静かでドラマチックな香り・・その制作秘話とは?

石井岳龍監督が“聰互”の時代から7年もの歳月をかけて温め続けてきたという綾野剛主演の映画「シャニダールの花」。その公開を記念して、主演の綾野剛、黒木華、石井監督の3人が、映画のタイトルにもある“シャニダールの花”をイメージした香水の開発に携わったことが明らかになった。

極少数の限られた女性の胸にだけ咲く、見たこともない世にも美しい花“シャニダールの花”を研究する植物学者の大瀧(綾野剛)とセラピストの響子(黒木華)。彼らの使命は、提供者の胸に芽吹いた花を育て、一番美しい形で採取させることだったが、採取の際に提供者の女性が謎の死を遂げる事件が相次ぎ、大瀧は、研究所に不信感を抱き始める。一方、響子はそれが危険な花だと知りながらも、その花の魅力にのめり込んで行く。花の成長に誘われるように次第に恋に落ちていきながらも、運命に翻弄される二人の姿を描くラブストーリー。

“シャニダールの花”とは、実際にイラクのシャニダール遺跡でネアンデルタール人の遺体と共に発見された花の化石から着想を得ており、石井監督は実在しないこの花を、映画のタイトルに入れ、妖艶な雰囲気を放つ月下美人をベースに造形するなど、かなりのこだわりを見せている。綾野剛の「シャニダールの花ってどんな香りなんでしょうね」という何気ない一言から、本企画がスタート。実在しない花の香りを現実化するため、日仏フレグランス文化財団の代表理事である香りのスペシャリスト、地引由美さんの協力により今回の企画が実現した。

まず最初に地引さんが映画にふさわしいと思う18種類の香料を選び、綾野剛、黒木華、石井岳龍監督の3人が香りについての印象や映画のイメージに合っているかなどの意見を言い、それを受けて地引さんが香りを調合するという作業を何度か繰り返した末、ついに今回のオリジナル香水が完成した。季節の変わり目などを“匂い”で実感するという綾野は、とても丁寧に一つ一つ香りを確認していき、その姿はとても美しく、「著名なパフューマ—(調香師)のようだ」と地引さんが感動したほど。香りが大好きという黒木は、香料を試す度に表情をコロコロと変え、とても楽しんでいた。「大切なことを思い起こさせてくれるものの一つに香りというものがある」と話す石井監督は、香りをじっくりと何度も確認していた。

そして、偶然にも3人がこの映画をイメージして、選んだ香料は同じもの。シャニダール遺跡がある、イラクを象徴するザクロの花の香りだ。綾野は「(黒木演じる)響子が現れたときの香りがする!“シャニダールの花”の色である「赤」に象徴されるドラマティックな激しい表現と、シャニダール研究所から連想される「白」の持つ静謐なイメージ、その両方が表現されている、美しい香りだと思います。」、黒木は「とても懐かしさを感じます。奥深い香りで、個人的にも身につけたい香りです」、そして監督は、「静かでありながら、とても奥深い香りですね。この香りを通して、映画の記憶を留めていただきたいですね」とコメント。3人のイメージがぴったり合った「シャニダールの花」とは一体どんな香りなのか、とても楽しみだ。本作の公開日である7/20より、一部上映劇場で、数量限定での販売が決定。詳細は、映画公式HP(http://shanidar-hana.com/)へ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa