来る6月に公開となる映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』は、19世紀末のフランスに生まれた三重苦の少女と、彼女を献身的に支え教育を与えたシスターマルグリットの実話です。フランスのロワール地方の片田舎の貧しい家庭に生まれつき目も見えず、耳も聞こえないという三重苦で生まれたマリー。

獰猛な野生児のように育ったマリーに根気よく言葉を教え続けるマルグリット。二人の戦いとも言える日々が映画の重要な見所のひとつとなっています。主演のマリー役を演じたのは、自らも生まれつき聴覚にハンディキャップのある20歳の新人女優アリア—ナ・リヴォアール。彼女の体当たりとも言える演技が大喝采を浴びています!この度は、本作の公開を機会に、ハンディキャップをもつ方々が映画を楽しめるように、様々な試みを行っていくこととなりました。そのひとつが、バリアフリー上映版の制作です。現在その輪が広がりつつあるバリアフリー上映の主体は日本映画です。

日本映画に字幕を付けることによって、聴覚に障がいのある方々が字幕を読んで映画を楽しむことができます。視覚に障がいのある方には、音声ガイダンスで台詞にはない状況説明を補足することで、よりよく映画を楽しんでいただくことができます。しかしながら、予め字幕の付いている洋画の場合は、日本映画に比べてバリアフリー版の普及が遅れているのが現状です。そのため、本作の公開においては、視覚に障害がいをもつ方も楽しめるよう吹き替え版の制作を行うこととなり、この度声優さんらによるアフレコが行われました。

 映画の中には主人公のマリーをはじめとして、手話でコミュニケーションをとる生徒やシスターらが登場します。バリアフリー版では、彼女たちの手話を台詞に置き換えるため、声優さんたちも普段とは違うシチュエーションでのアフレコとなりました。

今回は「アグリーベティ4」のフランケル先生や「ER緊急救命室Ⅺ」のキャロル役でおなじみのベテラン声優塩田朋子さんらベテラン声優さんも参加しましたが、声優さんらは、手話の部分に台詞が載ることを想像していなかったため、スタジオではこの画期的な手法に驚きの声が上がりました。

役者の口の動きに合わせて台詞を話すというのが通常のアフレコですが、今回のアフレコでは手話に合わせて台詞を話すという、かなり難易度の高いアフレコとなりました。
録音の際には声優さんたちは手話に合わせて台詞を話すにあたり、フランス語で表現されている手話の言葉の順番を推測しながら話すという、いつもとは違う形での録音に取り組みました。アフレコの編集終了後には音声ガイダンスも加えていき、視覚障がい者の方にも本作を楽しんでいただけるようなさらなる取り組みを行っていきます。バリアフリーの輪を広げるために様々な人々が参加している本作の活動にご注目を!

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執筆者

Yasuhiro Togawa