この度、映画『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』のブルーレイ・DVDを9月18日に発売することとなりました。松田龍平×松尾スズキ×まさかの濃いぃ出演陣 が贈るエンタテインメント快作です。

ブルーレイ・DVDの発売を前に、松尾スズキ監督にオフィシャルインタビューを行いました。7年ぶりにメガホンをとった作品への思い、撮影秘話などを聞きました。

松尾スズキ監督コメント

■久しぶりの監督作品ですが、監督しようと思われたポイントは。

松尾スズキ(以下、松尾):やっぱり原作がいがらしさんというのは大きいですね。いがらしみきおさんの作品と自分が関われるなんて、まさか漫画の持ち込みやっていた頃には思いもしないことだったので。そうか、映画の監督としてなら、いがらしさんと関わることができるんだ!という新鮮な驚きというか。それをいがらしさんが快く引き受けてくれて、松尾さんに託しますとおっしゃっているというのを聞いたのが、一番大きく背中を押した点だと思います。

■松田龍平さんがお金恐怖症のタケを演じる姿にギャップがあり、とても面白かったです。松田さんに求められたことは?

松尾:松田くんは、ふざけろといってもふざけられる人じゃないから。真面目にやった結果としておもしろくなったってことを採用してるので。そこはやっぱりコメディ映画とはいえ、皆川(猿時)くんとかの演技とは明らかに違うからね(笑)。 別に笑わせようとすることは要求してないんですよ。 結果的にやることがおもしろいっていう風には演出していますけど。

■『恋の門』以来、10年ぶりに監督と役者として組まれましたが、改めて感じた松田さんの魅力と、変化したと感じた部分は?

松尾:すごく変わったってことはないですね。ただ、コメディの間ということに関していうと、ほかの作品もいろいろやってきてるからね。『まほろ駅前多田便利軒』も言ってみればコメディ的な要素もあるんで。そういうのを経て、あ、間のことをちゃんと考えてくれているなってことは伝わってきましたね。つまりテクニカルな進歩。根本は全然変わってないと思いますよ。

■変わってないからこそ、タケを松田さんにやってもらいたいと?

松尾:いま、このタケっていう役を求めたとき、松田龍平がいいんじゃないかと思っただけです。これまで俳優として一緒に仕事をする機会が多くて、俳優としての彼を近くで見てきたのもありますけど。『あまちゃん』のミズタクなんて結構おもしろかったしね。

■今回、大人計画の方々をかなりキャスティングされています。それによって生まれた効果は?

松尾:チームワークですね。それによって生まれる笑いや、間とか芝居の味。それはすごく感じましたね。
黒澤明監督の映画とかを観ていても、同じ役者が別の作品にも出ていて、それがまたおもしろかったりもするじゃないですか。それに近いっていったらおこがましい話なんですけど、そんな気持ちでやってました。タイプキャストではなくて、今回はこの人がこういう役をやるのがおもしろい、次回はあの人がこういう役をやるのがおもしろい、なんてやっていけたらいいなと思ってます。

■大人計画の方々と、松たか子さん、二階堂ふみさん、西田敏行さんとの相乗効果もおもしろかったです。
まず今回、松さんを撮られた印象は?

松尾:松さんは今回、色っぽかったですよね。本当に好きになっちゃうくらい(笑)。すごく色っぽくてよかったです。
それから、松さんとは直前まで舞台で一緒に仕事をしていたので、そういう意味では松さんのことが、前段階として予習できていたのもよかったと思います。

■二階堂さんは、ご自身で今回のような役はこれまでになくて楽しかったと言っていますね。

松尾:やりやすい女優さんでしたよ。楽しく終えられたし、その後、舞台も一緒にやったりしてますが、いい女優さんです。

■ベテランの西田さんは?

松尾:西田さんもこんな真正面のコメディって久しぶりなんじゃないかと。ふざけることが好きなんだなっていうのが伝わってきて、自分より10以上の年上の人が、あれだけふざけることに前向きにやっているというのは、見習わなきゃいけない先輩だとすごく感じましたね。

■DVDがリリースになりますが、DVDだからこそ、何回も観るからこういう点が楽しいんじゃないかと思うところは?

