現在、世界中を虜にした、あるフラメンコダンサー、ラ・チャナの波乱の人生を描いたドキュメンタリー映画『ラ・チャナ』は、ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほかにて絶賛公開中です。

この作品の公開を記念して、アップリンク渋谷では定例で行われている、文筆家・五所純子さんが映画鑑賞した人に向けてお薦めする書籍を紹介するイベントにて映画『ラ・チャナ』をテーマに開催されることが決定いたしました。

映画『ラ・チャナ』×五所純子(文筆家)

■日時:2018年7月29日(日)12:25の回上映後

■会場:アップリンク渋谷

■ゲスト:五所純子(文筆家)

<プロフィール>

五所純子(ごしょ・じゅんこ)

文筆家。エッセイと創作と批評の間をぬうような言語で雑誌・書籍に寄稿多数。

著書『スカトロジー・フルーツ』(天然文庫)、共著『心が疲れたときに観る映画 「気分」に寄り添う映画ガイド』(立東舎)など。

i-D Japan webにて「映画の平行線」を月永理絵と連載中。

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現在 71 歳、あるフラメンコダンサー”ラ・チャナ”の波乱に満ちた人生と不屈の精神、そして情熱を描いたドキュメンタリー映画『ラ・チャナ』が、7月21日(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク渋谷ほかにて絶賛公開中だ。

この作品の公開を記念して、アップリンク渋谷では定例で行われている、文筆家・五所純子さんが映画鑑賞した人に向けてお薦めする書籍を紹介するイベントにて映画『ラ・チャナ』をテーマに開催されることが決定した。

今回テーマとなる映画『ラ・チャナ』は、結婚、出産、キャリアの頂点での引退、男性社会で女性が活躍することの難しさ、家庭内暴力、そしてどん底からの復帰と、人生を共に歩む運命の相手との出会い、迫りくる老い——ラ・チャナの激動の人生 丁寧に解き明かす作品。

7月8日、アップリンク渋谷で開催された同イベントでは、パレスチナ・ガザ地区出身の双子タルザン&アラブ・ナサール監督によるガザの小さな美容室を舞台にした映画『ガザの美容室』が主題に据えられた。五所さんは、美容室に集まり順番を「待つ」女性たちの会話で映画を満たした本作を「美容室を戦場として、そこに居合わせた女性たちとともに、“女の顔”をした戦争を描いた映画である」と言及し、下記5作を紹介した。

<書籍リスト>

1)『戦争は女の顔をしていない』著:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(岩波書店)
2)『呪われた愛』著:ロサリオ・フェレ(現代企画室)
3)『霊と女たち』著:杉浦勉(インスクリプト)
4)『屋根裏の仏さま』著:ジュリー ・オオツカ(新潮社)
5)『わたしの「女工哀史」』著:高井としを(岩波文庫)

これらの書籍に関する解説とそれを縁取る五所さんの言葉たちは、それまでに語られた映画『ガザの美容室』についての言葉からは見えてこない、史実やわたしたちが生きる世界を構築するものたちを新しく提示した。

今回のイベントでは、映画『ラ・チャナ』をどのような言葉に置き換え、またどのような作品に繋がっていくのか。参考までに、前回のイベントで紹介された書籍と五所さんによる解説を一部、以下に紹介する。

「美容室を戦場として、そこに居合わせた女性たちとともに、
“女の顔”をした戦争を描いたのが『ガザの美容室』」
『戦争は女の顔をしていない』著:スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(岩波書店)

『戦争は女の顔をしていない』という本著の題名を五所さんは「これはあくまで比喩」「銃後の妻、銃後の婦女子、銃後の戦争という言葉がある。『戦争は女の顔をしていない』というタイトルは、戦争をとらえるときに“男の顔”と“女の顔”が描き出せるという意味」であり、本質的に男が戦争を好み、女が平和を好むことを意味するわけではないと解説。

「取るに足らないおしゃべりから、歴史をくつがえす」
『呪われた愛』著:ロサリオ・フェレ(現代企画室)

中学生・高校生の頃に教科書に登場する女性の人物が卑弥呼と北条政子と樋口一葉だけだったことに驚愕したという五所さん。 「女性の語りは、物語の中心にも歴史の焦点にもなりにくかった」

しかし、タルザン&アラブ・ナサール監督は『ガザの美容室』という映画を、美容室に集まった女たちの会話で満たした。美容室で女性たちは夫の愚痴を言い、恋愛の秘密を語り、夫婦生活の嘘をつき、訊かれてもない身の上話をはじめ、人を品評しては悪口をささやく。他愛ないおしゃべりをする。ロサリオ・フェレ著作の『呪われた愛』は、 女の会話から世界をとらえるという手法が本作と共通する小説である。

「『ガザの美容室』は戦場に閉じ込められた女性たちのおしゃべり映画。
『屋根裏の仏さま』は歴史に散らばった女性たちの語りを組みなおす小説」
『屋根裏の仏さま』著:ジュリー ・オオツカ(新潮社)

この小説は一人称複数形の”わたしたち”で語りが進められる”写真花嫁”の話だ。「この作品はオーラルヒストリーでは汲みきれない心情が描かれている。実在した彼女たちの主語を乗っ取り、複数の人びとを一つにまとめあげることは、冒涜にもなりかねないが、フィクションでしかなしえない構想力がある。あくまで虚構である小説が迫真性をもつ時空間を作り出すことができることを証明するような小説」

「女工哀史」の著者、細井和喜蔵の妻、高井としをによる自伝
和喜蔵が描いた女工=悲惨、悲惨=女工というイメージから女工たちを解放した作品
『わたしの「女工哀史」』著:高井としを (岩波文庫)

「『わたしの「女工哀史」』を読むと女性たちがとっても楽しそうなんです。私が好きなエピソードは、女性たちが労働争議をおこして、社員たちが食べているようなカレーやカツ丼を私たちにも食わせろと訴えるエピソード。読んでいて、彼女たちがカレーを食べるスプーンのカチカチっという音が聞こえてきそう」

高井としをは、本作を通して、夫の細井和喜蔵が世間に与えた「女工=悲惨」という一面的なイメージから女工たちを解放した。この効果は、「映画『ガザの美容室』が、遠くから見れば、内紛地帯、戦争状態にある被害者として描出されてしまいがちなガザの女性たちに、おしゃべり・美容を与えた」点と共通している。


世界中の映画祭で観客賞を受賞!!
アムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭 観客賞受賞
ブダペスト国際ドキュメンタリー映画祭 観客賞受賞
ガウディ賞 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
フェロス賞 最優秀ドキュメンタリー賞受賞
ドック・オブ・ザ・ベイ映画祭 観客賞&SADE賞受賞
レ・ボーチ・デル・インチエスタ 観客賞受賞
ヨーロッパ映画賞 ドキュメンタリー部門ノミネート
カナディアン・ドキュメンタリー国際映画祭 観客賞ノミネート

監督:ルツィア・ストイェヴィッチ
出演:ラ・チャナ、アントニオ・カナーレス、カリメ・アマヤ、ほか
(2016年/スペイン、アイスランド、アメリカ/86分/カラー、モノクロ/16:9)

提供・配給・宣伝:アップリンク
提供・宣伝:ピカフィルム

公式HP:http://www.uplink.co.jp/lachana
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