このたび、スウェーデンが生んだ“20世紀最大の巨匠”イングマール・ベルイマン監督の生誕100年を記念し、特集上映「ベルイマン生誕100年映画祭」を、7月21日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次にて開催いたします。

上映作品 【計 13 本】
『夏の遊び』(51)
『夏の夜は三たび微笑む』(55)
『第七の封印』(57)
『野いちご』(57)
『魔術師』(58)
『処女の泉』(60)
『鏡の中にある如く』(61)
『冬の光』(63)
『沈黙』(63)
『仮面/ペルソナ』(66)
『叫びとささやき』(73)
『秋のソナタ』(78)
『ファニーとアレクサンデル』(82)

2018年7月14日は、ベルイマンの100回目の誕生日。この記念すべき日を祝すため、前夜と当日の二日間連続で、スペシャルなイベントを開催する運びとなりました。

開催を1週間後に控えた「ベルイマン生誕100年映画祭」の予習としても絶好の機会となる、前夜祭と生誕祭、そして各国の名だたる映画監督が寄せたベルイマンへのコメントが到着しました。

【7/13(金)前夜祭】町山智浩さんによる特別レクチャー!
~ベルイマンを知らないあなたのためのベルイマン講義~
町山智浩さんによる、YouTube ライブのスペシャル・トークショーの開催が決定!アンドレイ・タルコフスキー、フランソワ・トリュフォー、スタンリー・キューブリック、ロバード・アルトマン、デヴィット・リンチといった往年の巨匠から、ミヒャエル・ハネケ、ラース・フォン・トリアー、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、グザヴィエ・ドラン、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ギレルモ・デル・トロといった近年の映画作家に至るまで、計り知れない影響を与えたベルイマンのフィルモグラフィーを様々な角度から徹底解解説!生涯で 5 回も結婚するなど、波乱万丈な生涯を送ってきたべルイマンの私生活が作品にどんな影響を与えたのか、ベルイマンの映画がどれほど後の映画に影響を与え、“真似”されてきたのか‥‥などなど、カリフォルニア州バークレーの自宅からたっぷり1時間、ベルイマンの魅力を語りつくします。
【日時】7/13(金)23:00~24:00(予定)
【ゲスト】町山智浩(映画評論家)
【視聴方法】YouTube の<zaziefilms 公式チャンネル>(www.youtube.com/user/zaziefilms/)より生配信!
【7/14(土)生誕祭】世界の巨匠たちと菊地成孔とともに、ベルイマンの誕生日を祝おう!
ベルイマンの 100 歳の誕生日当日は、総勢 25 名に及ぶ有名監督・俳優たちがベルイマンへの思いを語る未公開の傑作ドキュメンタリー『グッバイ!ベルイマン』を特別上映!(2016 年トーキョーノーザンライツフェスティバルで限定上映)。今後、劇場公開・ソフト化の予定もないため、今回の一回限りの上映がラストチャンスとなる可能性が高く、見逃せません。さらに、本編上映前には、映画だけでなく食文化・音楽など北欧カルチャー全般に対する造詣が深い菊地成孔さんをお迎えしてトークショーも実施。ベルイマンを「世界映画史上最強のインフルエンサー」と称す菊地成孔さんが独自のベルイマン論を語ります。
【日時】7/14(土) 16:00 開場/16:20 開演/19:00 終了予定
【会場】YEBISU GARDEN CINEMA(東京都渋谷区恵比寿 4-20-2 恵比寿ガーデンプレイス 内)
【料金】¥1500‐均一
【上映作品】『グッバイ!ベルイマン』(原題:Trespassing Bergman)
【トークゲスト】菊地成孔(音楽家/著述家/映画評論)
【作品概要】
ベルイマンが暮らしたフォール島の自宅。「侵入禁止」の立て札が見える敷地内に、世界各国から集まった映画監督たちがカメラとともに入っていく…。憧れの人の暮らした場所の空気に包まれて高揚する者、ハリウッドのオフィスで冷静に分析する者、パリで、東京で、コペンハーゲンで…世界中の映画作家たちが、敬愛してやまないスウェーデンの巨匠について熱く語り始める。ベルイマンの生涯とフィルモグラフィーの紹介も分かりやすく、入門編としても最適な珠玉のドキュメンタリー。
原題:Trespassing Bergman/英題:Bergmans video 監督:ヤーネ・マグヌッソン、ヒネク・パラス
出演:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、トーマス・アルフレッドソン、ジョン・ランディス、クレール・ドゥニ、ミヒャエル・ハネケ、ダニエル・エスピノーサ、アン・リー、マーテ
ィン・スコセッシ、ロバート・デ・ニーロ、ウェス・アンダーソン、ウディ・アレン、フランシス・フォード・コッポラ、ハリエット・アンデション、ラース・フォン・トリアー、ローラ・ダー
ン、アレクサンダー・ペイン、リドリー・スコット、チャン・イーモウ、ウェス・クレイヴン、北野武、ホリー・ハンター、イザベラ・ロッセリーニ、モナ・マルム、ペルニラ・アウグスト、ト
マス・ヴィンターベア
2013 年/スウェーデン/113 分/DCP

世界中の名だたる映画監督から、ベルイマンへの愛溢れるコメントも到着!
敬称略・順不同

ベルイマンの映画にとてつもない衝撃を受け、彼のようになりたいと心底思った。
――フランシス・フォード・コッポラ
ベルイマンの作品は一つ残らずすべて観た。
電話で話したこともないし、何通手紙を書いても返事ももらえなかった。
話したいことがたくさんあったのに、それが叶わず悩んだよ。
自分なりに理解して、諦めたんだ。ベルイマンなんてクソくらえだ!
僕にも自分の人生がある。連絡したくないなら、こっちも忘れようと思った。
でも彼を敬愛している。悔しいが、僕にとって彼は全てだ。
――ラース・フォン・トリアー
大半の人は、自分の人生に満足していないだろう。
誰もが困難に直面し、様々な思いを抱えてもがいているのだろう。
ベルイマンは問題を簡単に扱わずに、人間の営みをそのまま描く。
年齢や状況によって人の考え方は変わるが、彼の映画は普遍的なことを描いているから、国籍や民族が違っても共感できるんだ。
今の時代、彼のような偉大な映画監督を生み出すのは難しいだろう。
――チャン・イーモウ
僕は 18 歳だった。初めてベルイマンの映画を観た。あの日のことは忘れない。まるで啓示を受けた気がしたんだ。
どれほど衝撃的だったが、きっとわかってもらえないだろう。まるでベルイマンに童貞を奪われたような気分だったよ。
――アン・リー
ベルイマンは、ジャン=リュック・ゴダールやアンディ・ウォーホルのように、新しい映画の定義を作り出した。
彼は世界中の多くの映画作家にとって、強大な影響力をもつ存在だ。
――マーティン・スコセッシ
僕はベルイマンの時代をくぐり抜けてきた。彼が作った作品は全て観ている。素晴らしいものばかりだ!
――スティーブン・スピルバーグ
私の人生で最も偉大な映画人だ。
――ウディ・アレン
あなたの映画は常に、私の心を揺さぶった。
作品の世界観を作り上げる巧みさ、鋭い演出、安易な結末の回避、そして人間の本質に迫る完璧な人物描写において、あなたは誰よりも卓越している。
――スタンリー・キューブリック
ベルイマンの作品において最も心打つ特質は、いっさいの虚飾をはいで、その<本質>だけをむきだしにした性格である。
この世に生をうけ、この世にある者なら、だれもが、そのすばらしさを理解し、評価することができよう。
――フランソワ・トリュフォー

恐ろしいまでに圧倒される演技、息を飲む撮影技術。痛み、病、悲しみ、そして孤独の描写のなんという繊細さ!
――グザヴィエ・ドラン
ベルイマンの映画は、すべてにおいて完璧だった。
――リドリー・スコット
小学校の時に、はじめて観たベルイマン監督の作品が、我が人生のトラウマになってしまった。
1960年代にベルイマンの映画を観るという事は、
スウェーデンのポルノ映画を観ることとなんら変わりないほどに、過激な事であった。
スウェーデンポルノ映画を観るのと同時に、当時の私はベルイマンの『沈黙』や『叫びとささやき』を見て、あるいは高校の時に映画館で見た『不良少女モニカ』で、そしてリヴ・ウルマンという名前を聞くだけで、いまだに幼少時の性の目覚めを思い出し、暗闇の中でドキドキした記憶で疼くのだ。
神だの、原罪だのはこれらの映画が植えつけたんだ。
ベルイマンとは、私にとって北欧の妖しく暗く輝く性の業を、幼い私の心の底に刻んだ罪深い黒い宣教師だ。
――園子温
私のベルイマン最高傑作群は、『処女の泉』、『野いちご』、『恥』、『秋のソナタ』、そして、『ファニーとアレクサンデル』。
『処女の泉』のすごさは、イノセンスの終焉を潔く迎える親力に拠る。
自然をもコントロールできる神々しい映画作家の姿もある。
中世の森の光と罪を洗い流す水の清らかさを謳って、黒澤明の『羅生門』と双璧をなす。
『羅生門』を年月かけて醗酵させたものが、『処女の泉』である、とも思う。
彼の作歴で忘れてならないジャンルは「先ず女優ありき」の作品群だ。これは「先ず母ありき」とリンクする。
『秋のソナタ』では魂の愛人リヴ・ウルマンと国家の母性イングリッド・バーグマンを競演させ、ベルイマン自身の親としての不安を謳い上げた。結婚と離婚を繰り返し、子孫を残した巨匠だから、子供たちへの贖罪の感覚がある。それが強烈な表現者の矜持に転化されて名作を産む。
その最高峰が『ファニーとアレクサンデル』。ここには、母への愛があり、親力の凄みがある。
神の家と演劇の家と魔術師(映画人)の家が香り高く同居している完璧なベルイマン映画は、家族映画の至高のスペクタクルとなり、ベルイマンはこの一作で、映画作家の桃源郷に君臨している。
――原田眞人
別に統計をとったわけではないものの、その世界的な評価の圧倒的な高さと比べるとベルイマンの日本での上映機会は不当に少なかったのではないだろうか。今回の特集上映は、その遅れを一気に取り戻せる絶好の機会である。主要な作品のほとんどがオリジナル企画で脚本も自身で書く作家性の塊のような監督である上に、「神の沈黙」とか「愛と憎悪」とか「生と死」とかWikipedia に書かれているのを見ると、つい重苦しそうで尻込みをしてしまうが、実際に見てみると驚くほどのユーモアと色気に満ちている。
『夏の夜は三たび微笑む』では男も女もだらしなくしかし真剣に艶やかな恋愛ゲームに明け暮れ、死をストレートに題材にした「メメント・モリ」映画の代表格『第七の封印』でさえ、有名な死神とのチェスの様子はそれだけでユーモラスだ。一方で油断していると『処女の泉』のような鈍器で観客を殴りつけるようなエネルギーに満ちた作品もある。ぜひ先入観を一度なくして自由で多彩なイングマール・ベルイマンの小宇宙を再発見して欲しい。
――深田晃司