2001年春に始まった「イタリア映画祭」は、今年で15回目
「日本におけるイタリア年」をきっかけに、2001 年春に始まった「イタリア映画祭」は、今年で 15 回目を迎えます。
多くの映画ファンやイタリアファンの皆様に支持され、毎年 1 万人を超える観客が訪れるゴールデンウィーク恒例の大きな映画祭に成長しました。これまで本映画祭をきっかけに多くの作品の配給が決まりましたが、昨年上映された『フェデリコという不思議な存在』は 6 月 27 日から、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。また『自由、万歳(仮題)』 (『自由に乾杯』のタイトルで上映) は今秋、EBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開が決定しました。
今回は 2013 年以降に製作された新作 14 本に加えて、旧作 1 本と短編 9 本を上映。来日ゲストによる開会式や舞台挨拶、トークセッションも予定しており、イタリア文化を満喫出来るイベントになります。また、昨年に引き続き大阪でも ABC ホールに於いて開催されることが決定いたしました! ゴールデンウィークは、東京も大阪もイタリア映画が花盛りです。
会期・会場: 4 月 29 日(水・祝)〜5 月 5 日(火・祝)
有楽町朝日ホール(東京都千代田区有楽町 2−5−1 有楽町マリオン 11 階)
主催:イタリア映画祭実行委員会、イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
後援:イタリア大使館 協賛:FCA ジャパン株式会社、フェラガモ・ジャパン株式会社
協力:バリラ ジャパン株式会社、株式会社 帝国ホテル、アリタリア-イタリア航空
公式サイト:http://www.asahi.com/italia/ ※3 月 12 日(木)より最新情報がアップされます。
一般の方のお問合せ:050-5542-8600(ハローダイヤル:〜4月28日)/03-3201-5554(会場、会期中のみ)
※前売り券販売開始は3月21日(土・祝)10:00から
※前売り一般1,450円/学生・60歳以上1,350円、当日一般1,700円/学生・60歳以上1,600円(『ラ・パッショーネ』除く)
<イタリア映画祭 2015 大阪>〜日本劇場未公開作品 7 本を上映〜
会期:5 月 9 日(土)〜10 日(日) 会場:ABCホール(大阪市福島区福島 1‐1‐30)
■上映作品紹介■
A 『幸せの椅子』カルロ・マッツァクラーティ監督/2013 年/94 分/La sedia della felicità (Carlo Mazzacurati)
昨年 1 月に 57 歳の若さで亡くなったマッツァクラーティ監督の遺作。イザベッラ・ラゴネーゼ、ヴァレリオ・マスタンドレア、ジュゼッペ・バッティストンら演技派俳優のコミカルなやりとりがほほ笑ましい冒険譚。借金を抱える美容師のブルーナは、顧客の一人から急死する直前に宝が詰まった椅子の在りかを告げられる。これ幸いと、同じくお金に困っている刺青師のディーノと一緒に椅子を探し求めるが、謎の司祭が二人の後を追う。はたして二人は無事に「幸せの椅子」を見つけられるだろうか?
B 『人間の値打ち』パオロ・ヴィルズィ監督/2013 年/109 分/ Il capitale umano (Paolo Virzì)
『見わたすかぎり人生』『はじめての大切なもの』が巧みな語り口で観客を魅了したヴィルズィ監督の新作は、お金をめぐって交錯する人々の思いをミステリータッチで追っていく。不動産業が厳しいディーノと投資で一財産を築くジョヴァンニ。接点はお互いの子供だけだった二つの家族が投資話で関係を深めていく頃、ジョヴァンニの家の近くでひき逃げ事件が起きる。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では最優秀作品賞をはじめ、7部門を制し、米アカデミー賞外国語映画賞のイタリア代表にも選ばれた。
C 『いつだってやめられる』シドニー・シビリア監督/2014年/100分/Smetto quando voglio (Sydney Sibilia)
1981 年生まれの新星、シビリア監督の長編デビュー作。素人ギャングの顚末を独特のビジュアル感覚と小気味良いリズムで描いて、スマッシュヒットした。37 歳のピエトロは天才的な生物学の研究者だが、予算削減で大学の職を失う。研究に人生を捧げてきたピエトロが出した結論は、合法ドラッグを作って稼ぐこと。そのために、元同僚で不遇をかこつ経済学、化学、人類学、ラテン語の専門家を呼び集めて、犯罪集団を組織する。イタリアのゴールデン・グローブ賞で最優秀コメディー賞を受賞。
D 『神の恩寵 』エドアルド・ウィンスピア監督/2014 年/127 分/ In grazia di Dio (Edoardo Winspeare)
