このたび、昨年 11 月 26 日に 77 歳で逝去した、イタリアの映画監督ベルナルド・ベルトルッチ監督の追悼特集上映の開催が決定、1/12(土)~25(金)の 2 週間にかけて、東京・YEBISU GARDEN CINEMA にて開催いたします。

上映されるのは、キャリア初期の傑作群の『革命前夜』(64)、『ベルトルッチの分身』(68)、『暗殺のオペラ』(70)、『暗殺の森』(70)の 4 作品。
『殺し』に続く長編第 2 作目にあたる『革命前夜』は、スタンダールの『パルムの僧院』を骨子にしつつ、ベルトルッチの故郷である地方都市パルマを舞台に、マルクス主義にかぶれた裕福な出自の青年のアイデンティティが分裂しゆくさまを瑞々しく描き、若干 22 歳のベルトルッチの当時の心象風景とヌーヴェル・ヴァーグへの傾倒ぶりが色濃く反映され、カンヌ国際映画祭で新進批評家賞を受賞、大型新人の登場とセンセーショナルな注目を浴びました。初のカラーとなった 3 作目『ベルトルッチの分身』は、ジャン=リュック・ゴダールと並んで若きベルトルッチのヒーローだったドストエフスキーの『分身』を下敷きに、生真面目な大学講師/凶暴な殺人者という「二重人格」に引き裂かれる青年を描きました。第 4 作目の『暗殺のオペラ』では、ルイス・ホルヘ・ボルヘスの短編「裏切り者と英雄のテーマ」を、レジスタンス/ファシストの立場が時代によって交錯するイタリアの複雑な現代史になぞらえつつ、見事に映像化。本作では、以降ベルトルッチとのコンビで数々の名作を生むことになる、アカデミー賞を三度受賞した名撮影監督ヴィットリオ・ストラーロと初めてタッグを組みました。続く『暗殺の森』では、第二次大戦前夜のヨーロッパを舞台に、ジャン=ルイ・トランティニャン演じる青年がファシストの暗殺者へと変貌を遂げる様を描き、世界中の映画ファンを魅了しました。
今回開催される「ベルナルド・ベルトルッチ追悼特集上映」では、処女作の『殺し』を除き、20 代の 7 年間で撮られた若きベルトルッチの作家性が漲る第 2~5 作目までが一挙に上映されることになります。

ベルナルド・ベルトルッチ Bernardo Bertolucci(1941/3/16 – 2018/11/26)
1941 年 3 月 16 日、北イタリア、エミーリア地方のパルマで生まれた。父親は著名な詩人で文芸評論家のアッティリオ・ベルトルッチ。1952年、11歳の時に家族と共にローマに移住。10代よりシネマテークに通いつめるが、なかでもリアルタイムで鑑賞したゴダールの『勝手にしやがれ』(59)に衝撃を受け、以降、ヌーヴェル・ヴァーグの作品に夢中になる。その一方、父親の影響から詩作に励んでおり、1962年、「謎を求めて」と題された処女詩集が刊行され、21歳で名誉あるヴィアレッジョ賞を受賞。その後、父と友人でもあり、詩壇の先輩でもあるピエル・パオロ・パゾリーニと出会い、61 年の『アッカトーネ』で助監督を務める。62 年には、パゾリーニ原案による『殺し』で監督デビュー、ヴェネチア国際映画祭に出品。ゴダールに心酔しており、「パルムの僧院」を叩き台にした 64 年の半自伝的作品『革命前夜』では、ヌーヴェル・ヴァーグを思わせるおびただしい古典映画へのオマージュ、引用が見られる。その後、ボルヘスの短編に想を得た『暗殺のオペラ』、モラヴィア原作の『暗殺の森』では、ヴィットリオ・ストラーロの映像美が世界中の映画ファンを魅了。72 年には『ラストタンゴ・イン・パリ』が、その大胆な性描写が話題の一端となり本国イタリアでは上映禁止処分を受けるなど物議を醸した。76 年の『1900 年』では、イタリアの現代史を総括する壮大な叙事詩として高く評価される。1987 年、『ラストエンペラー』で、米アカデミー賞 9 部門を受賞。その後、『シェルタリング・スカイ』など政治、セックスの主題を追求した様々な作品を世に放った。2007 年ヴェネチア国際映画祭では 75 周年特別金獅子賞を、2011 年カンヌ国際映画祭では名誉賞にあたるパルムドール・ドヌール賞を受賞している。2003 年頃、病気が映画制作を妨げていたが、2012 年には『ドリーマーズ』(‘03)以来となる『孤独な天使たち』で復帰するも、遺作となった。
2018 年 11 月 26 日、ローマ市内の自宅で癌により死去。享年 77。

<上映作品>
『革命前夜』Prima della rivoluzione
1964 年/イタリア/モノクロ/ヴィスタ/112 分/BD
© 1964 Iride Cinematografica ©2010 Cristina D’Osualdo. All rights reserved.
監督: ベルナルド・ベルトルッチ
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、ジャンニ・アミーコ
撮影:アルド・スカヴァルダ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:フランチェスコ・バリッリ、アドリアーナ・アスティ、アレン・ミジェット、モランド・モランディーニ、クリスティーナ・パリセット
※1964 年カンヌ国際映画祭 新進批評家賞、1967 年ナント国際映画祭 マックス・オフェルス賞
配給:ザジフィルムズ

『ベルトルッチの分身』Partner.
1968 年/イタリア/カラー/シネスコ/105 分/BD
© 1968 Red films Produced by Giovanni Bertolucci
監督: ベルナルド・ベルトルッチ
脚本: ベルナルド・ベルトルッチ、ジャンニ・アミーコ
原作: フョードル・ドストエフスキー「分身」
撮影:ウーゴ・ピッコーネ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:ピエール・クレマンティ、ティナ・オーモン、ステファニア・サンドレッリ
配給:ザジフィルムズ

『暗殺のオペラ』 Strategia del ragno
1970 年/イタリア/カラー/スタンダード/99 分/DCP
© Licensed by COMPASS FILM SRL – Rome – Italy. All Rights reserved.
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、マリル・パロリーニ、エドゥアルド・デ・グレゴリオ
原作:ホルヘ・ルイス・ボルヘス「裏切り者と英雄のテーマ」(『伝奇集』より)
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ、フランコ・ディ・ジャコモ
音楽:ヴェルディ、シェーンベルク
出演:ジュリオ・ブロージ、アリダ・ヴァリ
※1971 年ヴェネチア国際映画祭 ルイス・ブニュエル賞
提供:マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム

『暗殺の森』Il conformista
1970 年/イタリア=フランス=西ドイツ/カラー/ヴィスタ/115 分/DCP
© 1971 Minerva pictures Group All rights reserved.
監督・脚本:ベルナルド・ベルトルッチ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダ
※全米映画批評家協会賞 監督賞、撮影賞
提供:紀伊國屋書店・マーメイドフィルム 配給:コピアポア・フィルム

『革命前夜』
(c) 1964 Iride Cinematografica (c) 2010 Cristina D’Osualdo. All rights reserved.

『ベルトルッチの分身』
(c) 1968 Red films Produced by Giovanni Bertolucci

『暗殺のオペラ』
(c) Licensed by COMPASS FILM SRL – Rome – Italy. All Rights reserved.

『暗殺の森』
(c) 1971 Minerva pictures Group All rights reserved

●公開表記 1/12(土)~1/25(金)、YEBISU GARDEN CINEMA にて開催
●URL https://www.unitedcinemas.jp/yebisu/information.php?info=63159