平成30年8月15日。73回目の終戦記念日である今日、少し立ち止まって考えてみませんか。
「平和を達成する」という意味をもつ平成の年号が、もうすぐ終わります。本作『十年Ten Years Japan』が描くのは、新しい年号になって10年目の未来。私たちがまだ見たことのない日本。20代から40代の5人の新鋭監督がテーマに選んだのは、高齢化、AI教育、デジタル社会、原発、徴兵制―。それぞれの監督が今の日本が抱える問題を見つめて、描いた5つの未来。そこから何がみえてくるのか。

なかでもラストを飾る石川慶監督の『美しい国』で描かれるのが、徴兵制が施行された日本である。主人公・渡邊(太賀)は、徴兵制を公示するポスターを手掛ける広告代理店の社員。デザインを一新するという防衛省の意向を、大物デザイナーの天達(木野花)に伝えるという大役を先輩社員に振られてしまい…。
平和である今の日本において、‟徴兵制“という言葉は遠いものと感じる。しかし、70数年前の日本には徴兵制があり、第二次世界大戦終盤には、学徒出陣の名のもとに大学生さえも戦地に出征していたのも事実である。
日本が再び、そのような事態となったら…。石川監督が、10年後の会社員の日常の仕事のなかに徴兵制を描いたのは、なぜだったのでしょうか。コメントを寄せてもらいました。

【石川慶監督コメント】
十年後、83歳以下の人は誰も戦争を知らない時代がやってきます。実質、戦争を覚えている人が社会からほとんどいなくなると言っても過言ではないのでしょう。話を聞きたくても、意見を仰ぎたくても、もうその人たちはいないのです。そう思うと、僕らはけっこう重要な転換期に生きている気がするし、たぶんとても重要な責任を負っているんだと感じます。でも僕は、次の世代に渡すべきバトンを何も持っていないことにただ愕然としてしまいます。“もう遅い / まだ間に合う”という香港版のキャッチコピーを重く受け止めつつ、“まだ間に合う”という思いを込めてこの短編を撮りました。

1977年6月20日生まれ。東北大学物理学科卒業後、ポーランド国立映画大学で演出を学ぶ。2016年、妻夫木聡、満島ひかり主演『愚行録』(2017年公開)がヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に選出され、長編映画デビューを果たした。

平成最後の終戦記念日。少し立ち止まって、今ある平和について、10年後の日本について、考えてみませんか。
本作品の公開初日が、11月3日(土)に決定いたしました。
作品詳細は→http://tenyearsjapan.com/
『十年 Ten Years Japan』
エグゼクティブプロデューサー:是枝裕和 監督・脚本:早川千絵/木下雄介/津野愛/藤村明世/石川慶
出演:杉咲花/太賀/川口覚/池脇千鶴/國村隼 ほか
2018/日本/カラー/99分/ビスタ&シネスコサイズ/5.1ch ©2018 ‟Ten Years Japan” Film Partners