NHKプレミアムドラマ「奇跡の人」放送終了からひと月後の7月。渋谷の某スタジオで、主役・亀持一択を演じた峯田和伸さん、鶴里花役・麻生久美子さん、花の夫の正志役・山内圭哉さんによる、「奇跡の人」DVD映像特典のオーディオコメンタリー収録が行なわれました。撮影以来久しぶりに顔を合わせた3人が改めて語る、ドラマの見どころ、そして撮影秘話とは…!

NHKプレミアムドラマ「奇跡の人」
亀持一択役・峯田和伸さん 
鶴里 花役・麻生久美子さん 
鶴里正志役・山内圭哉さん

本当はやりたくない!? コメンタリー収録
麻生:オーディオコメンタリーの収録って、おふたりはよくやりますよね?
山内:たまに舞台のとかね。2時間半くらいのやつを見ながらずーっとしゃべるとか。このドラマはちょうどいい長さやなと思う。でも途中で黙っちゃいますよね、やっぱり。
麻生:ふふ、そう! つい映像に見入っちゃって。峯田さんは初めて…?
峯田:何回かありますけど……あんまり本当はやりたくない……。
麻生:えーなんでー?
山内:ま、わからんでもないけど。
峯田:裏っ側をあんまり教えたくないっていうか……。
山内:補足するってことが、なんか無粋な気もしてくるのよね。芝居でも最近アフタートークっていうのがあるんですよ。芝居終わったあとで、演出家と出演者が出てきてしゃべんの。なんかこれ単純に蛇足な感じが……でもその日のチケットは売れる。
麻生:見るほうはやっぱり楽しいですしね。
山内:だからオーディオコメンタリーにしても、おもしろい作品やから、なんの味付けも補足も無しにそのまんま見てほしいけどなって意味じゃないですか?
麻生:(峯田さんに)そうですか?
峯田:……一択のイメージをあんまり壊したくないというか。
山内:そやね。デヴィッド・ボウイが蕎麦食べるのとか、見たないもんね。
峯田:はい、見たくないっす(笑)。
山内:ま、でもコメンタリーも、見てくれる方が喜んでくれるなら、ね!
峯田:はい……!

ゴハンの味が分からない!新曲が作れない!
峯田:撮影が終わったあと、僕、1週間くらい様子がおかしくて……。
山内:どうおかしかったの?(笑)
峯田:ゴハンの味が分かんない感じって言うんですかね……あの……変な感じでしたよ。
麻生・山内:へー!
峯田:撮影中は早起きして睡眠時間が少ない毎日が2か月続いたので、終わって安心したというのと、もう皆さんに会えないというのと……。「ハァ、ちょっとこれはなんなんだ!」っていう感じがありましたよ。新曲も作れないし。
麻生:あっはっは! 私全然なかったです。終わって寂しいですけど、「あと何日で終わる〜♪」ってこう指折り数えたりとか……。
峯田:…………。
麻生:今回は特に妊娠してたこともあって、最後までちゃんと撮り終えられるかがずっと心配で。
山内:はよ終われ〜、はよ終われ〜って?
麻生:そうそう、お腹も大きくなってきますし。それに花は元ヤンキーだから蹴ったり走ったりするし、(花の娘・海役の)萌乃ちゃんだって小さいけどそれなりに体重もあるから……ヒヤヒヤしました。
峯田:そうですよね……命からがらでしたよね。
麻生:だから「やっと終わった〜!」ってホッとしました。
山内:僕らの仕事って……舞台とかもそうなんですけど、わりとスパッと終わるのが気持ちええところがあって。だから僕も、ロスというより「幸せやったな、あの仕事」って思えることを噛みしめているというか。だからもし「シーズン2もやる」とか言われたら、逆に気ぃ重いなー(笑)。

峯田:一択が“正志”になってた可能性だってあると思う
麻生:ヤンキー役ならほかにも女優さんが…(笑)
山内:悪役がいちばんおもろいねん。プロレスと同じ!
——このドラマの出演依頼があったときは、率直にどうお感じになりましたか?
峯田:去年だったか台本の準備稿をいただいたんですが、「やれっかなぁ…」って。演技の経験はありましたけど、こういうドラマはできるのかなぁって。皆さんに迷惑かけたりしないといいなぁ、と。とにかく「セリフを忘れないこと」「寝坊をしないこと」、この2つは頑張ってやりたいなと思って。
麻生:私は、脚本が岡田さんとうかがった時点で、内容も役もどうでもいいから「やります!」って返事して。でも、実際はヤンキー役(笑)。ヤンキー役だったら正直もっとほかにいい女優さんがいたんじゃないかな〜とは思いましたけど……。
山内:え、例えば?
麻生:アハハッ、それ名前出しづらい! 出しづらいです(笑)。

