6歳のときにヒマラヤを越えて、チベットから亡命した少年の物語。
おちゃめな少年と
アバンギャルドな老監督が紡ぎ出す、
チベット望郷の詩。

どんな時代、どんな民族も、おとなはこどもに未来を託してきました。受難がつづくチベットも例外ではありません。「しっかり勉強するんだよ」と母親に背中を押され、この映画の主人公オロがチベットから亡命したのは6歳のとき。いまはインド北部の町ダラムサラで、チベット亡命政府が運営するチベット子ども村に寄宿し、学んでいます。「なぜ母はぼくを異国へ旅立たせたのだろうか」。自力でその答えを探し求めるオロの姿を一台のキャメラが撮影しつづけました。
監督は岩波映画出身の岩佐寿弥。土本典昭、羽仁進、黒木和雄の演出助手を経て、1960年代後半から70年代にかけて、映画の常識を覆すアバンギャルドな作品を連発したことで知られます。本作でも主人公の少年と監督自身をまるで“孫とおじいちゃん”のように画面に登場させるなど、その自由な精神は77歳になったいまもまったく変わりません。

「映画の着手から完成までの3年間に、ぼくのなかでオロは〈チベットの少年〉という枠をこえて、地球上のすべての少年を象徴するまでに変容していった」
—— 岩佐寿弥

見終わるともう一度はじめから見たくなる、
そんな魅力があるのびやかな美しい映画です。
オロの涙、オロの笑顔、オロの言葉が、
どんな大問題も個人にとっては日常として現れる、
だからこそそこには苦しみと同時に
喜びも希望もあるのだと教えてくれます。
———谷川俊太郎(詩人)

2012年6月下旬〜渋谷・ユーロスペースにてロードショー、以下全国順次公開

予告編::http://youtu.be/PMzMrD4VCbw

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa