長い歴史と豊かな文化を誇るパキスタン・イスラム共和国の街ラホール。過激なイスラーム原理主義の影響で音楽文化は衰退し、伝統音楽家たちは転職を余儀なくされていた。危機感をつのらせた彼らは聴衆を取り戻すため、畑違いのジャズに挑戦し世界に打って出た!熟練音楽家たちの大胆な挑戦が奇跡をもたらした珠玉の音楽ドキュメンタリー『ソング・オブ・ラホール』が8月13日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国にて公開となります。

“このままでは優れたパキスタン音楽が消えてしまう!”そんな危機感を募らせ行動に出たおっちゃん集団「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」はYouTubeとジャズを駆使して世界的に注目され始めるのだが、その際にカバーしたのがあのジャズ界の名曲「テイク・ファイヴ」。プロモーション映像は瞬く間に世界を駆け巡り、100万を超えるアクセスを記録した。そして天才トランペット奏者のウィントン・マルサリスからニューヨークへの招待を受け、忘れ去られたパキスタンのミュージシャン達が再び脚光を浴びることになる。このあらすじを聞いて、ある有名バンドグループのドキュメンタリー映画を思い出す人も少なくないはずだ。世界的大ヒットを記録した『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)である。同名アルバムの制作が元となったこの作品は、1999年当時アルバムと共に世界に衝撃を与えた。

“音楽の神に愛された”とされる「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」はアメリカのギタリスト、ライ・クーダーが国内でしか知られていなかったキューバの老ミュージシャンらを発掘し結成された。彼らの人生は、熟練されたキューバ音楽の美しいアンサンブルを生み出しセクシーな歌声とともに世界中を魅了していた。そんな伝説の老音楽バンドは日本国内でも絶大な人気を誇っていたが、今年3月に「アディオスツアー」と称した“解散ツアー”が東京で開催され、多くのファンに別れを惜しまれた。老ミュージシャンが再び脚光を浴び、活気を取り戻す姿は“音楽の神”を思わせる。本作「ソング・オブ・ラホール」で登場する忘れ去られたミュージシャン「サッチャル・ジャズ・アンサンブル」はまさに音楽の神が宿り、再び世界の音楽界に衝撃を起こすパキスタン版「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」だ。既に音楽関係者に大絶賛されている本作はこの夏、あなたの心に再び音楽の衝撃を与えるだろう。

映画『ソング・オブ・ラホール』は8/13より、渋谷ユーロスペースほか全国順次ロードショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa