芸術選奨文部科学大臣賞(「砦なき者」2005年)、紫綬褒章(2007年)、旭日小綬章(2013年)とドラマ界で数々の賞を受賞した名匠・鶴橋康夫。その腕は、映画界でも如何なく発揮され、昨年大ヒットを記録した『後妻業の女』(2016)と人間の持つ業を時には刹那的に、時には喜劇的に表現し、銀幕の世界でも活躍の幅を広げています。そして今回、映像の魔術師の異名を持つ鶴橋が約40年、映画化を熱望し続けた時代劇映画『のみとり侍』の製作が決定しました。

原作は、綿密な時代考証を基にユーモアを交え当時の社会を表現する歴史小説の第一人者・小松重男の傑作短篇集「蚤とり侍」。その内の人気エピソードを基に鶴橋自身が物語を再構築し、監督・脚本を一手に担います。

作中では、江戸時代に実在した 猫の“のみとり”稼業を中心に描かれる本作。表向きは文字通り、町を練り歩き、呼ばれた家庭が飼う猫の“のみ”を取って回る商売。但し、この映画における“のみとり”稼業とは<床>で女性に愛をお届けする裏稼業。『後妻業の女』では、後妻となり保険金詐欺を画策する女性を中心に人間の抱える闇をポップに描き出した鶴橋が、本作では、江戸を舞台に<床>で活躍する侍を通じ、現代にも通じる義理や人情を“鶴橋節”満載で描き出します。

 

主演を務めるのは、ドラマ「天国と地獄」(2007)以来10年振りに鶴橋作品に出演する阿部寛。(映画鶴橋組には初参加となります。)「新参者」シリーズ、「下町ロケット」(2015)、『海よりもまだ深く』(2016)など幅広い演技で支持されている阿部寛が、『テルマエ・ロマエ』で見せた古代ローマ人から一変、『のみとり侍』では、“のみとり”になってしまう越後長岡エリート藩士・小林寛之(ひろの)進(しん)に体当たりで挑みます。 また“のみとり”稼業の映像化故に濡れ場シーンも伴う本作の出演者には、新旧鶴橋組オールスターキャストが集結! 寺島しのぶ、豊川悦司、斎藤工、風間杜夫、大竹しのぶ、前田敦子といった演技派出演陣が、鶴橋の為に“一肌脱いで”集結しました。さらに落語界からは、『明日があるさ THE MOVIE』(2002)以来15年振りの映画出演となる桂文枝が、歴史上実在の人物・田沼意次に扮し出演が決定。滑稽ながらも愛おしい“いとをかし”な人々を演じます。前代未聞!侍が巻き起こす“床の間”の戦いの火蓋が切って落とされる!? 映画『のみとり侍』は、2018年公開となります。

鶴橋康夫コメント
40年前、偶然『蚤とり侍』の小説を手にして、「のみとりって?」。猫の蚤を取るとみせかけ、実は裏の商売をする主人公に興味がわいた。
中間管理職である越後長岡藩・勘定方書き役の小林寛之進が、生真面目すぎるあまりに殿の怒りを買って藩を追い出され、江戸の人々に助けられながら、世の中の激動に飲み込まれていく。そこに現代のサラリーマンに重なる部分を感じ、「不条理でばかばかしくて笑える映画をつくってみるのはどうだろう?」と。
主人公・小林寛之進は、悲劇を喜劇に、不条理をロマンチックに演じ、哀愁の男っぽさを表現できる阿部寛さんに託すことにした。
人生、自分の思い通りにはいかない。だけどみんなそれぞれ、一生懸命で、真面目で、おっちょこちょいで、面白い。そんな悲喜こもごもを観る人にクスクスと笑ってもらえたら最高です。

阿部寛コメント
『のみとり侍』というタイトルを聞いただけで、ほろっとわくわくしたし、出てくる登場人物たちが、一人ひとりが、人間味豊かで、クスっと笑えて、泣ける脚本だなと思いました。
鶴橋組常連の方々との共演も楽しみです。色気があって、チャーミングで・・・見ているだけで、きっと引き込まれるでしょうし、それに応えられる芝居をしないと気の引き締まる思いです。
鶴橋監督とはずっとご一緒したかったので、こうして「のみとり侍」としてオファー頂けたことは、夢が叶ったかのように嬉しく、歴史ある京都の地で、こうした作品を作っていけることにすごく幸せを感じています。観た人が、“のみとり”をされたかのように気持ちのいい時代劇になればいいなと思っています。

寺島しのぶコメント
『愛の流刑地』以来又鶴橋監督とお仕事ができることが嬉しくてなりません。
とても艶っぽい愛おしい女性なのでそう存在できるようにしたいものです。
阿部さんとも舞台「近松心中物語」の共演以来なので久々の再会を楽しみにしております

豊川悦司コメント
鶴橋康夫監督の最新作にて最高傑作!
中高年の、中高年による、中高年のための、痛快人情喜劇娯楽時代劇!
日本人は、日本の国は、こんなにも素朴で温かみに溢れていた!
絶賛撮影中!乞うご期待!

桂文枝コメント
映画は久しぶりです。
時代劇も、今回のような実在の人物を演じるのも、
田沼意次という、比類なき政治家を演じるのも、とにかく歴史書を読み漁ってと
思っていたら、監督さんから、読まないでと言われたので、気が楽に、脚本が面白いので、監督さんのイメージに合うように、演じられたらと、思っています。

臼井央 製作プロデューサー(東宝)コメント
「後妻業の女」公開後、鶴橋監督の次回作を探していた所、鶴橋監督ご自身が40年来温められていた傑作時代劇の企画を提案頂きました。そこには、現代のサラリーマンに通ずる身分社会が描かれ、その中に真っ直ぐすぎるくらいに立つ爽快な主人公がいました。人情溢れる個性豊かなキャラクター達が、朗らかにも必死に生きていました。脚本を読むと、何度も声を出して笑ってしまいました。一も二もなく製作を決定しまして、
阿部寛さんはじめ熟練の役者の皆さんが続々と鶴橋組に集結してくださいました。
酸いも甘いも知り尽くし、苦くも楽しい人生をお送りの「大人」の皆様にこそ味わえる、
これぞ「鶴橋新喜劇」をお届けできると確信しています。

製作概要
タイトル :のみとり侍
原作   :小松重男「蚤とり侍」(光文社文庫刊)
監督・脚本:鶴橋康夫
撮影   :2017年8月30日~10月中旬(予定)
完成予定 :2018年
公開   :2018年公開
撮影場所 :全編京都ロケ
製作プロダクション :東宝映画 ROBOT
配  給 :東宝
コピーライト:©2018「のみとり侍」製作委員会

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=58907