『血の記憶』で鮮烈な印象を残したウィンスピア監督が希望を込めて紡いだのは、南イタリアの雄大な自然を舞台に人生を見つめ直す 3 世代4人の女性たちの物語。小さな工場を営むアデレだが、景気後退で手放すことを余儀なくされ、母、娘、妹と田舎の農家に移り住む。慣れない農作業や力仕事、度重なる衝突、望まぬ田舎暮らしの先に待ち受けているのは・・・。ベルリン国際映画祭パノラマ部門出品。イタリアのゴールデン・グローブ賞でグランプリ受賞。
E 『われらの子供たち』イヴァーノ・デ・マッテオ監督/2014年/92分/I nostri ragazzi (Ivano De Matteo)
前作『幸せのバランス』(映画祭では『綱渡り』)に続き、デ・マッテオ監督が選んだテーマは家族。売れっ子弁護士と献身的な小児科医の兄弟は、気質も生き方も対照的で、妻同士も争いが絶えない。しきたりに従って月に1回は高級レストランに集まる4人だが、ディナーの席でも会話はかみ合わない。そんな二つの家族に重大な問題が起こり、難しい選択を迫られることになる。
アレッサンドロ・ガスマン、ジョヴァンナ・メッゾジョルノ、ルイジ・ロ・カーショ、バルボラ・ボブローヴァの豪華キャストが円熟の演技を見せる。
F 『黒い魂』フランチェスコ・ムンズィ監督/2014 年/103 分/Anime nere (Francesco Munzi)
犯罪組織「ンドランゲタ」が拠点とする南イタリアのカラブリア州で生まれた3兄弟の過酷な運命を、圧倒的な迫力で描いたドラマ。三男のルイジはドラッグのディーラーで、次男のロッコは見たところ普通のビジネスマンだが、そのドラッグによる利益で事業を展開していた。長男のルチャーノはヤギを育てて平穏に暮らしていたが、息子のレオが敵対するファミリーを威嚇。軽率な行為は若気の至りでは済まされず、血を血で洗う抗争が始まる。ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品。
G 『レオパルディ』マリオ・マルトーネ監督/2014 年/137 分/Il giovane favoloso (Mario Martone)
マルトーネ監督の新作は、前作『われわれは信じていた』と同じ 19 世紀を舞台に大詩人、ジャコモ・レオパルディの激しい人生をたどる。幼い頃から神童ぶりを発揮するジャコモだが、身体に障害があり厭世的で、詩人として不遇な人生を送ったとされる。
だが映画は、自由と愛を希求し、いつまでも親友に支えられて幸せな時間を過ごした姿も色濃く映す。詩人役のエリオ・ジェルマーノが圧巻の演技を披露。本作はイタリアで大ヒットした。撮影はレナート・ベルタ。ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品。
H 『僕たちの大地』ジュリオ・マンフレドニア監督/2014年/100分/La nostra terra (Giulio Manfredonia)
『人生、ここにあり!』が大きな感動を呼び起こしたマンフレドニア監督の新作は、協同組合に実際に起きた出来事を基にしたコメディー。南イタリア、プーリアの小さな村では、マフィアから接収した土地で協同組合が有機農業を始めようとしていた。助けを請われて、反マフィア活動に取り組むフィリッポが協同組合に加わる。フィリッポと個性的な仲間たちの前に様々な問題が立ちはだかるが、乗り越えて目標に向かっていこうとする。マフィアの脅しに屈せず、自分たちの土地を守ろうとする人々の勇気が胸を打つ。
I 『緑はよみがえる』エルマンノ・オルミ監督/2014 年/80 分/Torneranno i prati (Ermanno Olmi)
2014年が第一次世界大戦開戦から100年にあたるのを機に、戦争を非難し平和を願って作られた「木靴の樹」「ポー川のひかり」の巨匠オルミ監督の新作。1917年の冬、激戦地の一つだった北イタリアのアジアーゴ高原における一夜の戦いが描かれる。
前線のイタリア軍は大雪で覆われた塹壕の中にこもり、オーストリア軍と対峙していた。寒さや飢え、病気に苦しむ中、司令部からは不条理な命令が下され、オーストリア軍からは容赦ない攻撃を受ける。ベルリン国際映画祭特別招待作品。
J 『生きていてすみません!』リッカルド・ミラーニ監督/2014年/106分/Scusate se esisto! (Riccardo Milani)
前作『ようこそ、大統領!』が爆笑を誘ったミラーニ監督は、コメディー映画で活躍がめざましいパオラ・コルテッレージとイケメンのラウル・ボヴァを新作に起用。実在の女性を題材にした喜劇で、またもやヒットを飛ばした。セレーナは飛び抜けた才能を持つ建築家。国外で活躍するが、故郷のイタリアが恋しくなり、帰国する。だが、待ち受けていたのは女性にとって厳しい就労状況。別の仕事を掛け持ちして、なんとか生計を立てる。やがて、建築家の仕事を得られるチャンスが訪れるが・・・。
K. 『スイミング・プールの少女』ランベルト・サンフェリーチェ監督/2015 年/94 分/Cloro (Lamberto Sanfelice)
