『エターナル・サンシャイン』のミシェル・ゴンドリー監督が、フランスで400万部を超える恋愛小説の最高峰「うたかたの日々」を映画化した『ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜』。
  ゴンドリー独特のキッチュでおしゃれな世界観が炸裂した映像が魅力だが、本作のもう一つ魅力は音楽にある。 デューク・エリントンの「A列車へ行こう」「クロエ」曲が使われ、ポップな映像をよりおしゃれに引き立てている。本作のヒロイン“クロエ”という名前は、このデューク・エリントンの曲名から原作者のボリス・ヴィアンが名づけた名前だが、本作のタイトル『ムード・インディゴ』もデューク・エリントンの曲名からとったもの。ゴンドリー監督の原作への敬意とこだわりが感じられる。
  
  そんなゴンドリー監督がとことんこだわった本作のサントラに、11月に来日することでも話題のポール・マッカートニーがベーシストとして参加していることが明らかになった。ポールの参加について、ゴンドリー監督はこう語っている。

  「『ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜』のサントラのために、ポールが彼の偉大なるベースを弾いてくれるというのは、まさに夢が叶うということだった。5年前に彼の「ダンス・トウナイト」のミュージック・ビデオを監督した時に僕らは一緒に仕事をしたんだ。あの時ポールが、僕がドラムを叩く事を聞いて、ドラム・キットを持って来いよ、一緒にプレイしようよと誘ってくれたんだ。撮影終了後に、僕らは45分間のジャムセッションをやって、スタッフがみんな僕らのまわりでダンスしていたんだ。あれは完璧にマジカルなひとときだったよ。
  だから「ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜」のサントラのために、彼にベースを弾いて欲しいとメールを送って、彼が引き受けて受けてくれたのは、あの時の続きをやろうということだったと僕は信じている。僕は1時間前に、友達のエティエンヌ・シャリーによるスコアのプロ・ツール・セッションを持ってスタジオに入った。まだ映画は編集段階だったから、まだ仮音楽のものもあった。ポールのアシスタントが先に入って、彼のアンプとベースをセッティングしてくれた。僕はポールに演奏してもらうために5曲用意していた。彼がスタジオ入りすると、僕は彼に弾いて欲しい部分のスコアを映画の映像にあてて彼に見せたんだ。僕たちは2、3回曲を演奏して、ポールはいくつかのテイクでレコーディングしてくれたんだ。
  僕はポールに、映画のいくつかのシーンで、光のビームやウナギが管から飛び出してくるところなどヴィジュアル効果を使った箇所に、サウンドエフェクトをつけてくれないかと頼んだんだ。彼が子供みたいに遊びながら面白い音を作る姿を見るのは本当に楽しかった。
  彼の演奏はところどころはっきりと聴き取る事が出来るよ。例えばウェディングのシーンでの彼の激しいサウンドは、「レヴォルーション9」の彼のパートを想起させる。
  そして今、僕は映画を見返す度に、自分自身に言い聞かせるんだ、「ラバー・ソウル」を演奏したあのミュージシャンが同じ楽器でこのシーンを演奏しているんだと。いまだに信じられないよ。」

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執筆者

Yasuhiro Togawa