『SERGIO&SERGEI』(英題)が『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』として、12月1日(土)の映画の日に公開することが決定、この度、本作の監督である“エルネスト・ダラナス・セラーノ”監督よりメッセージが届きました。
1991年、東西冷戦時代の末期。キューバで暮らす大学教授のセルジオは、ある日宇宙ステーションに滞在中のソ連宇宙飛行士セルゲイからの無線を受信する。激動の時代ゆえ孤独と将来の不安を抱える2人は交信するうちに、国境も身分も宇宙も越えて親友になる。そんな時、ソ連が崩壊したことで事態は急展開、セルゲイは帰還無期限延長を宣告されてしまう。家族を心配する親友を救おうと、セルジオは予想外の大作戦を思いつく…。
 物語のモデルとなったのは、実在する元宇宙飛行士で“最後のソビエト連邦国民”と呼ばれたセルゲイ・クリカレフ。冷戦終結直後の奇跡のような出来事をファンタジックにアレンジしたのはキューバを代表するエルネスト・ダラナス・セラーノ監督。トロント国際映画祭ほか、世界の映画祭で観客の喝采を浴びた。
歴史に翻弄された2人の運命を交錯させた異色のハートフル・コメディです。

<エルネスト・ダラナス・セラーノ監督からのメッセージ>
1992年。経済的に依存していた社会主義圏が崩壊し、キューバは終わりの見えない経済危機に陥り、われわれ国民の生活は一変しました。『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』はこのように劇的な時代を背景とした風刺作品でありながらも、語り口はノスタルジックです。それは、この当時は私にとって幸せな時期だったからです。ちょうどこの時期に、私たち夫婦は次々と子宝に恵まれたのです。なんという〝絶好のタイミング〟でしょう! 私はせっせと舞台の台本を書き、毎月100本以上は書き上げました。それでも、増えていく家族を養っていくには、収入が足りません。いくつか他の仕事もやってみたものの、どれもうまくいかず、結局は自宅に秘密の蒸留酒製造所をつくって、〝文筆業〟の副業とするしか手立てがありませんでした。
ですから、セルジオは私にとって、非常に身近な人間です。マルクス主義の博士号を持っていても(モスクワに留学して取得)、子どもたちを養ってはいけないという現実に、突然セルジオは直面します。あの苦難の時代に私が強いられた辛苦を、セルジオも強いられるのです。私はあの頃の自分の生活をセルジオのストーリーを通して語り、われわれ国民が、キューバ現代史における最も過酷な時代を生き抜くために必死で編み出した、奇抜で無謀な秘密の方法をお見せしたかったのです。
私がセルゲイを知ったのは、キューバのテレビの番組紹介でした。セルゲイは、宇宙から帰還すると祖国はロシアに変わっていたというエピソードとともに、滅びゆくソ連の最後のヒーローとして紹介されていました。私がセルゲイの宇宙滞在が延長された真の理由を知ったのは、それから何年もあとのことです。セルゲイもセルジオと同様に、歴史に翻弄されていたのです。私はこの2人の運命を交錯させてはどうかと考え、そうする意義はあると感じました。

セルジオは空を見上げ、ミール宇宙ステーションに缶詰めになっているセルゲイのことを考えます。実際に会ったことはない友だちを、一体どうすれば宇宙ステーションから帰還させることができるのだろうと頭をしぼります。一方セルゲイは、宇宙ステーションの窓から外をながめ、故郷の惑星に思いを馳せます。宇宙連続滞在日数の世界記録を打ち立てたヒーローではなく、ただ1人の男として地球に戻り、妻と子どもたちを抱きしめたいだけなのです。
冷戦の終わりに、突然逆境に立たされた2人の男が空間を超えて出会い、人生が交錯していく。『セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!』は、そんな現実にはありえないような出来事を描いたコメディです。特殊効果をふんだんに使った超現実的な映画が大量に作られている今、違ったアプローチの作品を作る価値はあると思います。私が宇宙に強く惹かれているのは、宇宙は私にとって、デジタルなものではなく、人間的なものだからです。ミール宇宙ステーションには、華やかさはまったくありません。同様にわれわれの生活にも華やかさはなく、不寛容と独断と貧困があるだけです。そんな中で一体どうすれば、自分の周囲に美しさをみつけることができるのでしょう? 一体なぜ、国や民族としてのアイデンティティを再発見できるのではないかと、私たちは希望を抱きつづけているのでしょう? これらの質問の答えを、私はこの映画で示したいのです。


<STORY>
1991年、東西冷戦時代の末期。キューバで暮らす大学教授のセルジオは、ある日宇宙ステーションに滞在中のソ連宇宙飛行士セルゲイからの無線を受信する。激動の時代ゆえ孤独と将来の不安を抱える2人は交信するうちに、国境も身分も宇宙も越えて親友になる。そんな時、ソ連が崩壊したことで事態は急展開、セルゲイは帰還無期限延長を宣告されてしまう。家族を心配する親友を救おうと、セルジオはある奇策を思いつく…。

監督:エルネスト・ダラナス・セラーノ『ビヘイビア』
出演:トーマス・カオ(セルジオ)、ヘクター・ノア(セルゲイ)、ロン・パールマン
製作:スペイン・キューバ/2017年/93 分/シネスコ/原題:SERGIO & SERGEI/言語:スペイン語・ロシア語・英語
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