『スターダスト』の公開が10月27日(土)より日劇3他にて全国ロードショーと決定した。

映画界を席巻する昨今のファンタジー・ブームの中、『スターダスト』は、夢と空想のエンターテインメントでありながらシニカルでエッジの効いた作品になっている。原作は「もののけ姫」の英語版脚本を担当し、世界のファンタジー界で注目を集める作家ニール・ゲイマン。イギリスのSF作家であり世界的なファンタジー作家のプリンスとして知られるニール・ゲイマンの来日も決定した。

9月25日の原作本発売に先駆けて、出版元である角川書店にてサイン会並びにウェルカムパーティが開催される。当日は原作本を先行で販売致します。
振るってご参加ください。

日程:9月21日(金)
    18:30開演
場所:角川グループパブリッシング 2階ホール
    東京都千代田区富士見2-13-3
問い合わせ電話番号:角川書店第一編集部 03-3238-8555
地図:   http://www.kadokawa.co.jp/company/
交通:【JR】
    □中央線・総武線   飯田橋駅(市ヶ谷駅寄り出口・西口)より徒歩3分
    【東京メトロ】
    □東西線   飯田橋駅(A4出口)より徒歩5分
    □有楽町線・南北線    飯田橋駅(B2a・B3出口)より徒歩4分
    □東西線・半蔵門線    九段下駅より徒歩7分
    □都営地下鉄新宿線   九段下駅より徒歩7分

★★ニール・ゲイマンの魅力★★
最近は王子と呼ばれている人も多いが、真にその名にふさわしいのはゴスのダーク・プリンス、ニール・ゲイマンくらいではなかろうか。一介のコミックブック・ライター、あるいは作家という枠を越え、ゴス・カルチャーの中心人物としてロックスター並みの人気を誇っているのがゲイマンなのである。

 一九六〇年、イギリスのポーチェスターに生まれたゲイマンが名前を知られるようになったのは八九年、DCコミックスで『サンドマン』のコミックを書いてからである。時代遅れのスーパーヒーロー・コミックの再生をまかされたゲイマンは、いきなり物語を”夢の王”を主人公に据えた壮大なファンタジーに変えてしまったのだ。白塗りの顔、ボサボサの髪をしたドリームは人間の夢をつかさどる王である。恐怖に満ちた悪夢から美しい希望の夢まで、ゲイマンはさまざまな夢をつむぎだし、大人向けのコミックを求めていたコミック読者を熱狂させた。副主人公格で登場するキュートなパンク少女の死神デスは大人気になり、彼女が主役となるスピンオフのコミックも登場した。『サンドマン』コミックは(日本を含む)十九を越える国で翻訳出版され、一千万部以上を売り上げている。一九九一年には世界幻想文学大賞を受賞し、英語圏ではコミックによるはじめての文学賞受賞となった。

 ゲイマンが爆発的人気を得た要因はいくつもあげられる。ゲイマンがコミックの中で巧みな語り口と詩的なセリフ回しがいかんなく発揮したこと。ゲイマン自身が黒い革ジャンに長髪で決めた俳優ばりの二枚目だという点。ちょうどアメコミが子供向けのメディアから大人になろうとしていた時期にあたったこと。
 だが、何よりも、ゲイマンがコミックの世界を越えたカルチャー・ヒーローとなったことが大きいだろう。白塗りに黒い服というファッションで、死と闇を志向し、暗いロックや吸血鬼を偏愛するゴス・カルチャーは八十年代後半から大いに盛り上がったが、ゲイマンはまさしくその中心にいた。『サンドマン』のダーク・ファンタジー世界はゴスの若者たちに強くアピールしたのである。

