世界的名匠ジャ・ジャンクーが、今年のカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞いたしました「天注定 / A Touch of Sin」の邦題が、『罪の手ざわり』に決定いたしました。
2014年、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショーとなっております。

本作『罪の手ざわり』は、ジャ・ジャンクーがヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)を受賞した『長江哀歌』(06)以来7年ぶりに手がけた長編劇映画。監督デビュー作『一瞬の夢』(98)以来つねに「今」という時代を生きる人びとを真摯に見つめてきたジャ・ジャンクーが、山西省、重慶、湖北省、広東省でここ数年に実際に起こった4つの事件を基に、急激に変貌する社会のなかで、もがき苦しみながらもひたむきに生きる人たちの姿をパワフルかつ美しく描く意欲作です。

今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されるや、画力の強さ、構成のすばらしさ、社会性と娯楽性ゆたかな物語で観客を圧倒。上映に駆けつけたトニー・レオンとカリーナ・ラウは、上映後にスタンディングオベーションで「とってもすばらしかった!」と称賛を贈り、同じく公式上映で本作を鑑賞したチャン・ツィイーが中国版ツイッターに絶賛のコメントを寄せたことも話題に。
審査員長のスピルバーグやアン・リーらも絶賛するなか、ポランスキー、ソダーバーグ、ジャームッシュら並みいる巨匠たちを押さえて、見事脚本賞を受賞しました。

なお、本作は11月23日〜12月1日、有楽町朝日ホールにて開催の
「第14回東京フィルメックス」のオープニング作品として上映されます。

ジャ・ジャンクー監督メッセージ:

現在、中国は急速に変化しており、以前よりもずっと裕福に見えます。しかしながら、多くの人々は、全土に広がる富の不平等、そして大幅な貧富の格差に起因する人格の危機に直面しています。
個々人は、いつ尊厳を失うことになるかしれません。
暴力は日々増大しています。
暴力に訴えることが弱者が失われた尊厳を取り戻すためにとる最も直接的で即効的な方法となっていることはもはや明らかです。

時代が変わっても、個々人が直面する苦境、そしてそのような苦境に対する個々人の反応はほとんど変わりません。
私はこの映画は、人々の間の隠された関係についての映画ともとれると思います。この映画により、自分たちの社会は果たして発展しているのだろうか、という問いを投げかけたいと思います。我々が長いこと発展していると思っているこの“文明化”された社会において、個人は他人と実際にどうつながっているのでしょうか?

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執筆者

Yasuhiro Togawa