「本当に卵を点検するお客さんっているんだよ…」

『クラークス/CLeRKS』
1994年/USA/モノクロ/35mm/93分
配給・宣伝:アップリンク(http://www.uplink.co.jp/)

・6月渋谷シネアミューズにてレイトロードショー公開決定!

<INTRODUCTION>
1994年のサンタンス映画祭、及びニューヨーク近代美術館(MOMA)の新人監督/新映
画プログラムの双方において、傑作コメディーとして注目をされた映画『クラーク
ス』は、『チェンジング・エイミー』でヒットを飛ばし今夏公開予定の『ドグマ』
が控えている映画監督ケヴィン・スミスのデビュー作です。

『クラークス』は、ニュージャージーのレオナルドにあるクィック・ストップ食料
雑貨店で、1993年4月1日から休みなしの21日間をかけて撮影された。23歳のスミス
は、サウンド・エンジニアも担当したスコット・モズィアと共に、この白黒映画を
プロデュースし、編集しました。2人は1992年、映画学校で出会っている。もう1
人、撮影監督のデヴィッド・クラインも映画学校のクラスメートで、映画のために
ニュージャージーへ赴き、スミスと合流。

コンビニエンスストアは、現代社会の二次的な空間であることが多く、その質は決
していいものとはいえない。選択肢は少なく、値段は高く、賞味期限も短い品物が
並ぶ。レジの店員が釣りさえ間違えなければ、客は満足することでしょう。

しかしスミスは、コンビニは、一般に認識されている煙草やパンを買うために立ち
寄るだけの場所以上の面白い空間になり得ることを証明した。まして、そこで働い
ていればなおさらそうなのだ。スミスは実生活でも19歳の時からコンビニで働き、
今でも時々そこで働いている。「あそこはクラブハウスみたいなもんさ。みんな友
だちが集まるんだ。あそこにいて嫌だって感じたことはない」と彼は話しますす。

スミスはそこで働いて、収入はもちろん、話しを作るのに必要な豊かな想像力、そ
して中でも大事な撮影のロケ地を手に入れることができました。スミスはモズィア
と2人でビデオ店に編集機を設置し、夜の10時半まで店に出て客の相手をし、閉店
後に編集を行う日々を送る。時間を節約するために2人はそこで寝て、スミスは朝
6時になるとクィック・ストップの仕事に転がり込む生活だった。結果的にクィッ
ク・ストップは、二人の人物に俳優の道を広げたばかりでなく、一組のロマンティッ
クカップルを生み出した。映画の製作中に出会ったジェフ・アンダーソン(ランダ
ル役)とリサ・スプーノア(ケイトリン役)は、めでたく婚約したのだ。

「基本的に『クラークス』は“消費”についての映画だ」とスミスは話す。もちろ
んダンテとランダルは、男なら誰でもそうであるように、自分たちの肉体的欲望に
強い関心を抱いている。でも、それのみならず、二人はイド(id)とエゴ(ego)のよ
うに自分たちの哲学を互いにぶつけ合います。
「レジの店員だからといって単なる道化、あるいは馬鹿ではないということを彼ら
の討論を通して証明したかった。お客さんの中には、店員を見下す人も少なくない。
店員の人生がここで始まり、ここで終わると信じている人たちだ。他に何も能力が
ないから、ここにこうしているんだと思い込んでいる人たち…」

『クラークス』の27575ドル(約350万)という少ない製作費は、様々な所から寄せ集
められました。スミスは学校の授業料をつぎ込んだ以外にも、自分の漫画のコレク
ションのクレジットを3000ドル(約40万)で売り飛ばし、それを友人に1冊1冊売って
歩きました。また、友人のウォルト・フラナガンは映画のオープニングのアニメー
ションを作った他に、卵に取りつかれた男を含め、数多くの役を演じています。そ
の他にも、映画の製作費は以外なところから浮上しました。1992年12月の冬、大々
的な嵐がレオナルドの隣接地帯、スミスの故郷でもあるハイランズを直撃し、結果
大洪水をもたらした。「家の中で腰のあたりまでつかる大洪水だったよ」とスミス
は話します。

洪水のために、1月に予定していたクランクインを大幅に遅らすことを強いられた
スミスとモズィアは、最初、洪水は『クラークス』にとって大きな被害以外何もの
でもないと思った。しかし、偶然にも連邦非常事態管理局(フェデラル・イマージェ
ンシー・マネジメント・エージェンシー)が、スミスに破損した車の賠償金を払い
結果的に国立芸術基金のような役割を果たしてくれたのです。スミスがすぐさまこ
のお金を『クラークス』につぎ込んだことは言うまでもありません。
クィック・ストップがあるジャージー岸のこの町についてスミスは、「レオナルド
の凄いところは、核兵器の駐屯地であるアール海軍基地から数ブロックしか離れて
いない点だ。だから、アメリカが爆撃されるようなことがもしあったら、クイック
ストップは真っ先になくなってしまうわけだ」と語ります。

<STORY>
スミスは、風変わりなコンビニの要素を使って話しを辛辣かっ皮肉たっぷりに進め
ていく。「完全たる卵」を探し求める男、新鮮な牛乳をあさる女、そして従業員用
トイレを借りに来て店のポルノ雑誌を持ち込むオヤジ…。しかし出会いという出会
いが最悪の結果を招いてしまう。それは、ダンテ・ヒック(ブライアン・オホーロ
ラン)を見れば一目瞭然だ。
22歳のダンテにとって、今日は最悪の1日のスタートだ。早朝から店長の電話でた
たき起こされ、クイック・ストッブコンビニの早朝シフトを頼まれる。自分の身に
次から次へと災難が起こる中、『本当は休みのはずたったのに!』と叫ぶ。

そもそもダンテは朝寝坊をして、午後はホッケーをして1日を楽しむはずだった。
それなのに、彼は立腹した客から煙草を投げつけられてはショックを受け、忠実な
ガールフレンドと思っていたベロニカ(マリリン・ギクリオッディ)の過去の性的体
験を聞き、ショックを受け、しまいには、今だに思い続けている高校時代の元彼女
ケイトリン(リサ・スプーノアー)の結婚を知って打ちのめされる。

そして、ランダル(ジェフ・アンダーソン)がいる。ダンテとは対照的で向こう見ず
なランダルは、隣のレンタルビデオ屋で働いているが、店員だから行儀を良くしな
ければならないという考え方を全く無視し、きまぐれにお客さんをけなして遊んで
いる。2人で店を抜け出して通夜に出かけた時も、ランダルは棺を倒して哀悼者を
怒らせ、ダンテに恥をかかせるのである。
「いったいここはどういうコンビニだ?」と、信じ難い事件のデータを集める検死
官は尋ねる。デンテには答えるすべもない。ただ、明日は必ず休みを取ろうと堅く
決心するのであった。

<STAFF>
監督・脚本:ケヴィン・スミス
プロデューサー:スコット・モズィア、ケヴィン・スミス
撮影:デヴィッド・クライン
編集:ケヴィン・スミス、スコット・モズィア
音楽:スコット・アングレイ

<CAST>
ダンテ・ヒックス:ブライアン・オバロラン
ランダル:ジェフ・アンダーソン
ヴェロニカ:マリリン・ギクリオッティ
ケイドリン:リサ・スプーノア
ジェイ:ジェイソン・ミューズ
サイレント・ボブ:ケヴィン・スミス