャラクターの表情を描く際に力になった。自分の言いたいことが伝えられないもどかしさの反面、それを漫画という形で爆発させることができたという。
本作は、押見氏が感じた、リアルな青春の痛みと微かな希望が映し出された、原点と言える特別な作品なのだ。

だが一方で、 “吃音漫画”ではなく、「誰にでも当てはまる物語にしたかった」という強い押見氏の意向から、漫画、映画ともに作品内では意図的に〈吃音〉や〈どもり〉という言葉は使われていない。実際に、吃音の有無にかかわらず、幅広い年齢層の読者から “共感した”“涙なしには読めない”“家族や友人に薦めたくなる”“勇気をもらった”など、絶賛の声が寄せられている。
Amazon単巻あたりのレビュー数は押見作品のなかで最大を記録。レビュー自体に読み応えがあるコミックとしても知られている。
押見ファンは勿論、はじめて押見作品に触れる導入作品としても、最もおすすめしたい「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」。
押見氏自身も大満足の出来だという、実写化作品を是非、原作と併せてスクリーンで堪能してほしい。

出演:南 沙良  蒔田彩珠 /萩原利久 /
小柳まいか 池田朱那 柿本朱里 中田美優 / 蒼波 純 / 渡辺 哲
山田キヌヲ  奥貫 薫

監督:湯浅弘章  原作:押見修造 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」 (太田出版)
脚本:足立 紳 音楽:まつきあゆむ 配給:ビターズ・エンド 制作プロダクション:東北新社

製作:「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会(日本出版販売 カルチュア・エンタテインメント 東北新社 ベンチャーバンク)
2017年/日本/カラー/シネスコ/5.1ch/110分
©押見修造/太田出版 ©2017「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」製作委員会
http://www.bitters.co.jp/shinochan/

7月14日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開!