『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー監督が製作総指揮を務め、サンダンス映画祭ほか各国の映画祭で激賞され、この度、2016年アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『Cartel Land(原題)』の邦題が『カルテル・ランド』に決定し、2016年5月よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開される運びとなりました。
麻薬組織同士の縄張り争いや、政府と麻薬カルテルによる武力紛争をさす〝メキシコ麻薬戦争”は、2006年から2014年までに約10万人以上の死者を出し、多数の一般市民を巻き込みながら現在も続けられており、全世界を震撼させています。本作は、そんな恐るべきメキシコ麻薬戦争の最前線を追った衝撃のドキュメンタリーです。暴力が支配し、無法地帯と化したメキシコの街、そして、麻薬カルテルに立ち向かうべく結成された自警団を侵食していく癒着と腐敗……。若き映画監督マシュー・ハイネマンが持つカメラは、死と隣り合わせの状況下、次々と信じがたい現実を映し出します。一瞬たりとも目の離せない映像の連続。それはスリリングなだけでなく、正義と悪の境界が消滅する、メキシコ社会が陥ってしまった袋小路を生々しく浮き彫りにしていきます。
先日も、メキシコでは組織の撤退を掲げた市長が就任当日に殺されるなど、今も麻薬カルテルの野放図であり、事態は悪化の一途を辿っています。
さらに、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルの光と影に迫る『エスコバル/楽園の掟』(3月12日公開)、米・メキシコ国境の麻薬戦争を描く『ボーダーライン』(4月9日公開)、Netflixで話題沸騰中のドラマ「ナルコス」、ハビエル・バルデムがエスコバルを演じる『Escobar(原題)』、トム・クルーズ主演『Mena(原題)』など、これからは麻薬ビジネスを題材にした劇映画の公開が次々と控えています。そうした大作の数々にいっそう深い理解と洞察を与えてくれ、遠く離れてはいても確かに存在する世界の驚くべき現実を観る者にまざまざと突きつける『カルテル・ランド』にどうぞご注目ください!!

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執筆者

Yasuhiro Togawa