 その人気はゲイマンにコミックの世界にとどまることを許さなかった。トーリ・エイモスやカウンティング・クロウズらゲイマンの作品から影響を受けたミュージシャンも数多い。二〇〇六年にはゲイマンへのトリビュート・アルバムまで作られている。作家としてもテリー・プラチェットとの共作『グッド・オーメンズ』を皮切りに、『ネバーウェア』など次々と小説を発表、大人向けファンタジー「American Gods」((角川書店より近刊)はベストセラーとなり、ヒューゴー賞をはじめ多くの賞を獲得した。『アナンシの血脈』ではNYタイムズのベストセラー一位となっている。映画にも積極的にかかわり、ロバート・ゼメキス監督作品ベオウルフの脚本を書いているほか、宮崎駿監督の『もののけ姫』が全米公開されるときには英語版の脚本を書き下ろしている。『もののけ姫』がアメリカで受け入れられ、アカデミー賞?にノミネートまでされたのにはゲイマンの力も大きくあずかっているのだ。ゲイマン原作では、他にヘンリー・セリック監督の手で『コララインとボタンの魔女』(角川書店)の映画化も進んでいる。

 『スターダスト』は一九九七年にゲイマンの文章にチャールズ・ヴェスのイラストを付けたイラストレイテッド・ブックスとして発表された。ファンタジー・イラストの名手として知られるヴェスとのコラボレーションにより、英国の田舎町ウォールと、その隣に広がっている魔法世界が鮮やかに描き出される。映画版でもヴェスのイラストレーションが鮮やかな色彩もそのままに再現されている。流れ星イヴェインや美しい魔女ラミアといった登場人物がいかにも鮮やかにキャラ立ちしているのは、コミック出身であるゲイマンの面目躍如であろう。

 現在、ゲイマンは死神少女デス主演のコミック『デス/ハイ・コスト・オブ・リビング』の映画化で、いよいよ監督としてもメジャー・デビューを果たそうとしている。スティーブン・キングやクライヴ・バーカーといったホラー作家の偉大な先達のあとを継ぎ、映画界でも次代のスーパースターとして大いに注目を集めているのである。

( 映画評論家 柳下 毅一郎 氏 )

ニール・ゲイマン著作 (※発表年)<発行年、書籍、出版社>

<長中篇>
「グッド・オーメンズ(上・下)」 Good Omens (90年) ※共著:テリー・プラチェット<07年 角川書店>
「ネバーウェア」 Neverwhere (97年)<01年 インターブックス>
「コララインとボタンの魔女」 Coraline (02年)<03年 角川書店>
「アナンシの血脈(上・下)」 Anansi Boys (05年)<06年 角川書店>
“American Gods”(01年)<角川書店より刊行予定>

<短篇>
「聖杯とお茶」 Chivalry (93年)<00年 SFマガジン535号 早川書房>
「雪と鏡とりんご」 Snow, Glass, Apples (94年)<00年 SFマガジン535号 早川書房>
「世界の終わり」 Only the End of the World Again (97年)<01年 インスマス年代記(下) 学研>
「形見と宝:ある愛の歌」 Keepsakes and Treasure : A Love Story (99年)<00年 999-妖女たち- 東京創元社>
「恋するハーレクィン」 Harlequin Valentine (99年)<01年 ミステリマガジン545号 早川書房>
「十月が椅子に座る」 October in the Chair (02年)<03年 SFマガジン566号 早川書房>
「エメラルド色の習作」 A Study in Emerald (03年)<05年 SFマガジン589号 早川書房>
「サンバード」 Sunbird (05年)<06年 SFマガジン602号 早川書房>
「パーティで女の子に話しかけるには」 How to Talk to Girls at Parties (06年)<07年 SFマガジン616号 早川書房>

<コミック>
「サンドマン1 プレリュード&ノクターン(上)」 THE SANDMAN Preludes & Nocturnes (89年)<98年>
「サンドマン2 プレリュード&ノクターン(下)」 THE SANDMAN Preludes & Nocturnes (89年)<98年>
「サンドマン3 ドールズハウス(上)」 THE SANDMAN The Doll’s House (89年)<98年>
「サンドマン4 ドールズハウス(下)」 THE SANDMAN The Doll’s House (89年)<98年>
「サンドマン5 ドリームカントリー」 THE SANDMAN Dream Country (90年)<99年>
「デス ハイ・コスト・オブ・リビング」 DEATH The High Cost of Living (92年)<99年>
「夢の狩人 The Sandman」 The Sandman: the Dream Hunters (99年)<00年>
※全刊 インターブックス

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=44623