この度、第70回カンヌ国際映画祭にてルイユ・ドール(最優秀ドキュメンタリー賞)を受賞した作品『顔たち、ところどころ』を2018年9月15日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか、全国順次公開する運びとなりました。

本作は、ヌーヴェルヴァーグの祖母とも呼ばれる女性映画監督の先駆け”アニエス・ヴァルダ”と 、世界中から注目を浴びる写真家・アーティスト”JR”による共同監督作。年の差54歳のふたりがフランス田舎町を北から南へと旅をし、人々と出会い、友情をはぐくむ、ロード・ムービースタイルのドキュメンタリー映画です。

この度、本作のプロデュ―サーを務めたジュリー・ガイエ氏のインタビューを解禁いたします。
ジュリー・ガイエ氏はアニエス・ヴァルダ 監督『 百一夜 』に出演し 『 エイト・タイムズ・アップ』では東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞するなど女優としての活躍の他、昨今では映画のプロデュ―スも手掛けています。
本作の他 『RAW 少女のめざめ』(パルコ配給)、 今週末8月31日(金)より公開の『判決、ふたつの希望』(ロングライド配給)などのプロデュ―ス、今年配給会社ルージュ・インターナショナルを立ち上げました。

更に新ビジュアルも解禁!
「旅にでましょう。あなたを、忘れないように」という新たなキャッチコピーに添えられた2人の食事シーンは、これから始まる旅のドラマ予感を感じさせるデザインとなっています。

――アニエス・ヴァルダとの出会い
私がまだ若き女優だったころ、ヴァルダが監督した、映画発明百年を記念した映画『百一夜』に出演しました。彼女と色々と交流しているうちに、ブニュエルをはじめ、私の知らなかったいろんな作品を発見させてくれました。その後、私の監督作である『シネアスト』(日本未公開)にも出てもらったり…。私にとって彼女は家族のようなものです。女性としての生き方、フェミニストとしての精神を彼女から学んだし、市場に媚びることのない映画をつくるための闘いがどのようなものかを教えてくれました。彼女との出会いによって、私は映画のプロデューサーになろうと思ったんです。

――本作をプロデュースしたきっかけ
当初この映画は、ヴァルダの娘のロザリーが一人でプロデュースする予定でした。でもファイナンスの問題でなかなかそれが難しい状況だったのです。私はとても驚きました。「ヴァルダのような大監督でもお金を集めることがこんなに難しいの?!」と。結局、クラウドファンディングを利用して資金を集めました。シナリオを見た段階ではどんな作品になるかわからないという不安要素はありますが、実際問題、女性映画監督にはやはりガラスの天井があると感じています。小さな予算は付きますが、大規模な予算の作品を作るのは難しいです。私はプロデューサーの仕事は女優の仕事と同じで、監督の頭に入っていくことだと思います。監督がやりたいことを通訳していく。そのために、配給や映画祭を選んだり、お金集めだけでなく、外部からの目線を監督に伝える仕事だと思います。

――本作の魅力
70年に、ヴァルダが撮った『Mur mur』というストリートアートの映画を観ると、やっぱり彼女は当時から日常の中で生きている人たちとの会話・心の交流というものを大切にする人なんだと実感しました。JRも全くその方向にいるアーティストですよね。すごく寛容な心を持っていて、黒のサングラスの裏にとても繊細な「人と触れ合いたい」という気持ちを持っている人。元々、二人とも写真を撮るというところで通じ合うものがあったんですけれども、「継承する」というテーマを持った映画でもあるんです。目が見えなくなってきているヴァルダが、JRと一緒に写真を撮り残していく。「もう2度とここへは来れないかもしれない」と思いながら、これまで背負ってきた色々をJRに受け継いでいく。舞台は「フランスの田舎」ですが、どこの世界にも通じる物語です。「人々とふれあうこと」についての、普遍的で誠実な映画だと思います。

