『エレファント』がカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を獲得し、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『MILK』でアカデミー賞の話題をさらったガス・ヴァン・サント監督の最新作『永遠の僕たち』はいよいよ12/23(金・祝)より公開となるが、映画評論家や映画ライタ—の口コミで評判が評判を呼んでいる。その理由とは?

本作は死にとらわれた少年と余命3カ月の少女がくり広げる、ちょっと奇妙で甘く切ない物語。このところ社会的な問題をテーマにしてきた監督が、初期の作品に戻ったようなピュアなラブスト—リ—であることもひとつの要因だが、彼の故郷であるポートランドを舞台に秋から冬へと向かう鮮やかな街の景色に寄り添う楽曲は、映画を観た後に余韻や感動を呼び起こす大きな要素となっている。かねてより、その選曲センスには定評があり、作品そのものはもちろん、楽曲を心待ちにしているファンも多いのだ。

『永遠の僕たち』では、誰もが知っているザ・ビートルズの“Two of Us”、nicoの“The Fairest Of The Seasons”など、アコースティックでセンチメンタルなスコアと同時に、新進気鋭のUSインディーズ曲も使用。また、わずかな時間しか残されていない恋人たちが、少しでも楽しい思い出を作ろうと共に過ごす印象的なシーンで使用されているのが、Pink Martini(ピンク・マルティーニ)の代表曲“Sympathique”。

Pink Martiniは、1994 年に米国オレゴン州ポートランドで結成されたジャンルレスな楽曲が魅力の12人編成のオーケストラ・グループ。アメリカだけでなく、ヨーロッパでも積極的にツアーを行い、欧米で支持されている。そしてここへきて、由紀さおり&ピンク・マルティーニによるコラボ・アルバム『1969』が世界22ヵ国でCD発売・デジタル配信され、各国のジャズ・チャートを賑わし、iTunes 11/2付全米ジャズ・チャートで日本歌謡曲カバーが1位を獲得、歴史的快挙として大きな反響を呼んでいる。ガス・ヴァン・サント監督が新たに生み出したピュアでエモーショナルな物語に、そんな楽曲から触れるのもいいかもしれない。
『永遠の僕たち』は12/23(金・祝)よりTOHOシネマズ シャンテ、シネマライズ他にて全国順次ロードショー。

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執筆者

Yasuhiro Togawa