1970 年代のダイアン・ポーリーは太陽みたいに明るくて、無邪気だった。誰もが彼女に夢中になった。たまにトラブルもおこしたけど、女優の仕事をしながらも、良き母でありつづけた。そんなダイアンが愛する夫と 5 人の子どもたちを残し、若くして亡くなったとき、末っ子のサラはまだ 11 歳。兄姉たちは言った。「サラだけがパパに似てない」。それは、ポーリー家のおきまりのジョーク。でもサラは、ほんの少し不安になる。
本当のパパはパパじゃないのかもしれない。いつしかサラは、ママの人生を探りだす。自分が生まれる前のママ。家族と離れ、1人モントリオールで舞台に立ったママ。そして、知らない男と恋をしていたママ—。
やがてママを愛したみんなの口からは、それぞれが知るダイアンの物語があふれだす—。

『物語る私たち』は女優サラ・ポーリー、彼女自身の物語。アトム・エゴヤン監督の秘蔵っ子として知られ、数々の秀作で演技派女優としての地位を確立。初長編監督作『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』はアカデミー賞ノミネーションと、ほとばしる才気をみせ続けるサラ・ポーリー。彼女は本作で、監督・女優であるばかりでなく、誰よりも明晰でときに辛辣な「探偵」になった。ともすれば家族に悲劇をもたらし、彼女自身を深く傷つけかねない驚くべき事実をつきとめ、持ち前のウィットとユーモアで軽妙に描きだす。人生を鮮やかに彩る恋と機知、原色のノスタルジー。そして少しばかり奔放過ぎた母へのあふれんばかりの愛情が、言葉の真の意味における傑作を生みだした。

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執筆者

Yasuhiro Togawa