全てのサーファーの憧れ—ハワイ・ノースショア

全てのサーファーが憧れを抱くハワイ諸島。その中でもオアフ島のノースショアは、古くからサーフィンのメッカとして知られている。そんなノースショアのシーズンがスタートすると、トップコンペティターや、いつかはその頂点を極めようとする野望に満ち溢れた若きアマチュアサーファー、そしてアリューシャンやアラスカ沖をその源に2,000マイルもの大海原を越えオアフ島の北部に到達し、家々の壁に振動を与え、大地震にも似た強烈なパワーを秘めたビッグウエーブを純粋に楽しもうとするノースショアラヴァーが世界中から訪れ、二度と出逢うことが無いだろう自然から贈り物への挑戦を繰り返す。
また、そんなサーファー達によって繰り広げられるノースショアでのエキサイティングな一冬のストーリーをカメラに収めようとする無数のフォトグラファーやジャーナリストに加え、憧れのサーファーを一目見ようとグルーピーやファンも巡礼者のごとく、毎年きまった時期に聖地を訪れている。
そうした様々なエネルギーが交錯するノースショアは、「サーファーにとって古代ローマの拳闘士、グラディエーターが名誉とプライドを掛けて戦ったコロシアムのようでもある」と例えられるほどだ。

トリプルクラウンを軸にノースショアで繰り広げられる物語を追ったドキュメンタリー

コンペティター達やそこに集う人々のライフスタイルのハイライトは、毎年11月から12月にかけて、55日間に渡りハレイワで開催される“OPプロハワイ”を皮切りにサンセットビーチでの“オニール・ワールドカップ”、そしてパイプラインをステージとする“リップカールプロ・パイプラインマスターズ”といった三冠『トリプルクラウン』だ。賞金総額$750,000と、そして何よりも名誉をかけた熱き戦いが繰り広げられるトリプリクラウンを軸に、その前後を含む60日間に渡りノースショアで繰り広げられる様々なできごとや人間模様にスポットを当てたドキュメンタリー映画が『ハイウォーター』である。
ここに登場するサーファーのコメントは大会そのものについての内容もさることながら、それにもましてそれぞれにとっての“ノースショア”について深く語られている。
70年代はカントリーだったノースサイドが、セレブリティー達の進出により開発が進み、本土化していく憂いをもの悲しげに語るサニー・ガルシア。サーフィン界のタイガー・ウッズといわれ、その評判と期待が高まるスーパーキッズ、ジョン・ジョン。先輩として微笑ましくインタビューに答える巨人ケリー・スレーター。その他にも、パンチョ・サリバン、アイアンズブラザースやトム・カレン、ノースショアを代表するウォーターマン、マーク・ヒーリーといった新旧のトップサーファーやレジェンド、そしてローカル達がノースショアが内包する喜怒哀楽や日常の出来事を本音で語っている。HIGH WATER−それはノースショアの住人が語る真実の物語なのだ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa