作家、歌手、パーソナリティーとして幅広く活躍するドリアン助川の同名小説「あん」を、世界が認める河瀬直美が映画化。5 月 30 日(土)より全国公開いたします。
縁あってどら焼き屋「どら春」の雇われ店長として単調な日々をこなしていた千太郎(永瀬正敏)と「どら春」の求人募集の張り紙をみて、そこで働くことを懇願する一人の老女、徳江(樹木希林)の物語です。
主演は、2008 年に紫綬褒章を受賞し、2013 年には『わが母の記』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、昨年秋に旭日小綬章も受章した、日本を代表する大女優・樹木希林。また、河瀬直美監督自ら熱烈オファーし、初の河瀬作品出演となる永瀬正敏や、樹木希林の孫娘・内田伽羅、市原悦子など、豪華キャストが贈る日本一味わい深い作品が誕生しました。

この度、第 68 回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門オープニングフィルムに『あん』が正式出品することが決定しました。河瀬監督は、初の劇場映画『萌の朱雀』(1997/監督週間出品)で同映画祭新人監督賞を史上最年少で受賞し、2003 年に『沙羅双樹』でコンペ部門に選出、『殯の森』(2007/コンペ出品)ではグランプリを受賞。2009 年には『火垂』で監督週間に選出された他、カンヌ国際映画祭に貢献した監督に贈られる「黄金の馬車賞」を受賞しています。また 2011 年に『朱花の月』でコンペ部門に選出され、2013 年には日本人監督として初めて審査委員(コンペ部門)を務めました。そして昨年に、『2つ目の窓』がコンペ部門に出品されており、今回でカンヌ映画祭出品は 7 作品目となり、日本人としては、史上最多となります。また出演者らから喜びのコメントが届いている他、カンヌ国際映画祭名誉会長ジル・ジャコブや同映画祭総代表ティエリー・フレモーからも絶賛のコメントが届きました。“カンヌの申し子”河瀬直美の『あん』が世界で注目されることは、間違いありません。

コメント
■河瀬直美監督
継続的に良質な作品を創り続けること。それはどんどん山が高くなることです。
しかし、それでも、映画を創り続けることをまっとうし、その先に、今回の2年連続カンヌの公式招待を、しかも、オープニングという特別枠でいただけたことに、誇りを感じます。
「あん」はこの時代に生まれるべくして生まれ、人に伝わり、歴史に名を遺すのだと、原作を読んだ時に感じました。そんな想いを映画にのせて、世界の人々に見ていただけることに、今、喜びを隠せません。
素晴らしいスタッフとともに、こういった作品の監督であれた幸せを噛み締めています。
ありがとうございました。

■樹木希林
こうして『あん』がカンヌ国際映画祭のオープニングを飾り、映画本来の「鑑賞」をして頂ける特別枠に選ばれたことが喜ばしいです。また日本人でこういう監督が出てくることがたくましくて頼もしい。『あん』は一人歩きしていく。多くの人に観てもらいたい作品です。

■永瀬正敏
驚きました、心から光栄に思います。河瀬監督や樹木さん、すでに天国にいらっしゃる元ハンセン病患者さん方や沢山の皆さんの想いが海を渡る、、、本当に嬉しいです。

■ドリアン助川(原作者)
河瀬直美監督により映像作品として創造された「あん」は、それぞれの生の意味を問い直す人類共通のテーマを内包している。世界中が注目するカンヌ国際映画祭で本作が上映されることは、この秘められたテーマと独自の視点があるからこそ、たいへんな僥倖であり、またふさわしいスタートなのだと思う。私はこの物語を書く際、起点となる話をして下さった元ハンセン病患者の御夫婦とともに、映画「あん」の船出を客席から見守りたい。

■秦基博(主題歌)
「あん」、カンヌ正式出品決定、おめでとうございます。
生きることの意味を問いかけるこの美しい映画が、国境も越え、たくさんの人の元へ届くことが今から楽しみでなりません。主題歌というかたちで、少しでも携わらせて頂いたものとしても本当に幸せです。

■ジル・ジャコブ(カンヌ国際映画祭 名誉会長)
大変素晴らしい作品でした。河瀬作品は全て好きですが、本作は、非常に心に触れる謙虚さがあり、また物語の語りとしてはパーフェクトの高みへと洗練されていました。日常の営みの細部に触れ、3世代を扱い描いていることに好感を持ちました。指に障害を抱えた年配の女性・徳江(樹木希林)をスクリーン上にこのように存在させられたことを誇りに思うべきです。彼女のラストのシーンは特に感動的でした。千太郎(永瀬正敏)、ワカナ(内田伽羅)の2人も非常に良かったです。この歳になってまで、甘露煮のお豆の作り方に興味が湧くなど思いもしませんでした。それは、多くの人が知らないある田舎町の特有の風習や習慣が、映画を通して魅了する。そういうもののひとつでした。この作品に集った才能、河瀬監督のそれは特に素晴らしく、世界に伝わるユニバーサルな作品であり、ほぼ完璧な作品を創られていると思います。

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa