2011年、スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞で、ペドロ・アルモドバル監督作『私が、生きる肌』、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作『ビューティフル BIUTIFUL』を押しのけ、作品賞ほか最多9部門を獲得。本年度、米アカデミー賞スペイン代表にも選出された2011年スペイン映画界最大の話題作が、遂に日本上陸を果たした。

人間の欲望を暴き出し、真実と嘘が交錯する緊張感に満ちた世界を作り上げたのは、“スペインのデヴィッド・リンチ”と称される鬼才アグスティー・ビジャロンガ。ゴヤ賞のみならず、ガウディ賞最多13部門を受賞し、サン・セバスチャン国際映画祭主演女優賞ほか数々の映画賞を独占した、そのマジック・リアリズム的な演出と映像美は批評家たちの高い評価を集めた。主人公のアンドレウを演じたのは、本作の製作チームに見出され、衝撃的な主演デビューを果たした弱冠14歳のフランセスク・コロメール。そしてスペインを代表する名優セルジ・ロペスが、アンドレウ一家を追い詰める欲にまみれた町長を演じている。

どこまでも続く、あの黒く深い森の奥でいったい何があったのか? 次々と絡み合う謎を解きほぐすうち、アンドレウは人間の心に潜む大きな闇をのぞくことになる。同じく内戦後のスペインを舞台にした『パンズ・ラビリンス』同様、その濃密な物語は人々から人間性を奪った社会を告発する視点も欠かさない。神話的な世界が現実と溶け合うカタルーニャの風景の中、残酷な真実を前にして、少年が最後に下す決断とは? 衝撃のダーク・ミステリーは、そのやるせない結末で観客の心を震わせるにちがいない。

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執筆者

Yasuhiro Togawa