―― あなたにとってヴァルダとは?
「私は監督であるけれども、1人の女性であり、母である」ということを常に強調してきた人。ヴァルダが昔、撮影現場に子どもを連れてきた事を咎められた時に“ 映画は私にとって重要なものだけど、同時に私の息子は私の人生の一部。だからここにいてあたりまえ” とキッパリ答えたというエピソードもあります。自分の人生を最優先して、プライベートも映画の中に取り込んでしまう。彼女の人生は彼女のクリエイターとしての仕事に反映されているんですよね。私は仕事は仕事、プライベートはプライベート、と分けて考えてしまいがちですが、ヴァルダのこの姿勢はほんとうにすごいと思います。私は彼女からフェミニストの精神を受け継いだと言いましたが、彼女と一緒に作品を作ってからは、「闘う女」ではなく「諦めない女」になったと思います。


ジュリー・ガイエ

フランス・パリ出身。大学で演劇やダンスを学んだ後、プロの女優としてデビュー。アニエス・ヴァルダ監督の『 百一夜 』(95)では、ミシェル・ピッコリ扮するムッシュ・シネマの聞き手役に抜てきされる。以降、仏国内の映画・TVドラマの双方で活躍している 。プロデュース作品は本作『顏たち、ところどころ』の他『RAW 少女のめざめ』(16)、8月公開予定の『判決、ふたつの希望』(17)など。本年のカンヌ国際映画祭で、配給会社を立ち上げたことを発表した。

 

映画『顔たち、ところどころ』作品情報

映画監督アニエス・ヴァルダと、写真家でアーティストのJR。
年の差54歳の二人が、フランスの田舎街を旅しながら人々とふれあい育む、でこぼこで優しい友情。

「ヌーヴェルヴァーグの祖母」とも呼ばれる女性映画監督の先駆で、カンヌ、アカデミー両賞で名誉賞を受賞しているアニエス・ヴァルダ。そして、大都市から紛争地帯、様々な場所で、そこに住む人々の大きなポートレートを貼り出すアートプロジェクトで知られるアーティストJR(ジェイアール)。
『顔たち、ところどころ 』は、そんなふたりがフランスの田舎街を旅しながら、人々とふれあい、作品を一緒に作り残していくロード・ムービースタイルのハートウォーミングなドキュメンタリー。

サングラスを決して取ろうとしないJRにやきもきし、ゴダールが『はなればなれに』で作ったルーブル美術館の最短見学記録を塗り替えたり、時に歌い、笑いながら、でこぼこな二人旅は続く。炭鉱労働者の村に一人で住む女性、ヤギの角を切らずに飼育することを信条とする養牧者、港湾労働者の妻たち、廃墟の村でピクニック、思い出の海岸…フランスの田舎街をめぐり出会ったのは、美しい風景と、たくさんの顔、顔、顔。「JRは願いを叶えてくれた。人と出会い顔を撮ることだ。これなら皆を忘れない」とつぶやくアニエスはつぶやく。願いを叶えてくれたお礼にと、彼女はJRにあるプレゼントをしようとするが…。

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第90回 アカデミー賞 ドキュメンタリー部門 ノミネート
第70回 カンヌ国際映画祭 ルイユ・ドール(最優秀ドキュメンタリー賞)受賞
第42回 トロント国際映画祭 観客賞ドキュメンタリー部門受賞

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映画『顔たち、ところどころ』
監督・脚本・ナレーション:アニエス・ヴァルダ、JR
出演:アニエス・ヴァルダ、JR
音楽:マチュー・シェディッド(-M-)
字幕翻訳: 寺尾次郎
配給・宣伝:アップリンク
(2017年/フランス/89分/1:1.85/5.1ch/DCP)

【タイトル】
顔たち、ところどころ

【公開表記】
2018年9月15日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか全国順次公開

【コピーライト】
© Agnès Varda – JR – Ciné-Tamaris – Social Animals 2016.

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