——山内さんはいかがでしたか? 憎まれ役というのは役者としてつらいですか?
山内:いや逆! 役者でいちばん楽しいのが悪役なんですよ。だってそうじゃないですか……例えばプロレスで言うと、悪役が試合を盛り上げられるわけやから。物語を動かしていく部分を担っているのですごく楽しいですよ。
麻生:うんうん。
山内:正志が憎まれるのもドラマの設計図どおりだと思ってたんで、そのまま正志を演じていけばいいんだと思いました。けど、撮影の後半だったか、僕の知り合いの知り合いの人で、不注意で家族を亡くされた方がいて……その人が、「正志を見てたらすごい気持ちが楽になった」って言わはったんですよ。そういう見方もできるのかと思って。失敗した人が、どこか気が楽になる存在でもあったんだなと。正志見てちょっとラクになる人もおるんやなって思うと、ね……。
峯田・麻生:(ウン、ウン、と深く相づち)
峯田:僕も、正志ってキャラが好きで。それに、もし花と最初に出会ったのが一択で、生まれた子どもに障害があったら、もしかしたら一択が“正志”になってた可能性もあるんです、たぶん。その順序が逆だっただけかもしれない。実は正志は一択と違うようでありながら、すごく似ていて。で、そのふたりを好きになってしまう花っていうのも分かるし。本当にいろんなキャラクターがこのドラマに出てきますけど、正志は本当に純粋で、しかも山内さんがああいうふうに演じてくれて、すごい深みがあるドラマになったなと思いました。

海vs.一択!あの感動シーンの“感動しない”秘話
山内:萌乃ちゃん、かわいかったよなー!
峯田:山内さんと話していると、おふたりとも関西の方なのでなんか漫才みたいな感じで。
山内:本当に天真爛漫な子なので、こっちも接しやすいんですよね。気を遣わなくていいというか。
峯田:かわいかった、本当にお父さんと子どもみたいで。
麻生:そうそう!
峯田:それに萌乃ちゃんは……その日の撮影で長ゼリフがある人のところへ、いちばん最初に行くんですよ。
麻生・山内:えっ!?
峯田:「今日はあの人大変そうだな…」っていう日があるじゃない? 朝、まずその人の隣にゼッタイ行くの!
麻生:ホント? 全然気付かなかったです。
峯田:そうだよ。萌乃ちゃんは、スゴイ人なの。
山内:それ、なに、峯田君は見ててわかったの?
峯田:うん。メイクさんも気付いてて「萌乃ちゃん優しいよね」って。周りを誰よりも見てる。子どもなんですけど、そういうところは「すごいなぁ」って尊敬しますね。別に「頑張ってね」とか言わないけど、ずっとこうやって手ぇ握って。
麻生:そういえば、峯田さんともよく手をつないでて、なんか時々カップルみたいでしたよね。
峯田:うん…はぁぁ〜ちょっと…。なんかね、最初は全然口もきけないところから始まって、そこから手ぇ握って、撮影に入って。で、いちばん大きかったのは、第2話のスープをスプーンですくって食べさせるっていうシーンで…。
麻生:あのときのシーン、萌乃ちゃんの泣き声がかわいそうで! もう聞いてるだけで苦しかった。かわいそうだったなぁ……ホントに。
峯田:あのシーンをふたりで時間かけながら、いろいろぶつけ合いながら撮影を終えられたときに、友情っていうのができたと思うんですよねー。あのあと裏で「撮り終えられたね」ってふたりで話して。「あのへんでスタッフとかみんな感動して泣いてるけど…。あのくらいの芝居、楽勝だよねー」「楽勝楽勝!」とか笑ってました。
麻生:えー、そんなこと言ってたのー? ダメダメ、それは記事に書かないで(笑)。
山内:アハハハ!

印象に残ったシーン・好きなシーン・腹が立ったシーン…!?
山内:正志が花市場の近くを通りかかるシーン(第3話)があったでしょ? その撮影のとき、スタッフがエキストラさんに「花市場に自治体の人が見学しに来ている」っていう設定のお芝居をつけていて…。ふつうは「こっちからあっちに歩いてください」くらいだと思うんですけど、すごい細やかな演出で(笑)。「それ、あたらしーな!」と思って……。
麻生:えー、全然気付かなかったー(笑)。
山内:結局そのシーンはカットになってたんやけど……でも、自分の印象にすごい残ってる。
麻生:私の好きなシーンはどこだろうな……うーん、あ、やっぱりプロポーズのところ。台本を読んだときからあのシーンの撮影がいちばん楽しみで。なんか、あの告白の仕方いいなって。自分が男だったらこんな告白されたいなって思いました。峯田さんはどのシーン?
峯田:僕、どこだろー、全然周り見られなかったから…。今思うと、空き時間にもっと皆としゃべったら良かったと思って。
麻生:しゃべってたじゃない?
峯田:いや、しゃべってなかったっすよ。気づくと皆のキャッキャいう声が聞こえて「あー、皆しゃべってるな」みたいな。「なんでオレ、こんなセリフ覚えてんだろな」って。もうちょっと余裕があればよかったな……。
——峯田さんは、映画初出演で麻生さんと共演して以来、今回のドラマでのプロポーズまで、お芝居での初体験はすべて麻生さんに捧げているそうですね。
峯田:あ、そうですね。今回はキスも捧げました。
麻生:ありがとうございます、アハハッ!
峯田:……あのシーンの撮影中、上を飛行機が通ったんですよ。マイクが拾うくらいの大きさの音だったんでいつもなら撮り直すのに、そのときは「はい、オーケー」って。「いやいや、監督。飛行機の音が入ってるから!」って言ったんだけど(笑)。他のシーンは何回も撮り直すのに、そんなときばっかりすぐにOKで。
麻生:それはそうですね(笑)。
峯田:もう一回キスできると思ったのに…あれは腹立ったなー(と、本気で口をとがらす峯田さん)。
山内:それもう「腹立ったシーン」やん(笑)。