松尾:俳優の表情とか、動きとか、普段ありえないことを結構やらせています。「いまおもしろいことやってなかったか?」みたいなことを僕自身、見返すことが多いくらいだったので、そういう意味ではDVDで何度も観る価値はあると思いますね。この間、たまたま海外に行ったときに飛行機でもうこの作品をやっていて、久々に観てたんですけど、やっぱりおもしろいなと思いましたよ(笑)。

■時間が経って客観的にご覧になって、どういった部分を改めておもしろいとお感じに?

 松尾:やっぱりチームプレーで笑わせているところが好きですね。僕と松田くんと阿部と3人で三谷(幸喜)さんのポスターであれこれ言っているところとか、松田くんがお金を降ろして役所にやってくるんだけど、一時的に耳が聞こえなくなっていて『は?』って言っているところのやりとりとかね。大人計画と松田龍平と片桐(はいり)さんって、自分とはみんな10年以上やってきた連中なんで、あうんの呼吸で分かるというか、そういうところが撮っていてすごく楽しかったし、観ていて改めておもしろいと思いますね。

■ブルーレイ・:DVDの特典映像のメイキングには福島の方々との交流会なども入っていますが、地元の人たちにはどんな印象をもたれましたか?

 松尾:役場の人たちが、すごくアグレッシブで気概を感じましたね。この映画にかけているものがあるんだなという気持ちを感じて、応えなきゃいかんなと身が引き締まりました。

■監督が演出している姿がとても楽しそうに見えました。それこそ監督もアグレッシブでした。

 松尾:短時間に撮らなきゃいけないというプレッシャーもあって、自分をハイな状況に追い込まないと頭の回転が鈍るなっていうのもあったんだと思いますね。舞台の場合は、もうちょっと悠長に俳優の演技が出てくるのを待ってたりもするんですけど、映画では待っていられないから自分からどんどんアイデアを出していかないといけないので、そう見えたのかな。

■人口の少ない田舎町で撮られたことでプラスに働いた部分は?

 松尾:風景をただで撮り放題っていうのはすごく魅力的でしたね。東京だと、いちいち人が通っているのを止めたりとか、許可を取ったりとか、許可が出なかったりとか、お金を払わなくちゃいけないとか、いろいろな制約があるんですけど、どこで撮っても何も言われないし。向こうから来ている人を撮っても何も言われないし(笑)。
出ている老人はほぼ地元の老人ですからね。

■原作のいがらしみきおさんも現場にいらして、メイキングにコメントも収められています。実際にお話しされた感想は?

松尾:いがらしさんは、映画の現場に初めて来て、純粋にすごく楽しんでました。それを見てすごく安心しましたね。作品からちょっと気難しい人なんじゃないかと思ってビクビクしていたところもあったので(笑)。実はメイキングに収められているその日に初めてお会いしたんですよ。僕の青春時代のスターのひとりなので、会えましたな〜!
ってしみじみ感じたというか(笑)。僕は漫画少年だったんで、すごく嬉しかったですね。

■最後に監督が自信を持って観て欲しいと言える部分を教えてください。

松尾:いろいろあるんですけど、出ている役者がみんなおもしろいし、そのおもしろい役者たちの個性がケンカせずに、ちゃんと調和した形でひとつの世界を作り上げているところは楽しんでほしいですね。原作の力もあるし、僕を信頼して、みんながひとつの映画の中で無駄なことをしないようにとすごく考えて動いてくれた結果だと思います。

ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜」 
9月18日 ブルーレイ&DVD発売  
価格:ブルーレイ¥5,200 DVD¥4,200 (税抜)
発売元・販売元:ハピネット  
 (C)2015 いがらしみきお・小学館/『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』

【監督・脚本・出演】:松尾スズキ
【原作】いがらしみきお「かむろば村へ」(小学館ビッグコミックス スペシャル刊)
【キャスト】松田龍平
阿部サダヲ 松たか子 / 二階堂ふみ / 西田敏行
片桐はいり 中村優子 / 村杉蝉之介 伊勢志摩 オクイシュージ モロ師岡 /
田中仁人 宍戸美和公 近藤公園 / 荒川良々 皆川猿時

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa