5月22日に閉幕を迎えた第69回カンヌ国際映画祭で見事グランプリを受賞しました『It’s Only The End Of The World(原題)』ですが、監督グザヴィエ・ドランが涙ながらに語った感動的な受賞スピーチ全文が到着しました!

【受賞スピーチ全文】
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「カンヌ映画祭、ティエリー・フレモー、クリスチャン・ジュンヌ、信頼する友で製作者のナンシー・グラント、
僕とこの作品の出会いをくれたアンヌ・ドルヴァル、マックス、友人たち、そして家族に感謝します。
僕の映画の主人公とは違い、とても仲がよく、家族同然のみんなです。
この映画の実現に尽力してくれたエージェント、プロデューサー、配給会社の人たちにも、お礼を言います。
それから審査員の皆さんにも感謝しています。
この映画の感情をくみ取っていただき、ありがとうございます。

感情というのは単純なものばかりではなく、それを他の誰かと分かち合うのは、簡単なことではありません。
時に甲高い叫び声や、突き刺すようなまなざしを伴い、暴力すらほとばしります。

ジャン=リュック・ラガルスの『まさに世界の終わり』のような名作を基に、
原作を汚さないように心がけつつ、汚したとしても、
最善を尽くしてそこから1本の映画を抽出し、物語を紡ぎ出そうと努力しました。
登場する人物は時に意地悪く、時に毒を吐きますが、何よりみな心に傷を負った人たちです。
彼らは我々の周りにいる人たち、母や兄弟、姉妹たちの多くがそうであるように、
恐怖を感じ、自信を失い、愛されていると確信できないで生きています。
そんな登場人物たちの感情を描き出すことを、僕は目指しました。

私たちがこの世で求める唯一のことは、愛し、愛されることです。
特に僕は、愛されたい欲求が強いのだと思います。

原作者のラガルスが見事なまでに想像し、ギャスパー・ウリエル、ナタリー・バイ、レア・セドゥ、
ヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤールらが人間的に演じ、
血肉を与えた登場人物たちも、それは同じです。

僕は成長するにつれて人から理解されることの難しさを知るようになりました。
でも、今日、自分のことを理解し、自分が何者かをようやく知ることができました。

今夜、皆さんが同席し、示してくれた言葉や理解と愛情を見て、確信しました。
妥協したり、安易な方に流されたりせず、
ハートと本能を持つ、我々のような人間を描く映画を作るべきだと。

感情は相手に届くまでに時間がかかることもありますが、いづれ必ず届くものです。

ただ、わが友フランソワ・バルボには、もう届きません。
偉大な衣装デザイナーで、偉大な芸術家だった彼は、存命であれば、
こうして彼の名前を挙げて話すことを嫌がったでしょう。
本当に有能で、謙虚な人でした。

彼は別れも告げず、この映画を見ることもなく、我々の元を去りました。
どこかで見てくれたと思いますが、感想を聞けなかったのは残念です。

2年前もここに来て、僕の人生を決める瞬間を経験しました。
そして、今こうして再び、人生を変える舞台に立っています。

闘いは続きます。これからも人々に愛される、あるいは嫌われる映画を作るでしょう。
それでも、アナトール・フランスが言ったように、
「無関心な知恵より、情熱的な狂気の方がいい」のです。」
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「若き美しき天才」と称され、映画界で大注目を集め続ける27歳、グザヴィエ・ドラン。
前作『Mommy/マミー』で審査員特別賞を受賞した際のスピーチが、式の中で最も感動的な瞬間だったと話題になったが、再び、エモーショナルなスピーチで世界の映画人の心を動かした。

本作『It’s Only The End Of The World(原題)』のキャストには、マリオン・コティアールの他に、007シリーズ最新作『スペクター』で歴代最高のボンドガールとして実力と人気が急上昇したレア・セドゥ、『イブ・サンローラン』での演技の評価が世界的に高いギャスパー・ウリエルを中心に、ヴァンサン・カッセル、ナタリー・バイら、フランス映画界のベテラン俳優が集結。

劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」(れんが書房新社刊)を基にし、ドランが監督・脚本を手がけた物語は、長い間帰郷していなかった若手の作家が、
12年ぶりに故郷に帰り、家族に自身の死が近づいていることを告白することで表面化する、
家族の葛藤、そして愛、それぞれの生と死を描く瞑想的なものがたりです。

本作『It’s Only The End Of The World(原題)』は2017年2月11日新宿武蔵野館他 
全国順次ロードショーとなっておりますので、引き続き是非ご注目ください!

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執筆者

Yasuhiro Togawa