その崖の上は、毎日が生きる闘いでした。

風光明媚な観光名所、三段壁。
美しい断崖は、自殺の名所としても知られていた。
人生に絶望した自殺志願者と、共に暮らす牧師。
彼らの日々が問いかける“生きる意味”とは?

【映画概要】

“生きがいがない”“ずっと孤独を感じて生きてきた”―
悲痛な想いで、観光名所・三段壁を訪れる自殺志願者たちの姿。

和歌山県白浜町にある観光名所・三段壁で、いのちの電話を運営しているのが牧師・藤䉤庸一。映画は自殺志願者たちを死の淵から救い、生活再建を目指して共同生活をおくるという独自の取り組みに密着した。藤藪は、人生に絶望してやってきた自殺志願者の声に耳を傾ける。借金や人間関係のトラブル、精神的な病など様々な問題を抱え、帰る場所のない人々に教会を開放し、
共に暮らしながら、生きていく方法を探していく。
日本の自殺者数は年間2万1321人(2017年)。1日あたり60人近い方が亡くなっている計算になる。厚生労働省の「自殺対策白書」では、15歳〜39歳の各年代の死因の第一位が自殺となっており、大きな社会問題になっている。
牧師・藤藪が地道に続ける「いのちの電話」が自殺を思いとどまらせる最後の砦として存在している。

何度失敗しても、帰ってこれる場所として。

藤藪は共同生活の場を提供するだけでなく、弁当配達も行う食堂も運営している。そこは、ひとり孤独にやってきた人々が、経験のない調理を学び、同じような経験を持つ仲間と共に、もう一度人生を取り戻したいと働いている。藤藪と彼らの対話から見えてくるのは日本の様々な問題だ。若者たちの低い生への肯定感、コミュニケーション不全、希薄な人間関係‥。
“何度でも帰ってこれる場所になるといい‥”そう語る藤藪に共感し、中には受洗する者もいるという。そう考える藤藪。ただ、その場所は決して甘えるだけの場所ではない。親以上に厳しく、現実と向き合うことを求められることもある。心優しくも厳しい牧師と自殺未遂を経験した仲間たちの共同生活には、お互いに支え合う人々の物語があった。自殺問題の水際を見つめたドキュメンタリーは、社会に、そしてあなたに、何を訴えかけるのだろうか?

【STAFF】
監督・撮影・編集:加瀬澤充プロデューサー:煙草谷有希子
音響:菊池信之 音響助手:近藤崇生 宣伝協力:細谷隆広 宣伝デザイン:成瀬慧 
製作・配給・宣伝:ドキュメンタリージャパン、加瀬澤充
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)
独立行政法人 日本芸術文化振興会
2018年/100分/カラー/英題:A Step Forward

【監督紹介】加瀬澤充(かせざわ あつし)
大学卒業後、園舎と園庭のない幼稚園のドキュメンタリー映画「あおぞら」を制作。2002年に制作会社ドキュメンタリージャパンに参加。「オンリーワン」(NHK BS-1)「森人」(BS日本テレビ)「疾走!神楽男子」(NHK BSプレミアム)など数々のドキュメンタリー番組を演出する。
【公開時期】
2019年1月〜 ポレポレ東中野に公開。


○森達也さんコメント  映画監督、作家
命が動く。命が笑う。命が沈黙する。ある程度は手を差し伸べることができる。でもある程度だ。観ながら悩む。苦しくなる。でも目を離せない。

○平川克美さんコメント 文筆家、隣町珈琲店主
「助けてください」。この言葉の深さに釣り合う救済の言葉はあるのか。
何故、人は死にたいと思うのか。死にたい理由は山ほどあるが、生きていく
理由を見つけるのは難しい。いや、生きていく理由が欲しいと思うときに、
死はかれのすぐ近くまで忍び寄ってきているのかもしれない。