この度、第71回ヴェネチア国際映画祭にてアカデミー賞®受賞作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を抑え金獅子賞(グランプリ)を受賞した『さよなら、人類』が8月8日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMAにて大ヒットスタート致しました!
公開初日から、満席の回も出る好調なスタートをきり、YEBISU GARDEN CINEMAオープン以来、初日・2日目の動員・興収記録1位となり、また最高の日計動員記録も更新しました!
監督は、スウェーデンが誇る映画界の巨匠ロイ・アンダーソン。ロイ・アンダーソンの作品は、1シーン1シーンがまるで絵画のような、徹底的に作り込まれた映像美が魅力のひとつ。日本でも公開を前に、CG全盛期の現代にも関わらず、巨大なスタジオにセットを組みマットペイントを多様して、細部にまでこだわった配色や美術にきっと目を奪われるはず!

板尾創路さん(芸人)、倉本美津留さん(放送作家)、岡田利規さん(演劇作家)、福里真一さん(CMプランナー)、安齋肇さん(イラストレーター)、種田陽平さん(美術監督)、椹木野衣さん(美術批評家)などなど…業界の垣根を越え、クリエイターの一面を持つ各界の著名人たちからも熱狂的に支持されている中、北欧の巨匠が生みだした壮大なアナログ巨編の魅力を、日本のマットペイント(写映像と背景画を合成する技術のこと)界をけん引する、マットペインターの木村俊幸さんに解説頂きました。

意外に知られていない、マットペイントの世界!

【木村俊幸さん プロフィール】
1969年岩手県生まれ。LOOPHOLE 代表/VFXアーティスト。映画の背景画であるマットペイントを中心に、TV・CM・MVなど様々な映像の特殊効果に参加。また、映画のコンセプチャルデザイン、VFXスーパーヴァイズやディレクションなども手掛ける。
主な参加作品に『リング』『CASSHERN』『映画 怪物くん』など。最新作はAcid Black Cherry「INCUBUS」、ももいろクローバーZ「『Z』の誓い」、DANCE EARTH「BEAUTIFUL NAME PARTY」のMV、「人にやさしく」(下山天監督/VFX監督・ミニチュア造型)。
府中グリーンプラザとLOOPHOLEにて「LOOPHOLE10周年記念展」を開催(9月20〜23日)。
また、9月に『木村俊幸作品集 MATIM 〜SAY YES〜』刊行予定!

木村さん曰く、マットペイントのマットとは、”隠す”という意味。 20世紀初頭のアナログ映画時代からある背景画の技術のこと。
「映画の撮影現場で、背景のすべてをセットで組むのが難しい場合などに、部分的にセットを組んで、”ない部分”を隠す=補足するのがマットペイント。昔は、カメラの前にガラスを置いて、ガラスに直接”ない部分”の絵を描いて合成する”グラスショット”という手法がよく使われていました」と語る。
しかし1990年代以降は、映像業界へのパソコンの導入が著しく、マットペイントもPhotoshopなどで写真を加工し描かれることが多くなり、手描きのアナログな手法は著しく少なくなってきているそうです。

各シーンの背景はほぼ全て手描き!
手描きと気付かないほど繊細なマットペイントの“匠の技”

本編の1シーンである、店内のシーン。実は窓の外の風景は全てマットペイントなのです!
さらに「CGは嫌だ!」というロイ監督の強いこだわりにより、背景は全て手描き。それはそれは気の遠くなる作業なのです…。
「マットペイントをやっていながら、映画を観ていてもマットペイントとは全く気が付きませんでした!」と木村さんにも見分けがつかないほど。

さらに「CGに頼るご時世に、ここまで徹底したアナログ感はすごい。さらに、CG=ハリウッド的な壮大な風景に使用されるところを、敢えて日常的な風景の背景にマットペイントを使用する所に、ロイ監督の徹底したこだわりが見えました。「『さよなら、人類』を観た時に、昔のアナログの手法が、再び産声を上げた気がしました。自分の芸術活動においても、この映画との出会いは大きな
ものでした。」と強く語りました。
最先端な技術ばかりでなく、今こそ、アナログ世界の素晴らしさを見直すきっかけなのかもしれません!
ぜひ、劇場でその匠の技を目の当たりにしてはいかがでしょうか。

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執筆者

Yasuhiro Togawa