この度、10月4日〜14日に開催されていた第51回シッチェス・カタロニア国際映画祭にて、『斬、』の石川忠が最優秀音楽賞を受賞した。シッチェス・カタロニア国際映画祭は毎年10月にスペイン・バルセロナ近郊のリゾート地シッチェスで開催される「世界三大ファンタスティック映画祭」のひとつ。ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門、トロント国際映画祭、釜山国際映画祭と世界中の映画祭で熱狂的に迎え入れられた『斬、』が、またひとつ歴史ある映画祭で高い評価を受けた。
石川忠は『鉄男』(89)以降、ほとんどの塚本作品を手がけ、『双生児』(99)でもシッチェス・カタロニア国際映画祭にて、ベスト・オリジナル・サウンド・トラックを受賞している。石川は『斬、』の本編編集中の2017年12月に突然この世を去り、塚本監督が自から過去の石川のCD、CD化されていない作品データ、 さらには石川の自宅にあった曲の断片を全て聞き、映像に合わせてゆく作業を行って完成させた。

太平の世が揺らぎはじめた幕末。人を斬ることに苦悩する一人の侍。生と暴力の本質を問う。
 250年にわたり平和が続いてきた国内が、開国するか否かで大きく揺れ動いていた江戸時代末期。貧窮して藩を離れ、農村で手伝いをしている浪人の杢之進(池松壮亮)は、隣人のゆう(蒼井優)やその弟・市助(前田隆成)たちと、迫り来る時代の変革を感じつつも穏やかに暮らしていた。ある日、剣の達人である澤村(塚本晋也)が現れ、杢之進の腕を見込んで京都の動乱に参戦しようと誘いをかける。旅立つ日が近づくなか、無頼者(中村達也)たちが村に流れてくる・・・・。時代の波に翻弄されながらも、人を斬ることに疑問をもつ侍と彼に関わる人々を通して、生と暴力の問題に迫る。観る者の心に刃(ヤイバ)を突きつける衝撃作。
世界中に熱狂的なファンを持つ塚本晋也が挑む初の時代劇
 『鉄男』、『六月の蛇』など、海外からも高い評価を受ける塚本晋也が、戦争の恐怖をあぶり出した『野火』を経て、さらに時代を遡り初の時代劇に挑んだ。監督、出演、脚本、撮影、編集、製作を務めた完全オリジナルで、その唯一無二の世界観を爆発させた。

日本映画界を牽引する実力派の共演 池松壮亮×蒼井優
 武士としての本分を果たしたいと思いながらも、刀を抜くことに悩み苦しむ侍を渾身の力で演じたのは池松壮亮。『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』や、『万引き家族』など話題作への出演が続いている。農家の娘を演じるのは『彼女がその名を知らない鳥たち』や山田洋次監督作品で活躍し、日本アカデミー賞に4度輝いた蒼井優。不穏な時代に精一杯生きる娘を凛とした美しさで体現。共に本作で初めて敬愛する塚本作品への参加を果たした池松と蒼井の演技合戦は圧巻だ。

監督、脚本、撮影、編集、製作:塚本晋也 出演:池松壮亮、蒼井優、中村達也、前田隆成、塚本晋也
2018年/日本/80分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー 製作:海獣シアター/配給:新日本映画社 
(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER 【公式サイト】zan-movie.com

11月24日(土)よりユーロスペースほか全国公開