ベネチア国際映画祭CICAE賞受賞作『紅顔』に続く、監督・リー・ユー(李玉)と製作総指揮・ファン・リー(方励)コンビの問題作。この二人にファン・ビンビン(范冰冰)主演を加えたトリオの誕生作とも言える。このトリオは、引き続き2010年『ブッダ・マウンテン』(東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞、最優秀女優賞受賞)、2012年『DOUBLE XPOSURE』を製作している。『ロスト・イン・北京』は、『トゥヤーの結婚』が金熊賞(グランプリ)を受賞した、2007年ベルリン国際映画祭にコンペ部門に出品された。中国当局の指摘により激しいセックス描写等のカットを要請されたが、実際は編集が間に合わずそのまま上映した。いわく付きの出品となったが、ウーロン茶のコマーシャルで日本でもおなじみの中国ナンバーワン美人女優ファン・ビンビンの体当たり演技が評判になり、著しい経済成長の真只中の庶民を描いた女性監督リー・ユーは一躍注目された。中国国内では先の要請通りのカット版が公開されたが2008年上映禁止処分になっている。しかし、貧富の格差を社会問題として描くのではなく、この経済発展を富裕層は戸惑いながらも享受し、貧困層はチャンスがあれば物にしようという庶民の姿を鋭く切り取った、まさに問題作と言える。今回は完全版での上映。

日中国交正常化40周年記念・中国映画の全貌2012
2012年10月6日(土)〜11月16日(金)新宿K’s cinemaにてロードショー

予告編:: http://youtu.be/iINp5ta4fjE

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執筆者

Yasuhiro Togawa