夢をあきらめずに厳しい現実を懸命に生きる少女を、研ぎ澄まされた映像と抑制された演出で描くサンフェリーチェ監督のデビュー作。17歳のジェニーは、シンクロナイズド・スイミングのプロを目指していた。だが、母の突然死で人生が一変。ローマ近郊にある海辺の町から山中の小村に移住し、働きながら神経衰弱になった父と8歳の弟の面倒を見ざるを得なくなる。リズミカルで美しいシンクロのシーンや少女の存在感が際立つ本作は、サンダンス映画祭やベルリン国際映画祭で上映された。
特別上映作品
W 『ラ・パッショーネ』カルロ・マッツァクラーティ監督/2010年/106分/La Passione (Carlo Mazzacurati)
監督作が日本で劇場公開されることはなかったが、現代のイタリア映画に欠かせない存在だったマッツァクラーティ監督を追悼して、心温まる喜劇を再上映する。スランプに陥って 5 年間も新作が出せない映画監督ジャンニ(シルヴィオ・オルランド)に、テレビ女優が主演の映画の話が舞い込むが、トラブルから「キリストの受難ラ ・ パ ッ シ ョ ー ネ」の舞台も演出する羽目に。次から次へとトラブルに見舞われ、あわてふためくジャンニはどちらも完遂できるだろうか?2010 年ヴェネチア国際映画祭コンペ部門出品。
X 『カプチーノはお熱いうちに』フェルザン・オズペテク監督/2013 年/110 分/Allacciate le cinture (Ferzan Ozpetek)
ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で監督賞、主演女優賞他、11 部門にノミネートされたフェルザン・オズペテク(『あしたのパスタはアルデンテ』)最新作。アドリア海を臨む南イタリア・プーリアの小さな街のカフェを舞台に、恋に落ちたウェイトレス・エレナとアントニオのカップル、その友人、家族たちの、13 年間を描くドラマ。友達の恋人を奪う形で始まった激しい恋は、やがて平凡な結婚生活を送るうちに輝きを失ってしまう。そんな時、エレナが病いに倒れて…。今秋、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
Y 『ザ・ワンダーズ(仮題)』アリーチェ・ロルヴァケル監督/2014 年/111 分/Le meraviglie (Alice Rohrwacher)
イタリア中部の人里離れた土地で昔ながらの製法で養蜂園を営む一家。ジェルソミーナは4人姉妹の長女で、気難しい父の独自の教育を受けてきた。深奥なるその地で、家族は蜂と自然のリズムの中で生活を営んでいたが、ある夏の終わり、少年を預かったことにより、そのリズムに変化が生じる。夢と現実のあわいを行きつ戻りつしつつ、成長を遂げる少女と、葛藤する父の姿を描いた家族の物語。2014 年カンヌ映画祭審査員グランプリ受賞作品。今夏、岩波ホールほか全国順次公開。
Z 『ラスト・サマー 』レオナルド・グエッラ・セラーニョリ監督/2014 年/94 分/Last Summer (Leonardo Guerra Seràgnoli)
親権を失った母とその息子が過ごす最後の 4 日間を静かなタッチで描いたドラマ。南イタリアの洋上に浮かぶヨットに、日本人のナオミが乗り込んでくる。英国人の元夫に親権を奪われて長年会うことが出来なかった 6 歳の息子、ケンとの最後の別れが許されたからだ。乗組員たちの目が厳しい中で、ナオミはケンとつながろうとするが、思い通りには進まない。菊地凛子が主演し、吉本ばななが脚本に協力している本作は、ローマ国際映画祭で上映された。(※言語は大半が英語で、一部が日本語)
9X10 90 9X10 Novanta/2014
イタリア映画を国内外でプロモーションする組織イスティトゥート・ルーチェが昨年、創立 90 周年を迎えたのを記念して、気鋭の作家たちに短編の制作を委嘱した作品。監督たちは、ルーチェの膨大な映像アーカイブから約10分のフッテージを選び、それを基に短編を作り上げた。
a.『トゥビオロと月』マルコ・ボンファンティ監督/Tubiolo e la luna (Marco Bonfanti)
b.『花嫁としての私の務め』クラウディオ・ジョヴァンネージ監督/Il mio dovere di sposa (Claudio Giovannesi)
c.『国境』アリーナ・マラッツィ監督/Confini (Alina Marazzi)
d.『田舎のイタリア』ピエトロ・マルチェッロ&サラ・フガイエール監督/L’umile Italia (Pietro Marcello e Sara Fgaier)
e.『イタリアの奇跡』ジョヴァンニ・ピペルノ監督/Miracolo italiano (Giovanni Piperno)
f.『ジロトンド』コスタンツァ・クアトリリョ監督/Girotondo (Costanza Quatriglio)
g.『パニック計画』パオラ・ランディ監督/Progetto Panico (Paola Randi)
h.『カンツォーネ』アリーチェ・ロルヴァケル監督/Una canzone (Alice Rohrwacher)
i.『戦争の幕開け』ロランド・セイコ監督/L’entrata in guerra (Roland Sejko)
執筆者
Yasuhiro Togawa