2003年、カナダのトロントにおいて、ある野球チームが最高の名誉であるカナダ野球の殿堂入りを果たした。
そのチームの名は———「バンクーバー朝日」。
戦前のカナダ・バンクーバーで、差別や貧困の中にあってもフェアプレーの精神でひたむきに戦い抜き、日系移民に勇気と誇り、そして希望を与え、さらには白人社会からも賞賛と圧倒的な人気を勝ち得た “バンクーバー朝日”という実在の野球チームがありました。チーム創設100年の今年、実際の記録をもとに、戦前の日系移民の壮大なドラマを描く、映画「バンクーバーの朝日」を、先日「舟を編む」で日本アカデミー賞を総なめにしたことでも記憶に新しい石井裕也監督の手によって製作いたします。そしてこの度、本作の豪華オープンセットと劇中の画像を初公開することになりました。
本作では、戦前のバンクーバーで朝日軍が試合を行った野球場や、彼らが住んでいた日本人街、白人街の町並みを再現する為、栃木県足利市の広大な敷地に両翼75メートルの球場と45棟の建物が連なる巨大なオープンセットを作り、現在撮影を行っています。2月18日にクランクインしてから約1ヶ月、朝日軍メンバーの妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮の、撮影現場でのコメントが以下になります。

妻夫木聡《日系二世で製鉄所で肉体労働に従事。ショートを守る“レジー笠原”役》
生きるために何かをすることが必要だった時代
その日一日を生きるのに必死だった人達の姿を野球を通じて描いていければいいなと思っています。

亀梨和也《日系二世で漁業に従事。エースピッチャー“ロイ永西”役》
何日も続けて野球の撮影をしていると、この街が本当に存在していて、グラウンドから出たらそれぞれの家に本当に帰るんじゃないかなぁと思えるぐらい入り込みやすい環境の中で演じさせてもらっています。

勝地涼《主人公“レジー”の職場の同僚。セカンドを守る“ケイ北本”役》
合宿したり、朝撮影する前にみんなでキャッチボールしたり走ったりを重ねていくうちに一緒にいるのが当たり前になっていて、とても良い感じです。

上地雄輔《実家の豆腐屋で働く。キャッチャー“トム三宅”役》
年齢もバラバラで最初はぎこちなかったですが、野球って距離感を縮められるスポーツなので、何回も練習したり、キャッチボールしたり、会話したりしていくうちにどんどん距離も縮まっていいチームになってきています。

池松壮亮《ホテルのベルボーイとして働く。サード“フランク野島”役》
石井監督は誰よりも信じられる人。日本人の守るべきものや美意識などを、石井節炸裂の石井さんらしい映画にするんじゃないかと思ってまいす。

【バンクーバー朝日とは】
1914年〜1941年まで、カナダ・バンクーバーに実在した日系カナダ移民の二世を中心とした野球チーム。地元のアマチュアリーグに参加し、サムライ野球の原点ともいえる盗塁やバント、ヒットエンドランを駆使したスモールベースボールでカナダ人野球チームを打ち破った。
1941年の太平洋戦争勃発に伴い、「敵性外国人」となった選手と街の人々は強制移住させられ、チームは解散。彼らが再び集まることは二度となかった——。
半世紀以上たった2003年、カナダの移民社会、野球文化への功績が認められ、カナダ野球殿堂入りを果たしている。

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執筆者

Yasuhiro Togawa