瀬々敬久監督が『ヘヴンズ ストーリー』(10)から8年振りに放つオリジナル企画、アナーキー青春群像劇『菊とギロチン』(7月7日よりテアトル新宿ほか全国順次公開)の小説版、『菊とギロチン―やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』。映画の公開に合わせ、7月7日よりテアトル新宿で先行発売が決定しました。

瀬々敬久監督の三十年越しの企画として、ついに完成した『菊とギロチン』。舞台は大正末期、関東大震災直後の日本。混沌とした情勢の中、急速に不寛容な社会へとむかう時代。かつて日本全国で「女相撲」が興行されていた史実に基づき、女相撲の一座と実在したアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たちが出会い、ともに「自由な世界に生きる」夢をみて、それぞれの闘いに挑むオリジナルストーリーだ。そしてこのたび、その小説版となる『菊とギロチン―やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』が映画公開に合わせてタバブックスより刊行が決定。7月7日より東京メイン館であるテアトル新宿ほか一部上映館での先行発売が決定しました

ノベライズ本というと、映画の脚本をベースに映画のストーリーに沿ってまとめるのが主流だが、なんと今回の執筆者は、人気の若手政治学者・栗原康。映画にも登場する明治・大正時代の代表的アナキスト大杉栄の評伝「『大杉栄伝』(夜光社)で第五回いける本大賞を受賞し、その恋人だった伊藤野枝を書いた『村に火をつけ、白痴になれ 伊藤野枝伝』(岩波書店)が若い女性読者の間で話題になり、新自由主義の屈折した労働倫理を糾弾する爆笑痛快現代社会論『はたらかないで、たらふく食べたい―「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)でも注目を集め、さらには「デモよりすごい盆踊り大会がある」と盆踊りにハマって、盆踊りついてメディアの取材を受けるなど縦横無尽のスタンスで活躍している。そんな栗原が書き下ろした『菊とギロチン―やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』は国粋主義、貧困、格差など、映画の背景によりディープに迫る内容。本離れした若者でも一気に読める著者独特のユニークな憑依文体で従来のノベライズ本のイメージを打ち破る、まさに“風穴を開ける”面白さ。さらに本書には、『菊とギロチン』の瀬々敬久監督による映画の後日談を描く短編小説『その後の菊とギロチン』も所収。映画の主人公・花菊の人生を、その娘で今や老境の敏江が振り返るという形式で、なんと戦後史が丸ごと放り込まれ、「瀬々監督ついに小説家デビュー!」と叫びたくなる面白さだ。このたび著者・栗原康、瀬々敬久監督のコメントが到着しました。

■書籍情報
『菊とギロチン―やるならいましかねえ、いつだっていましかねえ』
タバブックス刊
著 栗原康 原作 瀬々敬久・相澤虎之助
予価 2200 円+税 発売 2018 年 7 月上旬予定


■著者・栗原康コメント

女はよわいから、男にまもってもらえ? だからなにをされても、妻は夫につくさなきゃいけない? おつとめ、ご奉仕、奴隷かよ。いまからおよそ一〇〇年まえ、女たちが家庭をケトバし、女相撲にとびこんだ。ドスコイ、ドスコイ。女たちがホンキでとりみだす。もうなにが男で女なのか、なにがつよくてよわいのか、なんもかんもわかんなくなるくらい、ぶっとんだことをやりはじめる。そうだ、女力士たちよ、つよさの土俵をふっとばせ。怨念と屈辱にまみれたその身体を熱いダイナマイトにかえて、敵のドテッパラにブチこんでやれ。おら、つよぐなりでえ。爆弾の想像力を生きてゆきたい。パンパーーン!

栗原康(くりはら・やすし)
1979年、埼玉県生まれ。現在、東北芸術工科大学非常勤講師。専門は、アナキズム。長渕剛、ビール、河内音頭が好き。著書に、『大杉栄伝』(夜光社)、『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)、『現代暴力論』(角川新書)、『村に火をつけ、白痴になれ:伊藤野枝伝』(岩波書店)、『死してなお踊れ:一遍上人伝』(河出書房新社)などがある。