認知症の父と娘の心を再び繋ぎ、それぞれに生きる喜びをもたらしたもの、
それは、“タンゴのステップ”だった—
主婦である百合子(秋吉久美子)は、子育てを終え、自らの長年の夢である大学教授への道を歩き始めようとしていた。そんなある日、百合子の父で元大学教授の修次郎(橋爪功)が 痴漢行為で警察に保護された。父の異変を心配した百合子は、修次郎を病院へ連れて行き、そこで予期せぬ事実を知らされる。修次郎は“認知症”を患っていたのだ。病気の進行への不安と介護という現実に衝突し、離ればなれになっていく家族。そんな時、百合子は同じ状況の家族が集う認知症「家族の会」の存在を知る。そこで出会った個性溢れる患者たちと共に、アルゼンチンタンゴを習い始めた修次郎。はじめは見様見真似で始めたタンゴだったが、ステップを踏むうちに修次郎の表情に変化が訪れてくる。そんな父の姿を見た百合子もまた、介護によって諦めかけていた夢に再び向かい始める。

精神科医・和田秀樹が介護の上手な付き合い方を提唱

急速する少子高齢化社会、日本では1000万人以上の人が介護に携わっており様々な介護の問題と向き合っている。本作は精神科医であり高齢者の臨床に携わるスペシャリスト和田秀樹がある家族を通して現在の日本の介護に関する問題を浮き彫りにしながらも、家族とその周辺で認知症に向かい合う人々のリアルな苦悩と希望を描いた感動の物語。
原作・監督:和田秀樹 (老年精神医学を専門とする精神科医)
東京大学医学部卒業後、高齢者専門総合病院浴風会病院や、認知症の地域医療で知られる川崎幸クリニックで20年以上にわたって老年医療の経験を積む。映画監督しては、癌宣告を受けたカリスマ塾講師と高校を中退した一人の少女の東大合格までのドラマを描いた第一回監督作品『受験のシンデレラ』が評価され、第5回モナコ国際映画祭では、最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀男優賞、最優秀脚本賞の主要4部門を受賞。

【和田秀樹監督コメント】「認知症の高齢者は全国で250万人、介護のために仕事をやめる介護離職者は全国で50万人以上いるとされています。今後、さらにそれが増え続ける中で、中高年の女性が「生きていく」ことの意味を、家族の意味を、老年精神科医の目から見つめ直して撮った私の職業人生のすべてを投影した渾身の1作です。」

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執筆者

Yasuhiro Togawa