ドラマを見た身近な人たちの反応は?
麻生:私、今回は周りからすっごいいろいろ言われて。わざわざメールくれる人もたくさんいたし。「今まで見たドラマの中でいちばんおもしろい」って言ってくれた人が何人もいたので、すごくうれしくて。あと、同じ幼稚園のママたちからは「子どもたちが好きなの!」って。
山内:あぁ、わかるわかる。
麻生:そう、エンディングの曲を一緒に歌ったりとか。なんか「三軒茶屋までジャンプ〜する〜♪」のところがツボらしくて、そこで笑う子が多いって言ってた(笑)。
峯田:???
山内:うん、家族で見るドラマかも……。
麻生:うーん、そう思って私も自分の子どもに第1話を見せたんですけど……すごく真剣にじーっと見てると思ったら、だんだん悲し〜い顔になってきて。なんか違う感情が生まれちゃったみたい(笑)。見終わったら、悲しそうな顔で私に抱きついてきて。
山内:あぁ…かわい〜い…!
麻生:峯田さんはどうでした?周りの反応。
峯田:「もう音楽やめて、こういうのやれ」って。「こっちのほうがお前は好感度上がるし。ずーっと一択やっとけば?」って言われました。
麻生:ずーっと一択!(笑)
峯田:親からも「こういうのがいいんじゃないかなー」って。
麻生・山内:アハハハハハ!

待望の「奇跡の人」DVD発売は10月26日。特典映像として3人による制作秘話が満載のオーディオコメンタリーも収録! DVD化にあたって皆さんからメッセージです。

峯田さん:「このドラマは『知る人ぞ知る』っていうものにはなってほしくないです。たとえ自分が出ていなかったとしても『見てみよう』って思える本当にいいドラマだから。DVD化されることで、放送を見られなかった人にもこの作品に触れてもらえるので、救われる気持ちです。これから長い時間かけて広がっていくのが楽しみな作品です」

麻生さん:「海と一択が出会ったことによって、いろんな変化が起きて、成長して…そういう姿を私も近くで見ていてふつうに感動したから、ぜひ皆さんにも同じ気持ちを味わっていただきたいです。放送だと『このあとどうなるんだろ? 1週間待てない!』って思ったりしますけど、DVDだと一気にまとめて見られるのがいいですよね!」

山内さん:「ここ何年か“コンプライアンス”みたいなことをよく考えるんです……ま、うちの会社もすごいうるさいんでね……でもね、あんまりやりすぎると本質を失う気がするんですわ。そういうこと考えていたときにこのドラマをやれたのが、僕自身すごい糧になって。本来ドラマってこういうもんやろって。だからDVDでたくさんの人に見てほしいなって思います」

ぜひお楽しみに!

【商品情報】
DVD−BOX【4枚組】
品番:VPBX-15844
価格:15,200円(税抜)/本編392分+特典映像(分数未定)/16:9レターボックス/ドルビーデジタル・ステレオ/片面一層4枚組/カラー/チャプター付/日本語字幕付き/副音声あり
Disc1:本編98分+特典映像〈プレマップ〉放送前ver.
Disc2:本編98分+特典映像〈プレマップ〉後半見どころver.
Disc3:本編98分+特典映像 エンディング曲『骨』(ノンクレジット版)
Disc4:本編98分+特典(オーディオコメンタリー)

レンタルDVD1巻〜4巻
1巻:本編98分+特典映像(プレマップ)
2巻:本編98分+特典映像(プレマップ)
3巻:本編98分+特典映像(「骨」ノンクレジットエンディング)
4巻:本編98分+特典(オーディオコメンタリー)
16:9レターボックス/ドルビーデジタル・ステレオ/片面一層4枚/カラー/チャプター付

特典映像(予定)
●プレマップ(放送前、中押し)
●『骨』ノンクレジットエンディング
●オーディオコメンタリー(峯田和伸、麻生久美子、山内圭哉)

封入特典
・ブックレット24ページ(予定)
・サイン色紙プレゼントキャンペーン応募ハガキ 
★峯田和伸さん、麻生久美子さん、山内圭哉さんの直筆サインが入った色紙を抽選で5名様にプレゼント!!
初回限定封入特典
ドラマで使用された銀杏BOYZによる「骨」を
フルバージョンも収録し初CD化!
※特典内容および名称は予告なく変更になる可能性がございます。予めご了承下さい。

≪公式サイト≫
http://www.nhk.or.jp/pd/kiseki/

≪商品サイト≫
http://www.vap.co.jp/category/1468909816282

執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro TogawaYasuhiro Togawa