『怪獣使いと<少年>~ウルトラマンの作家たち』や、『宮崎駿の<世界>』(サントリー学芸賞受賞)などで知られ、25年間、映画批評家を続けてきた切通理作の初映画監督作品『青春夜話 Amazing Place』の公開日が決定しました。
新宿K’s cinemaで12月2日(土)よりロードショーです。

同じ高校の卒業生だけれど、一緒に居た時期はない20代後半の男女がひょんなことから出会って意気投合。ラブホテルではなく、通っていた校舎に忍び込み、<青春のやり直し>をする一晩。夜の学校を現代の<竜宮城>に見立てて、<映画でしか取り返せない時間>が描かれます。

主演である男女コンビは、ウェット&メッシーというアート表現の活動も話題の新世代女優・深琴と、塚本晋也監督の『野火』等で印象的な助演を見せ、内田伸輝監督作品『ぼくらの亡命』で初主演した須森隆文が演じます。
また女性でありジェンダーレスを追求する黒木歩が撮影監督となり、男だけのスタッフではかえって照れてしまうところを思いきって突き抜け、性愛のフェッティッシュな身体感を極限までさらけ出しています。
「青春映画を見に行くと、その間の僕は高校生になっているんです。でも劇場が明るくなると、自分は白髪交じりの50男。玉手箱を空けた浦島太郎の気持ちに似ています。そんな思いを映画にしました」(切通理作談)
今回の情報公開では、日米ポップカルチャーの影響を色濃く受けたキャラクター造形と色彩表現が特徴のイラストレーター・うとまるによるポップなメインビジュアルと、スチール写真を公開いたします。

<監督・切通理作のコメント>
僕は青春映画を見てると、無意識に学生の時の自分に戻っています。「こんな学校に通ってみたいなあ」とか。だけど映画館の場内が明るくなると、白髪混じりの自分が居て、狐につままれたような気分で席を立つしかない。そんな浦島太郎のような体験を、映画にしてみたいという気持ちが、いつからか沸き上がってきました。
自分が映画というものを通して知った、楽しいこと、面白いこと、現実に果たせなかったこと……を一晩に集約した、現代のおとぎ話を目指しました。
時間表現である映画の中で、時の移ろいとともに人が変化していくのを見つめようと<舞台を絞り込んだ上で遊ぶ>と決め、全国から探してロケハンした6カ所でひとつの学校を表現。徹夜に近い日もありながら、撮影を敢行しました。
そこに主人公として、20代半ばになっても成長しきれない、ぼんくら女子とこじらせ男子を放り込みました。「青(性)春のやり直し」をベースにしつつ、フェチ心をそこはかとなくちりばめた映画です。キネマ旬報で「ピンク映画時評」を22年連載している僕が、自分なりに<エロい映画>のありかたを問いかけた一つの結果を、かたちにしたものでもあります。自ら心を閉ざし、ここではないどこかを求めているさまよえる魂に、本当の居場所はここだよと問いかける、まさに映画でしかできない魔法。
そして魔法が解かれた後は、ほんの少し、生きていくことに顔を向けられる。そんな映画にしたく思いました。

<各界からのメッセージ>
■みうらじゅん(漫画家、イラストレーター)
正直に生きたいなんてキレイごとでしょ。本当は一度でいいから自分の変態性を振り絞って好きなことだけしてみたい。人間だもの。切通監督が映画にそれをぶつけてる。ぶつけてぶつけて、とっても清々しい気持ちにさせてくれるから是非、映画館で観てね!

■枡野浩一(歌人)
いつまでも忘れられない映画だと思う。
映像の丁寧さ、キャストの演技力、存在感にひきこまれました。夢を夢と意識する冷静さが笑いをうむ。優しくって残酷な一夜だった!

■大月俊倫(元映画プロデューサー『新世紀エヴァンゲリオン』etc)
奇妙で生々しく、印象に強く残る映画でした。学校のシーン以外のロケーション、最高でした。北野武監督デビュー作の『その男、凶暴につき』を思い出させてくれました。
私の印象は切通版『の・ようなもの』です。
すごいデビュー作です!

■小原治‏ (ポレポレ東中野)
とっても素敵な映画だった。主演の2人が映画を生きていた。映画だけが取り返せる青春があった。深夜の学校を舞台に復讐劇に興じる男女のドラマには、観客の側から解釈が膨らむ豊かな時間が行き交っていた。不意に笑えるのもいい。

■岩田和明(『映画秘宝』編集長)
映画は学校を殺すためにある。 切通理作に流れる血の結晶が全カットに刻まれた映画『青春夜話』は、一生に一本しか撮れない<通過儀礼>だ。
理科室から図書室、用務員室、体育倉庫に至るまで、すべてが穢される。滅茶苦茶に学校を破壊したい! そんな妄執は、フェティッシュな性遊戯の大爆発であるとともに、映画で向き合い、乗り越えなければならないものの象徴だ。
だからこの映画は暗いルサンチマン(恨みつらみ)に陥ることはない。天真爛漫に性遊戯を笑い飛ばすエロティックな喜劇であり、真っ直ぐでハートウォーミングで無垢な青春娯楽ラブストーリーに到達する爽快感が、何よりも素晴らしい!

■上埜すみれ(女優、ノーメイクス)
現在の自分の存在自体が、過去を思うように過ごせなかった自分や周囲への復讐になっていく……という視点が、いままでふわっと自分で思っていたこととぴたっと合致してハッとしました。
主演の2人が過去の自分や、謳歌されなかった青春に復讐していくのを「いいぞ〜」「もっとやれ〜」って思って観てました。
2人のようなヒエラルキーでかつて生きてきた人は、きっと私と同じように<復讐>というワードが心にとまるような気がするので、そういう人達が映画に興味を持ってくれたら嬉しいです。

■内田春菊(漫画家・小説家)
パンチが強すぎる作品です。主演の男優さんがモトカレにそっくりで、あんなことやこんなことはしたことないけど、なんだか当時の性生活を暴露されてるような気になりました。

■佐藤佐吉(脚本家・映画監督)
増村保造監督の『盲獣』をヤバい意味で超えてます。切通さんと知りあって25年くらいになりますが、彼があんな願望やあんな妄想がぎっしり詰まった変態だったとは微塵も想像しませんでした。すごくショックです。ただ正直に言うと、とても大好きな映画なんです。だから皆様にもおすすめするしかありません。

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