そこは、誰もが極上のシアワセを味わえる35$のユートピア
1977年、ニューヨーク。夢のセックスクラブを実現させた男の生き様と
スワッピング文化の栄華と衰退を赤裸々に描くドキュメンタリー

こんなユートピアは
もう二度とないかもしれない。
町山智浩(映画評論家)

サイコーな出来事と
そのリスクを超えた人たちの表情は
なんてアッパレなんだろう、と
痛感させられるホントの話。
松江哲明(映画監督『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』)

世の中にはホント、えげつないこと考えつく奴と、やる奴がおります。
それをうらやましく思うオレのような奴もみな、地獄行きです。
みうらじゅん(イラストレーターなど)

1977年、不況や治安の悪化によりニューヨークはどん底状態にあった。ところが、市が財政崩壊の危機に直面しているさなか、夜の世界を彩るナイトクラブは空前の盛り上がりを見せていた。入場チェックが厳しいことで有名なミッドタウンのディスコ「スタジオ 54」には、コカインでハイになったセレブが集まり、ダウンタウンのライブハウス「CBGB」に集まるパンクロッカーたちは、ポップカルチャーを敵視して社会に対する不満や怒りをぶちまけていた。そして、保守的なアッパー・ウエスト・サイドの芸術的建造物「アンソニア」の地下にあるナイトクラブ「プレイトーズ・リトリート(プラトンの隠れ家)」には、ごく普通のカップルたちが集い、ダンスフロアーで踊り、プールで泳ぎ、そして・・・見知らぬ相手とのフリーセックスを楽しんでいた。

この革命的なナイトクラブは、この店のオーナー、ラリー・レビンソン独自の発想から火がついた。「プレイトーズ・リトリート」は、個人的な快楽を求める自己中心的な世代に支持され、公然とセックスを楽しめる場として急速にその名が知れわたっていく。それまでのフリーセックスは秘密裏で行われ、魅力あふれる富裕層の娯楽とでもいうべき位置づけだった。ところが、「プレイトーズ・リトリート」は階層に縛られることなく、どんな人でも歓迎したのだ。カップルたちはたったの35ドルで、この“裸の楽園”に足を踏み入れ、その実情を目にした上で参加するかどうか決めることができた。店の内部では、映画俳優がOLたちといちゃつく中、初めてフリーセックスに目覚めた客たちがバスドライバーの目の前で事に及ぶ、といった光景が繰り広げられていた。ラリーやそこに集う者たちにとって、「プレイトーズ・リトリート」はユートピアだった。中には、「タイムマシーンのように忘却のかなたへ連れ去ってくれる場所だった」と言う者もいる。

『スワップ・スワップ〜伝説のセックスクラブ〜』は、当時、「プレイトーズ・リトリート」へ客として出入りしていた人々、従業員、ラリーの家族の独占インタビューと、これまで誰も目にしたことがない数々の驚くべき映像で構成されている。このドキュメンタリー映画は、その多くが闇に包まれていたセックス・クラブの裏側を、スクリーン上に余すことなく描き出した初めての作品である。

シネマート新宿にて10月17日(土)よりレイトショー

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執筆者

Yasuhiro Togawa