大学からの除籍をきっかけに、ネットカフェ難民からホストに、果てはホームレスにまで…転落の人生を歩むこととなった主人公・時枝修。彼を演じるのは、今秋公開の『潔く柔く』、TVドラマ「タンクトップファイター」(TBS)など注目作への出演が相次ぐ中村蒼。その難役を見事に演じきった。ヒロイン・北条茜には大塚千弘。ホストとなった修に貢ぎ、次第に自らも転落していく看護婦を体当たりの演技で熱演。先輩ホスト・順矢には、主演映画の相次ぐ劇団EXILEの青柳翔。修と順也がつとめるホストクラブ『ララ』の常連客、瑠衣には、山本美月。その他、中尾明慶、金子ノブアキ、井上順など注目のキャストが総出演。現代社会の底辺で、ささやかだが静かにきらめく若者たちの濃密なドラマが繰り広げられる。
  本作の監督は、『半落ち』(04)、『出口のない海』(06)、『夕凪の街 桜の国』(07)、など数々の社会派映画を手掛ける佐々部清。脚本は、『あなたへ』(12)で注目を集める青島武。『ツレがうつになりまして。』(11)をはじめ4作目のタッグとなる本作では、福澤徹三による同名小説「東京難民」(光文社刊)をもとに、大都会<東京>に渦巻く暗い現実に直面しながらも、懸命に生きる若者にスポットをあて、バイオレンスや際どいエロスにも果敢に挑戦しながら、現代の抱える病巣を真正面から描き新境地を開拓した。

【<時枝修役>中村蒼さんコメント】
<佐々部組の印象>
監督はいつもカメラの隣にいてすぐ近くで僕たちの芝居を見てくれています。そのことで良い緊張感をもてるし、良い芝居をするぞ!という気持ちで挑めます。今回の撮影は体力的にもかなり大変でしたが、スタッフの方の熱気と活気があり、とても居心地がいい組でした。
<修という役を演じてみて>
修を演じるのは、精神的に大変でしたが、学生、ネットカフェ難民、ホストなど色んなことが出来たのでやりごたえはありました。
<映画をご覧になる方に一言>
いまの日本には、1日を過ごすのも大変な人たちがいます。僕はこの作品をしてその事実を知りました。この映画を観て僕がいつそうなってもおかしくないし、他人事には思えませんでした。だから良いことばかりじゃなくこういう人たちもいるんだということを皆さんに知ってほしいです。僕と演じた修は撮影当時同い年だったので、特にその同世代の人たちに観てもらいたいなと思います。そしたらきっと当たり前に思えたものにも感謝してより良い生活が送れるはずです。

【<北条茜役>大塚千弘さんコメント】
<佐々部組の印象>
佐々部監督とは、面接の時に初めてお会いしました!!何だか、こわぁーい…面接、凄く緊張しましたもん。でも、茜役が決まってから監督とお会いする度に、本当に愛情を持って私達に接してくださるんだなぁと、凄く嬉しかったです。一緒に飲んだり、カラオケしたり♪映画が大好きな愛情深い皆から愛されている、お父さんです(笑)私の人生を変えて下さった大切な監督です。そんな監督のいる佐々部組は本当に居心地が良かったです。
 <茜という役を演じて>
私の芝居観念も女優人生も全てが代わりました。そして、茜からたくさんのパワーを貰いました!!

【<順矢役>青柳翔さんコメント】
<佐々部組の印象>
今回、初めて佐々部監督作品に参加させて頂きました。元々、大好きな監督の一人で、スピード感が物凄い早く心地良い波に乗って進んでいくので、撮影に没頭することができました。
<順矢という役を演じて>
順矢をやるに至って初めてのホスト役で、監督と話し合い、くすんでいた順矢が後半から心境の変化を見せれるよう作りこみました。

【<川辺瑠衣役>山本美月さんコメント】
<佐々部組の印象>
佐々部監督は最初怖そうな印象があったのですが、最初から最後までとても気さくな方で、丁寧に演技指導もしていただき私が思い描いていた瑠衣をしっかりと受け止めてくれました。良い意味で期待を裏切られました(笑)。
<瑠衣という役を演じて>
今まで演じて来た役とは全く違う人生を歩んで来た役だったので、この役を演じる事が出来て本当に勉強になりました。それに、私とは真逆の存在だからこそ演じていてすごく楽しかったです。
【<小次郎役>中尾明慶さんコメント】
佐々部組は、本当に明るくて撮影も楽しく、まさに男香る、男臭い現場だったと思います。今回の役も今まで培ってきた経験をいかして打ち込むことができたので是非、たくさんの人に観てほしいです。

【<児玉篤志役>金子ノブアキさんコメント】
この度、佐々部組の皆さんとご一緒させて頂いて、非常に有意義な時間を過ごす事が出来ました。毎朝現場に入ると感じる、一本芯の通ったピンと張り詰めた空気。作品の品格を裏付けるその空気に、幾度となく背中を押して頂きました。何分ホストクラブなるものに馴染みがないもので(笑)スムーズに役に入り込めるか不安な部分もありましたが、本当に楽しかった。また是非ご一緒したいです。ありがとうございました。

【<鈴本役>井上順さんコメント】
佐々部組を一言で表すと、昔風の落語に出てくる“長屋”である。温かさと元気さ溢れる笑顔が、何事にも屈しないエネルギーを放っていた。また、撮影に行くことの楽しさや嬉しさを感じさせてくれる現場でもあった。その雰囲気が現場に一体感を持たせ、作品の深みにつながったのではないか。これこそが、佐々部組である。
また中村くんは、甘ちゃんの学生から始まって、転落の日々を送りながらも成長していく修の役を見事に演じきった。拍手拍手。ホームレスの鈴本と、傷ついて倒れていた修が出会い、人生のどん底から這い上がっていく2人の様子は愛おしくもある。挫折は人生の財産である。まさにこのことを教えてくれる作品だ。

【佐々部清監督コメント】
二年前、脚本の青島さんから「東京難民」をやりましょうって紹介されたが、半分まで読んだ所で何にも共感できない主人公に、投げ出しそうになりました。読了した時点でR指定の映画に初挑戦しようと思いました。撮影中は、自分も東京難民になろうと新宿の1DKで一人生活、ちょっと大変でした。アベノミクスに踊る日本国だけど、現実の日本はこの映画の世界かも知れない。国内はもちろん、海外の人達に観て欲しいと切に願います。

【青島武(脚本)コメント】
福澤徹三氏が文芸誌で原作小説の連載を始めたのは2007年だ。その少し前から〝ネットカフェ難民〟なる言葉がニュース番組に登場するようになった。それから数年、健忘を美徳とするこの国で未だにこの言葉が消えることはない。否、〝マック難民〟なる派生語まで産み出し、誰がいつ〝難民〟になってもおかしくない。だが、一畳ほどの空間で身を屈めて眠る彼らの姿は見ようとしなければ見えない。この映画の主人公は滑稽なほど簡単に〝難民〟へと転がり落ちる。自らが見えないモノになって初めて見えてくるモノ——そこに明日へと繋がる希望があって欲しいと願いながらシナリオを書いた。

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執筆者

Yasuhiro Togawa