「ミモザの島」と呼ばれる風光明媚な避暑地で、謎の溺死を遂げた美しい母。それから30年、未だ母への喪失感から抜け出せないアントワンは、真相を突き止めようとするが、何故か家族は“母の死”について頑なに口を閉ざす。再びミモザの島を訪れたアントワンは、自分が知らなかった母のもう一つの顔、そして母の死の背景に渦巻く禁断の真実に辿り着くのだったがー。

『サラの鍵』原作者タチアナ・ド・ロネのベストセラー小説が映画化された本作は、厳選された曲の数々によってサスペンスに奥行きを加えている。中でも、シングル「Creep」をきっかけに世界的なブレークを果たして以来、その人気と評価を不動のものにしているイギリスのロックバンド「Radiohead」(レディオヘッド)と、世界的に注目を集めているアイルランド・ダブリン出身、新進気鋭のロックバンド「Kodaline」(コーダライン)—本作ではこの2つの人気ロックバンドの曲が起用されているというから、音楽好きは大注目だ!

60年以上の歴史を誇るイギリスの音楽紙『NME(ニュー・ミュージカル・エクスプレス)』が運営する音楽サイト「NME.com」はRadiohead(レディオヘッド)を“21世紀のザ・ビートルズ”であると綴っている。20年前、イギリスの多くのメジャーなバンドがコカインや大豪邸に大金つぎ込む中、彼らは稼いだ大金をスタジオ新設やサウンド追求に費やし、現在ではその不可能にも思える新しいサウンドの音楽を通し、根強くファンを魅了し続けている。本作で用いられる「ライク・スピニング・プレイツ」は、メンバーのトムが「あらゆる曲の中で最高」と語る意欲作で、主人公の苦悩に満ちた心情を表現している。
エンディングに流れる、「All I Want」はKodaline(コーダライン)が世界的注目を集める契機になった名曲と言ってもいいだろう。1400万回再生以上を記録したGoogleの2012年まとめ動画でBGMとして起用され、国内ではSUMMER SONIC2013でも見事なステージを披露した。さらに人気番組『テラスハウス』(2014年)のBGMとして話題となったのも記憶に新しい。「All I Want」を収録するアルバム「In a Perfect World」(2013年6月リリース)はアイルランドのチャートで1位、UKチャートでも3位を記録しており、彼らもまた大注目バンドとしておさえておきたい。

本作では音楽好きにはたまらない名曲の演出が観客の感情を揺さぶり、ミステリアスな世界観に引き込まれるだろう。

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執筆者

Yasuhiro Togawa