2016年1月10日、この世を去ったデヴィッド・ボウイ。その2日前に69歳の誕生日を迎え、2年ぶりのアルバム『ブラックスター』を発表したばかりだった。架空のロック・スター「ジギー・スターダスト」を演じることで世界的な大スターとなった彼は、それだけではなく、それぞれのアルバムでは常に自分ではない誰かを演じることで、「デヴィッド・ボウイ」となってきた。美しき孤高のロック・スターは、また俳優としてもスクリーンで異彩を放つ存在であった。『地球に落ちて来た男』はそんな彼の初主演作。ウォルター・テヴィスの同名SF小説を、『美しき冒険旅行』『赤い影』のニコラス・ローグ監督が映画化し、新天地を求めて地球に降り立った宇宙人をボウイが演じている。

監督のニコラス・ローグは初監督作品『パフォーマンス』(1970年)ではミック・ジャガー、『地球に落ちて来た男』の次作『ジェラシー』(1979年)ではアート・ガーファンクルを主演に迎えるなど、ミュージシャンの身体を映画の中心に置くことで、「映画」を作り変えてきた。俳優ではない「異物」としてミュージシャンたちの身体があることで、映画は不安定になり、そこに運動が生まれた。まさにこの『地球に落ちて来た男』の物語こそ、ニコラス・ローグの映画づくりそのものだったのだ。

当初、ボウイはこの映画のための曲も用意していたが、あくまでも俳優として、被写体としてのデヴィッド・ボウイを必要としていた監督のニコラス・ローグからの要請もあって、演技に全力を注ぐことになった。俳優に専念することになったボウイの代わりに音楽を担当したのは、ママス・アンド・パパスのリーダー的存在であったジョン・フィリップス。本作のサウンドトラックには、当時のストーンズのギタリスト、ミック・テイラー、日本人のパーカショニスト、ツトムヤマシタなどが参加。劇中の挿入曲として、ルイ・アームストロング「ブルーベリー・ヒル」、ロイ・オービソン「ブルー・バイユー」、アーティ・ショウ「スターダスト」など、懐かしの名曲が印象的に使われている。

また、本作は京都みなみ会館の出資により、公開が実現された。地方の映画館が、映画を上映するだけではなく自ら発信する、新しいプロジェクトの1本でもある。

7/16(土)よりユーロスペース、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー!

【先行爆音上映】

「爆音映画祭 in 京都 2016」 :5/19(木)、20(金)


「爆音映画祭 in 神戸 2016」 :7/16(土)〜22(金) <予定>

*以降、「爆音映画祭 in 仙台」、「YCAM爆音映画祭2016」でも爆音上映

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執筆者

Yasuhiro Togawa