2007年のデビュー作『タネ』からコンビを組み、以降旺盛に作品を発表し続けてきた大力拓哉と三浦崇志。

イメージフォーラムフィルムフェスティバル2009で大賞を受賞し、第62回ロカルノ国際映画祭コンペティション部門に招待された『ニコトコ島』(08)は、細緻で大胆な構図によるモノクロームのビジュアルが印象的な作品。監督ら自身が出演し、大阪弁の不可思議なモノローグが続く中、、三人の男がフェリーに乗って謎の島を旅するという物語である。この度は、解禁された予告編では、登場人物たちが“山”とは何なのかを巡って一見、他愛の無い言葉のやり取りをした後に「僕ら、もしかして何にも分かってないんちゃうん」というセリフが映画全体を貫く通奏低音のように聴こえてくる。
続く『石と歌とペタ』は第7回ローマ国際映画祭で招待上映された作品。『ニコトコ島』とは一転、軽快な音楽と、ビビッドなカラー映像のセンスが光る。物語は「石」と「歌」、そして全く正体不明の「ペタ」と名乗る者たちが“どこかへ向かう”ロードムービー。「石」「歌」「ペタ」と名乗ってはいるものの、やはり監督自身らがそのまま登場している。森に行き、草原を走り、まるで子供のように遊び続ける彼らはどこに向かっていくのか? 「死ぬときは死ぬもんなあ。もっと遊ばななあ」という劇中の言葉からも分かる通り、本作は彼らなりの青春映画なのかもしれない。
海外の高い評価にもかかわらず国内では映画祭以外ほとんど上映されてこなかった彼らの作品がついに一般公開となる。世界でも類を見ないオリジナリティを発揮し続けている大力拓哉&三浦崇志の作品は、引き延ばされた無為の時間に遊びながら、「ひとはなぜ生きるのか」「死とは何か」という根源的な問いを、いたって軽やかに問い続ける。
今回、予告編解禁に併せて解禁されたメインビジュアルを手がけたのは、80代より「ガロ」「ヘヴン」「クイック・ジャパン」「ユリイカ」など数多くの雑誌デザインの仕事も印象的な羽良多平吉氏。二人の作品をかねてより高く評価してきた羽良多氏たっての希望で今回のコラボが実現した。ぜひ映画公開を楽しみにお待ち頂きたい。

「デジタル」とか「パソコン」の時代に、すごく手作り感あふれる映像で、一つの画面の中にちっちゃーな事から、大きな事まで、くだらなーい事から、大切な深ーい事まで入っていて、それがユーモラスに語られて長い時間飽きさせない。素晴らしいとおもいましたね。新鮮なスタイルの作品で、「オレもああいうの作ってみたい」と思う人がこれからどんどんでてきそうな、新しい可能性を感じました。(『ニコトコ島』へのコメントより) ― しりあがり寿(漫画家)
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『ニコトコ島』も『石と歌とペタ』も、出てくる三人組は生半可なこどもみたい。もしくは、生半可な原始人。退屈さとたわむれる、ということだけをしている。それだけをして生きているような、夢を造形した映画。わたしが彼らから目が離せなかったのは、たぶん羨ましかったからなんだろう。
意味の無い、目的の無い、価値の無い、その自由。
彼らの生半可さは挑発的で、かつ魅惑的だ。 ― 岡田利規(演劇作家/小説家/チェルフィッチュ代表)

シアターイメージフォーラムにて10月14日(土)より公開!以降全国順次