妊娠、出産、育児は明るくポジティブなイメージで語られることが多いが、子供中心の生活になじめず、誰にも言えない葛藤が芽生えるのも事実だ。日本以上に出産、育児支援制度が充実し、特殊合計出生率がV字回復し、2.00越えを果たしたフランスでも、母親への負担は大きいという。神学ミステリー「クムラン」シリーズなどで、日本でも人気の小説家エリエット・アベカシスもそう感じたひとりだ。彼女自身の体験をモデルにしたベストセラー「UN HEUREUX EVENEMENT」を、フランスの新鋭レミ・ブザンソン監督が映画化した。ブザンソンは監督2作目「Le premier jour du reste de ta vie」(08)がフランスで大ヒットし、09年にセザール賞で、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀監督賞、最優秀作品賞の3部門にノミネートされた注目株だ。

 主演は、リュック・ベッソン監督のアドベンチャー大作『アデル/ファラオと復活の秘薬』(10)で主演に大抜擢された、クールビューティのルイーズ・ブルゴワン。ヒロインのバルバラの体型の変化を見せるために、ラテックス製の大きなお腹を特殊メイクで取り付けたり、情熱的なベッドシーンにも挑戦している。ブルゴワンの相手役には、ブザンソン監督とは2作目となる若手実力派のピオ・マルマイ。映画とゲームを愛するオタク青年から、家族を支える父に成長するニコラを、愛嬌たっぷりに演じている。他に、『彼女の彼は、彼女』など、フランス映画界で長年活躍する女優兼監督のジョジアーヌ・バラスコが、バルバラの母親役で登場。『黄色い星の子供たち』(10)のティエリー・フレモンも、ニコラを支えるトニ役でとぼけた味わいを添える。

 出産の喜びと離婚の危機が紙一重だなんて、誰も教えてくれなかった。ここまで赤裸々に出産前後の真実に迫った映画はあっただろうか。これから結婚、出産を経験する人は必見の感動作だ。

予告編::http://youtu.be/ITmMy9rki7Q

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執筆者

Yasuhiro Togawa