アジア映画専門館として 2006 年 3 月 11 日にオープンしたシネマート六本木の閉館が発表された。
閉館日は、今年 6 月 14 日。あと三か月で、その 9 年の歴史に幕を閉じる。
劇場では閉館に向け、お客様への感謝を込めて、様々な企画上映を調整している。この度、そのラインナップの大枠が発表された。
閉館企画の共通タイトルは、〈シネマート六本木−劇終−THE LAST SHOW〉。
古き良き香港映画の最後にスクリーンに映し出される“劇終”(邦画でいうところの“完”)から取っている。実にシネマート六本木らしいタイトルだ。
そのラインナップは、〈韓流祭〉〈台湾シネマ・コレクション 2015〉〈香港電影天堂 最終章〉〈マレーシア映画ウィーク〉〈韓流シネマ・フェスティバル2015〉となっている。最後の三か月は、純度 100%のアジア映画専門館となる。
まず、現在もプレ企画としてスタートしている〈韓流祭(まつり)〉。
これはオープン以来コンスタントに開催してきた、韓流スター映画特集の集大成となっている。週替わりで〈チャン・グンソク祭〉〈ヒョンビン祭〉〈イ・ビョンホン祭〉〈カン・ドンウォン祭〉などが登場。韓国映画の名作が一堂に集められた企画となっている。
初日には、キム・ナムギルのファンから豪華なバルーンスタンドが 2 台届けられ、ロビー中央を賑やかに飾った。これも当劇場の特集上映の際の風物詩となっている。ファン参加型の劇場であることを意識してきた劇場ならではの光景といえるだろう。
4月11 日より開催されるのが、〈マレーシア映画ウィーク〉だ。東京国際映画祭で紹介されアジア映画ファンの心を掴んだ、マレーシアを代表する、故ヤスミン・アフマド監督の特集と、マレーシア・ニューウェーブの注目作のほか、新進監督の最新作など見応えのあるラインナップ。来日ゲストも予定している。アジア映画専門館として、最も特色ある企画といえるだろう。(主催:混成アジア映画研究会/マレーシア映画文化研究会/ODDPICTURES)
4 月中旬開催予定の〈台湾シネマ・コレクション 2015〉では、ただいま新作映画を交渉中。これに加え、『KANO 1931 海の向こうの甲子園』が大ヒット中のウェイ・ダーション監督の過去作『海角七号 君想う、国境の南』『セデック・バレ』をはじめとする台湾映画の名作の数々を紹介する。
4 月下旬開催予定の〈香港電影天堂 最終章〉は、過去の香港映画特集で紹介してきた懐かしい作品を中心に組まれる。
掘り出し物を期待したい。
企画のラストを飾るのが、5 月 9 日より開催の〈韓流シネマ・フェスティバル 2015〉だ。
「〈韓流シネマ・フェスティバル 2006〉でオープンした劇場なので、〈韓フェス〉でクローズしたい」という劇場の想いに応え、配給各社が新作を提供。
シネマート系列で 2013 年より開催してきた〈韓国映画セレクション〉の〈2015 SPRING〉版として、ドンヘ(SUPER JUNIOR)&ソン・スンヒョン(FTISAND)の映画デビュー作『レディアクション -4 つの青春-』、チョン・ウソン主演作『神の一手』、“朝鮮版シャーロック・ホームズ”の続編『朝鮮名探偵 2 -失われた島の秘密-』の 3 作品を公開。さらに、イ・スンギの映画デビュー作『今日の恋愛』、韓国ドラマ「のだめカンタービレ〜ネイル カンタービレ」が話題のチュウォン主演の『ハート泥棒を捕まえろ!』の計 5 本の新作を一挙に上映する。
さらに、6 月以降に日本公開を予定している最新韓国映画 3 作品のプレミア上映も計画されているので、こちらも期待したい。
各企画の詳細や、現在調整中の追加企画は、決定し次第、公式サイトにて随時発表される。
特にフィルム上映の作品に関しては、映写機を保有している劇場が激減しているため、今回が日本で観られる最後の機会となる作品も出てくるだろう。貴重なフィルム上映に是非足を運んで欲しい。

残すところあと三か月−
「昔さ、シネマート六本木って映画館があってさ」「あ〜、あったね。結構好きだったよ」なんて会話に参加できるよう、映画と映画館を愛する皆様には、
一度でもいいので足を運び、思い出を共有してもらいたい。さあ、何から観る?
閉館企画特設サイト: http://cinemart.co.jp/theater/special/closing/

執筆者

Yasuhiro Togawa