10月9日(火)、都内千代田区にあるインスティトゥト・セルバンテス東京にて、チェロ・アルバレス=ステイリ監督の作品『沈黙の砂:勇気の波』の上映会およびトークが行われました。チェロは性搾取を生き抜いた女性たちと関わる中でメキシコ出身のバージニア・アイザイアスという女性と出会い、彼女の実話にインスピレーションを受けてこのドキュメンタリーを制作しました。バージニアはメキシコのチアパス滞在中に誘拐され、人身売買の被害者となり売春を強制されたのです。このドキュメンタリーは、世界中の女性の人生を支配する沈黙を破り、声を上げるよう後押しすることを目的としています。

スペイン出身、カリフォルニア在住のジャーナリスト兼ドキュメンタリー作家であるチェロ・アルバレス=ステイリ氏は、約20年間にわたりアジアやアメリカに広がる性的搾取と人身売買の犯罪を追究してきました。欧州経済共同体の奨学金により1990年に来日し、4年間にわたる東京での滞在の中では週刊インターナショナル・プレス初の編集者に就任。また、NHK エンタープライズのドキュメンタリー制作に携わるとともに、スペインの日刊紙エル・ディアリオの東京支局特派員としても活躍しました。制作種の問題に関する短編ドキュメンタリーをさまざま制作し、数多くの賞の受賞歴を誇ります。

映画上映の後は観客との対話や質疑応答が行われ、スペイン、日本、アメリカ合衆国での在住経験をもつチェロは各地域で感じた違いについて次のように語ります。「残念ながら、性搾取や性暴力の問題は現状として世界各地に広がっています。しかし、スペインを含むヨーロッパやアメリカでは、こういった問題に対する取り組みが非常に盛んに行われているように感じています。一方、日本、中国、韓国といったアジア諸国も見てきましたが、まだこのようなテーマはタブー扱いされているという印象を受けました。日本のような先進国でも、このような点においてはまだまだ取り組むべきことがたくさんあるでしょう。このドキュメンタリーでは、こういった「沈黙の文化」を破ることを目的としています。私たちには、そのような取り組みを行う社会的責任があるのではないでしょうか。」

今回の上映会には、性暴力に対する取り組みを行う組織「ぱっぷす」のメンバーも観客として参加し、日本における性暴力の現状に言及しつつ監督との対話を実現しました。日本にはセクハラを取り締まる法律がないことや、痴漢行為が法的に単なる「迷惑行為」として取り扱われているという現状を、会場一同が再認識することとなりました。

このドキュメンタリー作品の日本での上映は今回が初となり、次回は広島市立大学にて上映される予定です。


◆チェロ・アルバレス=ステイリ氏受賞歴
2018年 ポルト国際女性映画祭 「女性の戦いと権利」賞
2017年 第59回南カリフォルニア報道アワード(ロサンゼルスクラブ)長編ドキュメンタリー優秀賞
2017年 WIFTS(国際女性映画テレビ・ショーケース)人権ドキュメンタリー優秀賞
2017年 カリフォルニア ビバリーヒルズ 第32回イメージアワード 優秀ドキュメンタリーノミネート
2017年 スペインバルセロナ ファダ文化賞 唯一の最終選考作品
2017年 ブラジルリオデジャネイロ ブラジル国際映画祭 優秀ドキュメンタリー佳作
2017年 エクアドル グアヤキル国際映画祭 優秀賞およびイグアナ金賞
2016年 カリフォルニア マリブ国際映画祭 優秀賞
2016年 カリフォルニア マリブ国際映画祭 オーディエンス賞
2016年 ロサンゼルス Awareness Film Festival 優秀長編ドキュメンタリー審査員賞
2016年 マラガ映画祭 女性の権利を守る作品部門 一等およびビスナガ銀賞