1945年、第二次世界大戦下ヨーロッパ戦線を舞台に、たった一台の戦車でドイツ大軍を相手に戦い抜いた、5人の兵士たちの絆を描く今冬最大の戦争アクション超大作『フューリー』は、11月28日(金)より全国332館で公開され、洋画No.1の興行収入となる264,139,000円(11月28日〜30日・3日間累計)を記録、公開週ランキングで見事2位にランクイン、大ヒットを続けている。

12月2日・現地時間に発表された、アカデミー賞の前哨戦となるナショナル・ボード・オブ・レビュー賞では、2014年のトップ10作品に選出されると共に、固い絆で結ばれた兵士たちを演じたブラッド・ピット、ローガン・ラーマンら5人のキャストに、「アンサンブル演技賞」が贈られたことも話題となっております。
ますますオスカー®への期待が高まる本作ですが、2001年にデヴィッド・エアー監督の脚本によってオスカー®を獲得した『トレーニング・デイ』と、脚本&監督最新作となる『フューリー』との共通点に注目してみた。

監督のデヴィッド・エアーは、2001年に公開された『トレーニング・デイ』の脚本を担当。カリスマでありながら悪徳刑事を演じたデンゼル・ワシントンに二度目のオスカー®をもたらした。
ロス市警《麻薬捜査課》、デンゼル演じるベテラン刑事アロンゾの下に、イーサン・ホークが演じる新人刑事ジェイクが配属される。数々の犯罪摘発でカリスマ的存在である先輩をリスペクトして捜査に当たる新人刑事のジェイク。「羊のままでいるか、狼になるか」と新人にアドヴァイスを送るアロンゾは、あろうことか犯罪的発のためには法を犯すことすら躊躇しない。ジェイクの中で”理想とする正義”は破壊され、先輩刑事の犯罪捜査も次第にエスカレートしていく…。『トレーニング・デイ』はそのタイトルの通り、新人刑事の24時間の「訓練初日」の24時間を描いた異色作だった。
最新作『フューリー』は、1945年4月、第二次世界大戦下のヨーロッパ戦線を描いた作品。
“フューリー”(=激しい怒り)と名付けられた戦車を駆るウォーダディー(ブラッド・ピット)のチームに、戦闘経験の一切ない新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が配置される。戦車に触れたことすらないノーマンは、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりにして戸惑うばかり。だが、撃たなければ仲間がやられる戦場のルールは揺るぐことはない。敵兵を目の前に撃つことが出来ずにいるノーマンに無理矢理銃を握らせ殺すように命じるなど、厳しいウォーダディーの指導によって次第に成長していくノーマンと、過酷な戦場の中で絆を築いていくチームの一日が描かれている。
今回、ブラッド・ピット演じるウォーダディーとローガン・ラーマン演じる新兵の関係性と、倫理観、価値観を根本から覆すことで成長を促すという構図は、デヴィッド・エアーの真骨頂と言えるだろう。また、24時間に成長の過程を描いたことも同様だ。更に、『トレーニング・デイ』は、L.A.の実際のギャングたちの協力を得て、徹底的なリアリティを追求して撮影されたことでも話題になった。
最新作『フューリー』では、映画史上初となる実走可能なティーガー戦車を撮影、何百時間にも及ぶ米軍記録映像、膨大な資料を徹底的にリサーチして、1945年のヨーロッパ戦線、シャーマン戦車とティーガー戦車のバトルを再現していることにも要注目だ。
来日記者会見でブラッド・ピットは、「新米のノーマンは人間の慈愛や正義感を持っているが、それは戦場では通用しない。殺すか殺されるかの世界では冷血な人間にならなければならない」と、新兵がおかれた状況を説明。ローガン・ラーマンは、「脚本を読んでいるときから、これは難しい役だと感じた。理想を掲げて戦地にやってきた男が、24時間で大変身を遂げなければならない。人を殺したくないと思っているのに1日で殺人者になるしかない。しかも、ストーリー全体を見ながら、要所要所でその変化を演じ分けて観客に伝えなければならない。新米兵士の役であり、現場でも新米扱いされてしまい、それも大変だった」と、演じることの難しさを振り返っていた。
アカデミー賞授賞式は2015年2月22日(現地時間)に予定されている。『トレーニング・デイ』でデンゼル・ワシントンにオスカーをもたらしたデヴィッド・エアー監督は、ブラッド・ピット、そしてローガン・ラーマンにオスカー®をもたらすことになるのだろうか?

戦争アクションの枠を越えて、ヒューマンドラマとしての感動を呼び起こす『フューリー』は、全国で大ヒット上映中。

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執筆者

Yasuhiro Togawa